きっと 彼なら何も言わずに横に座って一緒に居てくれるだろう、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃと五月蝿い男にウンザリしながら私は愛想笑いを浮かべる。きっと彼なら、こんな事私には言わない。
「〇ちゃん聞いてる?」
「あ、ごめんね ちょっとお手洗い」
「...うん」
眉を垂らした男の顔なんて後ろを向けば綺麗サッパリと魔法のように忘れちゃう、決まってる。だってどうでもいいもん。
灰崎君に会いたくて堪らなくてトイレに行くフリをして、外に出た。
曇り空のせいか どうにも頭が痛い、耳を守るために頭痛くなるみたいな事を聞いたけど 余計なお世話だ。体なんて器でしかないのに 何を真剣に守ってるのか。
「...オイ」
「灰崎君、迎えに来てくれたの?」
「急に飛び出して お前何考えてんだよ」
ちっぽけな嫉妬で 私は飛び出してしまった、少しだけ荒い息の灰崎君は私の事を探してここまで走ってきてくれたんだろうか 面倒臭い女だけど私は嬉しかった。
「私なんかよりも 言葉も忘れた幼馴染の方が大事なんでしょ」
面倒臭い女でしょ、灰崎君。
きっと怒るんだろうなー と、ちらり 顔を見れば灰崎君は眉間に皺を寄せていつもよりも目を吊り上げてた。
「言いてえことはそれだけかよ」
「...うん、」
「行くぞ」
「どこに?」
「お前の好きな喫茶店だよ、分かれよ馬鹿女」
後、お前上にこれ着ろよ。そう言って手渡されたのは 灰崎君が着ていた薄手の黒いブルゾン。オフショルダーを睨みつけて、早く着ろなんて言って 怒ってる。
少し肩が出ているだけなのにそうやって心配して怒るくせに、私があの女の子に嫉妬したら 怒るんだもの。
「やだ、着ないから」
「着ろ」
「暑いからやだ」
「お前...」
グイッと肩を抱き寄せてきた灰崎君は「本当に言うこと聞かねえな」なんて、ぼそり 堪んないくらい低くそう呟いて私の耳元に形のいい唇を近付けてきた。
「来いよ」
触れるか触れないかの距離にある唇、あっつい息がかかって 寒くも無いのにブルっと身体が震えた。
「どこ行くの?」
「黙って着いてこい」
「...まだ、謝ってないくせに」
大事な誕生日を私とじゃなくてあの女の子と過ごすなんてことを言ってきたから、そんなの誰だって怒るでしょ...
「◎、お前いい加減にしろ」
「私は悪くない」
「別にどっちも悪くねぇだろうが」
「灰崎君が悪い!」
思わずでかい声が出てしまった。
灰崎君は掴んでいた私の肩を離して、心底ウザそうな顔を見せる。
「本当に、うるせー 女だな」
20180525(NEXT→息を止めるキスで抱いて)