NIGHT


彼女が来たがっていた ホテルのプールは随分とスタイリッシュで居心地が良さげだ、スィートルームに荷物を置いて 彼女は水着に着替える為に洗面所に向かった。



「君の水着楽しみだね」

「照美が好きそうなの選んだんだよ」

「へぇ それは楽しみだ」



旅行の〆はこのホテルだと前々から決めていた。

夏が終わればまた忙しくなってしまうから 最後にうんと贅沢に過ごしてもらおうと準備していてよかったな、ワイングラスを片手に外からの景色を眺める。



「照美 後ろ結んでくれない?」

「...おや、随分とセクシーな水着だね」

「そうかな」

「蝶々結びでいいかい?」



綺麗な背中に良く似合う 蝶々結びをすれば、紐の先についているゴールドのチャームが光った。



「こんなに セクシーな君を外に連れていくのなんだか嫌だなぁ、僕だけのものにしたくなるよ」



そっと ウエストを撫でればビクリと跳ねる体、オイタが過ぎると怒られてしまうので両手を彼女に見せるようにして1歩後に下がれば「もう 照美ったら」と彼女は笑った。










「なんか、誰もいないね いつもいっぱい人がいるって記事には書いてたけど」

「ああ それなら、君の姿を見せびらかすのもイイけど やっぱり僕だけの君でいて欲しかったからね 貸し切ったよ」

「...いつもいつも 歯の浮くようなセリフありがとう」



眉を垂らして困ったように笑う彼女が可愛らしい。

プールの中から伸びる椅子に座り カウンターの向こうにいる女性に「ノンアルコールのカクテルを1つ おまかせで、僕には赤ワインを」と伝えたら彼女が僕の手首をぎゅっと掴んだ。



「今日は僕と二人きりだから お酒が弱いのに 無理して飲まなくていいんだよ」



白いカウンターテーブルに 赤ワインとノンアルコールの色鮮やかなカクテルが並ぶ、僕達はそれを手に取って「乾杯」と声を揃えた。

向こうの方でピアノを演奏している女性がこちらに微笑みかけ 僕達の為に静かなラブソングを演奏してくれる、プールの中に浸かった足がひんやりと気持がいい 彼女を横目で見れば美味しそうにカクテルに口をつけていた。



「美味しいかい?」

「甘いのにサッパリしてて 飲みやすいよ」

「よかったね」



グラスをテーブルに置いて彼女の腰を抱いた、驚いたのかびくりと跳ねる体。



「◎ ピアノの近くに行かないかい?」

「...いいけど、」



彼女が先にプールの中に 小さな水音を立てて入る、カウンターの向こうにいる女性に目配せをして 僕もあとに続いた。

深さ120cmくらいだろうか、ここまで体が浸かると 随分とひんやりして気持がいい。



「照美 イルミネーション綺麗だね、アリエルの世界みたい」

「君は人魚よりも綺麗だけどね」

「口を開けば褒め言葉しか言わないんだから...!」

「本当の事を言ってるだけさ」



泳ぐように 踊るように 二人でプールの中を歩く 、ピアノの音が大きくなる 僕が頼んだ通り上品なクラシックに包まれて 僕達はしっとりと見つめ合う。



「いつも 僕を支えてくれてありがとう、◎」

「支えるような事できてる?」

「僕が大変だった時ずっと君が横で笑ってくれていただろう、毎日が君のおかげで幸せなんだよ」









何曲か僕達の為だけに演奏されるピアノの音色に酔いしれた後、◎が喉が渇いたというのでバーに戻った。

さて 彼女はどんな顔してくれるだろうか。



「◎、またさっきのでいいかい?」

「うん お願いします」

「次も赤でお願いするよ」



かしこまりましたという声が、楽しそうに弾んでいた。きっと◎には分からないだろう 零れそうな星空を見上げている。



「お待たせ致しました」



ゆっくりと グラスに視線を落としていく◎、僕に「もう1度 乾杯」と可愛らしい笑を飛ばし口をつけた。



「ん?」



よっぽど 喉が乾いてたのだろう グラスを傾け過ぎたせいで、僕とホテルのスタッフが頑張ったサプライズは呆気なく彼女にバレてしまった。

だけど、彼女はグラスをテーブルに置いて 恐る恐る覗き込んだり僕の顔を見たりカウンターの向こうにいる女性を見つめたりして あからさまに落ち着きが無い。



「どうしたの?」

「ゆ、指輪だよね...照美 これ」

「さぁ?」

「もう、今日なんかおかしいなって思ってたの...!だって 普通ホテルのプール貸切にする?」



焦った様子の彼女が面白くて 僕は笑ってしまった、最後までカッコよく決めるつもりだったのになぁ。



「◎ 君は僕の人生において特別な人なんだ」

「...照美、」

「その指輪の意味 君だったら分かってくれるよね」



彼女は暫く僕を見つめたあと 薄らと涙を浮かべ僕に指輪の入ったカクテルグラスを手渡す、彼女の左手薬指に その指輪をゆっくりとはめれば「...照美」と情けない声が彼女の口から漏れた。





20180707〔七夕〕
照美とナイトプール

エミリアさん 今回もリクエスト頂きありがとうございます、またまたまた遅くなってしまい大変申し訳ございません...!

照美君が言いそうな歯の浮くようなセリフをガンガンいれてみました、書いててなんか恥ずかしくなるのは久し振りです。

リクエスト頂いた照美君シリーズ全て綺麗に繋げることが出来て感動しております!!

次回のリクエスト募集は12月ですが、またどうぞ 宜しくお願い致します。いつも仲良くして下さって本当に感謝しております、ラブです。平成最後の夏バイブスブチアゲて楽しみましょー!