20分程待ってるというのに、インスタ女子達が店内を占拠していて 中々入ることが出来ない。綺麗な緑を直に楽しむこと無く カシャカシャと写真を撮る音が、店の外まで聞こえてる。
抹茶の次は自撮りしだす彼女達、数人で来ているというのにずっと携帯と睨めっこときたもんだ...彼女達はいつ食事を始める気なんだ?
「...まだ待てる??」
「え、あぁ 大丈夫だよ」
「ごめんね、氷浦君 ワガママ付き合わせちゃって...中々入れないね、」
申し訳無さそうに俺を見る〇さんは 、捨てられた犬みたいな目をしてて なんだか可愛らしくて笑ってしまった。
「こんな風にデートできる機会ってあんまり無いしさ、こうやって 待つ時間も楽しいよ」
「本当に...?よかった、こんな所に連れてきた私のこと嫌いになってるんじゃないかって心配になってたの...」
「あはは 大丈夫だよ、俺そんなんで〇さんのこと嫌いにならないし」
サラサラの髪を撫でれば彼女は照れくさそうに笑った、やっとテーブル席から女子大生っぽい子達4人が立ち上がり 出口に...。
「ほら、そんなに 長くなかった」
「本当にやさしいね氷浦君...私今めっちゃ感動してるよ...」
「大袈裟だな、ほら 何食べる?」
いらっしゃいませ、お待たせしました!と笑顔で挨拶をしてくれる店員さんが差し出したメニューには ずらっと緑色が並んでる...いやまあ 抹茶スイーツの店だから当たり前なんだけど、こんなの見た事ないから 不思議な感じだ。
「かき氷か...ソフトクリームか...ティラミスか...悩んじゃうなぁ、鯛茶漬けも美味しそうだし...」
「スイーツ食べに来たんじゃなかったっけ」
「あっ、つい...お腹減ってきちゃって...!」
「うーん そしたら、全部頼もうよ」
ばあちゃんから送ってもらった仕送りはこんな所でしか使うことは無いから、出世払いということで ありがたく使わせてもらうことにした。彼女との初デートだから ばあちゃんも許してくれるだろう。
全部くださいと注文すれば〇さんの焦った声が、俺の少しだけ後ろで袖を引っ張って 止めようとするが財布の中から出した千円札3枚を銀のお会計トレーにのせたら 「あっ」 と間の抜けた声が。
「ねえ、半分払う...」
「大丈夫だよ」
「でもっ」
「カッコつけさせてよ」
「うぅ、次は払うからねっ...!ありがと、」
はにかんだ笑顔にドキドキしてしまう、店員さんがそんな俺達を見て 口元を緩ませた。恥ずかしくなってしまって咳払いすれば、手のひらにレシートをのせてくれた。
「こちらの番号札を見える場所に置いて、お席でお待ちくださいませ」
「ありがとうございます」
先程まで女子大生が自撮り大会をしていた席はいつの間にか片付けが終わってて、水の入ったグラスが置かれていた。
▽
運ばれてきた抹茶のソフトクリーム、かき氷、ティラミス、鯛茶漬けがテーブルに並ぶ。彼女は目を輝かせて 手を合わせた。
「氷浦君本当にありがとう、いただきます...!」
「どうぞ」
溶けそうになってる抹茶ソフトクリームから食べ始めた〇さんの顔はみるみる内に幸せそうにとろけた、そんな顔して 食べるんだ。可愛いな。
「〇さんは、写真とか撮らないの?」
「なんかね いっつも忘れちゃうんだ...皆はよく写真撮ったり載せたりしてるけど、私食いしん坊だから忘れちゃって 全部食べ終わってから気がつくんだ...」
「なんか、〇さんらしいね」
少し大きめの升に入ったティラミスに木のスプーンを差し込む、スプーンを置いただけでも沈みそうなほど柔らかいそれを 口に運ぶと甘さと何処か懐かしさを感じた。
「抹茶ってなんでこんなに、懐かしくなる味なんだろ」
「日本人だからとか?」
「遺伝子に組み込まれてるのか...」
「ふふ、急になんなのー 氷浦君面白いね」
ノスタルジーに浸りたい気持ちを抑えて、また1口。とろとろの部分が甘過ぎて 喉が焼けそうだけど抹茶の苦味に救われた。
「氷浦君、高校はどうするの?」
「え?...あ、サッカーばっかりで何にも考えてなかった」
「でも、こっちにはいるんでしょ?」
サッカーをやりたくて東京に来た、夢が叶えば 俺たちは皆揃って伊那国に帰る予定なのをニコニコと微笑む彼女に言えるわけなくて 嘘が口から出た。
「まあ、戻らないといけない時はあるかもだけど...」
「まあ、進学する前に 一回帰らなきゃだもんね!」
「そうだな」
もし、俺が東京での生活を捨てて ばあちゃんの待つ伊那国へ帰ると言ったら...彼女は俺を嫌いになるだろうか。
「また、デートしようね」
「うん 絶対しような」
関係が深くなるにつれて言い辛くなっていくというのに何を言ってるんだと 升の中のティラミスをまた口に運んだ、自分の弱さを抱き締めるようにして ティラミスを喉に流し込めば...抹茶の苦味は より一層深くなった。
20180420