サボって海に来た俺達は 星章の夏服を潮風に揺らした、◎はローファーを脱ぎ捨てて白い砂を踏む。
「あつ」
「気を付けろよ」
アイツの靴下とローファーを綺麗に揃えて、自分も脱いだ クルクルと裾を膝まであげて後ろを追いかける。
「◎ お前スカートめくれてんぞ」
「えっ、本当?」
「少しは気を付けろ」
でも ここには灰崎君しかいないよ?
ぐるっと辺りを見渡せば、俺達以外にいるのは うるせぇカモメだけだ。1歩彼女の方に足を進めれば 夏の風にスカートを捲られた◎が「きゃっ」と小さく声を上げた。
「◎ 危ねぇぞ ちゃんと前見ろ」
「灰崎君が私の手握ってくれてたらいいじゃん」
「仕方ねぇやつだな」
腕をこちらに伸ばしてきた◎、その小せぇ手を掴んで 俺達は海に爪先を沈めた。
「つめてぇな」
「いっつも不思議なんだよね、こんなに暑いのに 海の中は冷たいの」
「そうかよ」
「もう一つ不思議なのは 灰崎君はなんで、沢山いる女の子の中から私を選んだのかな?ってこと 毎朝毎晩考えるんだ」
震えた声に 俺はどうすればいいか分からずに、◎の火照った体を抱き締めた。
「また来年も 灰崎君は隣にいるのかなって、不安なんだ」
「...言わねえ約束だろうが」
ありのままの俺を好きだと言ってくれた コイツを悲しませるべきではないのは重々承知だ、茜の代わりになる女を探していたつもりでもない 心を通わせる事が出来る人間が欲しかった。
▽
足裏を海に沈めて 暫く遠くを眺めていた、◎の身体が少しひんやりしてきた 冷えてきたのかと思い「戻るか?」と言ったが「まだ」と声を漏らした。
「夏の間だけでも 私といてくれる?」
「...約束だ」
「私ね 代わりだとしてもイイやって思ってたけど、このままじゃ 嫌な女になっていくから この夏で終わりにしよう」
「分かった」
もう 茜なんてどうでもイイって言えよ、なんて。
言えるわけがない ◎の髪と俺の髪が風で重なり絡まる、キスをすればこの話は消えてしまうだろうか。
「灰崎君 絶対に私にキス以上の事をしない理由だけ教えて」
「...別に 理由なんて無い」
「私が深く傷付かない様に?」
「理由はないって言ってんだろ」
「理由が無いなら、私の全部奪えるよね」
つめてぇ海ん中に ◎の熱い涙の雫が落ちていった。
「無理だ 俺には」
「どうして」
「まだ、夏は始まったばかりだろ 俺から逃げる為に自分を傷付けるつもりなんだろ...今日で終わらせたいのかよ」
「そうかもしれない、」
「ダメだ まだ、行かないでくれ」
乱暴に◎の唇を奪えば、泣きそうな声が二人の間から漏れた。どちらの泣き声かなんて野暮な事は考えずに 俺達は過ぎていく夏に叫んだ。
20180707〔七夕〕
切ない話
匿名様 この度はリクエスト頂きありがとうございます、遅くなってしまい大変申し訳ございませんでした...!
切ないお話との事でしたので 海にしました、茜ちゃんと 今後どうなるかなんて分からない灰崎君と 代わりでもいいと付き合ってきた夢主がどんどん欲張りになってしまってそんな自分が苦しくなるお話です。
次回のリクエスト募集は12月ですが、またどうぞ 宜しくお願い致します。改めまして ありがとうございました。平成最後の夏を楽しみましょー!