プール開き


「影山くん おはよう!」

「...なんだ 今日はヤケにうるさいな」

「だって今日からプール開きだよ」

「面倒臭いだけだろ」

「プールのあと少し涼しくなるから、私は好きなんだけど」



夏の風に吹かれて揺れた〇の髪、夏服から洗剤のいい匂いがする。今日からプール開きだと喜ぶ子供のような彼女を横目に 私は今日の部活の事を考えていた。



「影山くんのとこは今日プールないの?」

「あっても 入らん」

「えー」



影山君ってサッカーだけだね なんて目を細めて笑う彼女は下駄箱にローファーをいれて、真新しいうわばきをことんと床に置いた。



「それじゃ、また お昼ご飯の時に」

「ああ」



丁度やってきた〇の友人達が 私と彼女の間に割って入り、彼女を教室に連れて行ってしまった。もう少しだけ彼女の声を聞いていたかったが 私も自分の下駄箱からうわばきを取り出して 履き替える。


彼女はいつも生活の中に楽しみを見つける、羨ましいな なんて考えながら教室に向かった。










昼休みの時間、いつも待ち合わせする裏庭の角に座り ペットボトルに入った随分とぬるいお茶を喉に流し込んだ。

今日は何を作ってきたのだろうか、ぼーっと夏の陽射しにウンザリとしながら考え込んでいたら彼女は爽やかな風と共に現れた。



「お待たせーごめん、遅くなっちゃって」



ぽたり ぽたり

4限がプールだったのだろうか、毛先から落ちる水がコンクリートに染みを作る。いや コンクリートに染みを作るだけなら構わないが、夏服の薄い生地に染み込んだ水滴のせいで透けて見える下着。



「...なんでちゃんと髪を乾かさない」

「だって 早く影山君に合いたかったから、」

「こっちに来い」



自分の鞄から清潔なタオルを取り出して彼女の頭にかけ、乱暴に髪をぐいっと引っ張り水分を吸収させる。痛い痛いと泣き言をいう彼女には悪いが、あんな姿をほかの生徒達にも見せたのでは?と思うと胸が苦しくなったのだ。



「か、げやまくん...!」

「なんだ」

「あの 乾かしてくれるのは嬉しいんだけど、もっと優しく」

「自分がどんな無防備な格好だか分かっているのか?」



無防備?と首を傾げる彼女に「下着が透けている」と言えば 焦った様子で胸元を腕で隠す、もう遅いというのに。



「見た?」

「当たり前だろう 誰だって見る」

「そんなに 透けてた...?」


「頼むから タオルをかけていてくれ」



彼女の首にタオルをかければ 恥ずかしそうに瞬きをして「影山君、ありがとう」と笑った、これだからプールは嫌いだ。



「あまり そんな姿を他のやつに見せないでくれ」

「え??」

「...冗談だ」

「冗談じゃないでしょ、もう一回言って 影山君!」


「それよりも 弁当はどうした」



彼女は教室に弁当を忘れたらしい、ぷっくりと可愛らしい唇を尖らせて「忘れちゃった...!」と私に言って 走っていってしまった。

夏は嫌いだが 彼女と過ごせるのなら、今年はそんなに悪くないかもな なんて自分らしくないことを考えて太陽に手を伸ばしてみた。





20180707〔七夕〕
(だから、私は恋をしない。)番外編、ほのぼの

ミラ様 この度はリクエスト頂きありがとうございます、遅くなってしまい大変申し訳ございませんでした...!

影山さん中編が好き...嬉しくて倒れそうになりました、私は元々影山零治を好きになって夢サイトを始めたので こうやって番外編でもリクエストが来ること嬉しく思います。

切ない物語なんですけど こういう青春のほんのり甘い一コマがあったら、報われるなぁと考えながら書きました。

次回のリクエスト募集は12月ですが、またどうぞ 宜しくお願い致します。改めまして ありがとうございました。平成最後の夏を楽しみましょー!