切ない恋なんてしなくていい


「お待たせ」

「やあ、◎ 綺麗な浴衣だね」



誰にも見られないように 二つ隣の街で、待ち合わせ。知らない土地の知らないお祭りに行く事にした私達は、顔を見合わせて笑った。



「これ、君に似合うと思って 買ってきたよ」

「綺麗な かんざし...」

「さしてあげようか」



私の後に立って 彼は結い上げた髪に1本の綺麗なかんざしをさしてくれた、しゃらんと小さく音が鳴るそれは まるで鈴のようで何度か頭を揺らして音を楽しんだ。



「似合うよ」

「野坂君は 私の似合うものなんでも分かるんだね」

「それじゃ、行こうか ◎」



しっかりと絡めた指を離さないように私達は注意しながら人ごみに飛び込んだ、食べ物の誘惑に負けた私は何を買おうかときょろきょろあたりを見渡す。



「何か食べたいものあったかい?」

「野坂君は?」

「俺はあまりお腹空かないから、君が食べたいもの買ってあげるよ」



なんなら左から右まで買おうかなんて無邪気な笑みを見せる野坂君に「そんなに食べれないし…!」と笑いかければ、彼は柔らかく「それもそうだね、西蔭じゃあるまいしね」と言った。










西蔭は言い過ぎだけど彼女は細い体で沢山食べた、薬の副作用かあまり食欲がない俺は彼女がおいしそうに食事している姿を見るだけで満足なんだよね。水風船や 射的の景品を片手に彼女は最後に甘いものが食べたいと言い出した。



「よく食べるね」



どこに入るんだろうと不思議で笑ってしまった、俺のそんな顔を見て彼女は俺の頬に触れる。



「その顔好き」

「どんな顔?」

「心の底から笑っているような、本当にね優しいの その笑顔」

「…俺にはあんまりよくわからない」



震えるような心臓の動きに俺はまた襲われた、彼女はそんな俺を見て「ちょっと待ってて」と眉を垂らして屋台に。

俺が優しい、なんて みんなが聞いたら笑うだろう。楽しいからじゃない、心の底から軽蔑されるようなそんな笑いだ。



「お待たせ」

「…リンゴ飴」

「二人で一つ食べよう」



彼女から手渡されたリンゴ飴はずっしりと重い、まるで彼女が俺に向ける愛情のようで 胸が痛んだ。



「野坂君のいい所 私いっぱい知ってるから」

「…君は本当に物好きだよね」

「野坂君を支えるのが、私の幸せなんだ…いつか必要なくなるまで」

「永遠に必要かもしれないな」

「嬉しいけど それじゃ駄目」



ぱきん 歯で砕いたリンゴ飴の音と心臓の痛みが重なる、彼女は俺の命だから。こんな所で倒れることなんてできないのに。



「野坂君…?」

「少し 君の肩を貸して」



零れる前に 涙を乾かすから。





20180707〔七夕〕
切な甘い、夏祭り

雪兎様 今回もリクエスト頂きありがとうございます、またまた遅くなってしまい大変申し訳ございません。

今回のお話 金曜日に放送されたアレスを観てから書き直したので、切なさプラスされたのでは...!

この前のお話への感想までありがとうございます、今回のも気に入って頂けるだろうかとドキドキしております。

次回のリクエスト募集は12月ですが、またどうぞ 宜しくお願い致します。改めまして ありがとうございました。平成最後の夏を楽しみましょー!