ペンギン図鑑

灰崎君はいつも1人だ。

入学した時から彼のなんだか寂しそうな目が気になってしまい、目で彼を追いかけていた。


こっそりと友達の元を抜け出して裏庭に行けば、灰崎君は今日もそこでパンを食べていた。いつもと違うのは大きな本を持っていること...。



「灰崎君」



ひらひらと手を振り名前を呼べば彼は一瞬嫌そうな顔を見せたが すぐ本に目線を下げた、近寄ってみれば 読んでいるものがペンギンの図鑑だと分かる。

ペンギン...?



「...ねえ、なんでペンギンの図鑑読んでるの?」

「お前に関係ねぇだろ」

「私もペンギン好きだよ」

「聞いてねぇ」



灰崎君は今日も不機嫌な睫毛を垂らして私を睨む、でもこの顔が可愛いと思ってしまう私は変態なのだろうか。

彼が読んでいたページを見ればペンギンの赤ちゃんが載っていた。



「ペンギンの赤ちゃんって可愛いよね」

「可愛いくねーよ ムカつくだけだ」

「じゃあなんでそのページずっと見てるの?」

「ムカつくからだ」

「...そうなの?」

「お前いつまでここにいるつもりだよ」

「灰崎君とお近付きになりたいから、チャイムが鳴るまで居ようかなって思ってるよ」



はぁとため息を吐いた灰崎君は「邪魔すんなよ」と静かに呟き、パンを齧りながら図鑑をさっきよりも真剣な目で見つめた。

赤ちゃんのページそんなに面白いかなぁ。

私も同じ様に覗き込むと 灰崎君の長くて柔らかい髪の毛が頬を撫でた。



「...くすぐったい」

「あ?」

「灰崎君の髪の毛柔らかいよね なんか、ペンギンの赤ちゃんみたいで」

「......オイ」



痛い痛い!と絶叫しそうになるくらい強く顎を掴んで 形のいい唇を私の唇に重ねてきた灰崎君、キスされてるって気づくのに少し時間がかかった。



「俺だって 大人のペンギン出せるんだよ」

「えっ 何の話、」

「うるせー口だな 次喋ったら舌捩じ込むからな」





20180623