しとしと。

美術の時間の静かな空気感が好き、雨の音がリアルに感じ取れるから。屋内にいるから言えることだけれど帰る時大丈夫かな...。

ゆっくりと窓から視線を移す、斜め前の席で絵を描いてる源田君の手首に見惚れてしまった。太めの筆で籠を塗る彼の手首は妙に男っぽくて 少年じゃなくて、大人の男の人みたいだ。


ドキドキ。


きっと源田君は私の恋心もたまにこうやって見つめてるなんて気付いてないんだろうな、細い筆に持ち替えた彼は 林檎の色塗りを始めた。











「ああ...すごい降ってきちゃった」



本降りにはならないで欲しいなってお願いしたけれど、神様は天気なんか気にしてる程暇じゃなかったみたいだ。

部活が一緒の友達は車でお迎えが来て私よりも先に帰ってしまった、電車に乗るほど家は遠くないから仕方ない 歩いて帰ろうと1歩屋根のない場所に足を伸ばす。

頬と髪を濡らす雨は先程よりも小雨に、すぐやみそうだなと気にせずに階段を降りて少し早足で家へと向かった。


家に帰ったらジュースを飲もうとか宿題をしないととか、どうでもいいことを考えていたらまた...雨が強くなってきた。



「はぁ...折り畳み傘いれとくべきだったな」



誰に言うでもない独り言を零しながら、喫茶店の前に避難した。角のところでお店の邪魔にならない場所で私は肩にかかった雨を払っていたら...。



「〇...?」

「あ、れ...源田くん?!」



聞き覚えのある声に驚いて横を見れば 入口付近で雨を払う源田君の姿が、彼も雨宿りの為にこのカフェに来たんだろうか。



「お前も雨宿りか?」

「うん、」

「暫くは降るだろうな、家が近いから送迎は頼んでいなかったんだが 迎えに来てもらうように頼んだんだ 車が来るまで一緒にいるか?」

「えっ いいの...??」

「ああ1時間で来ると言っていたから送る、それまで何か飲んで待っていよう」

「ありがとう、源田君」



彼は雨が滴る髪をハンカチで拭いて、そしてドアに手をかけた。



「...好きな奴と一緒に居れるなら雨もいいものだな」

「...え、?」

「なんだ」

「雨音でちゃんと聞こえなかったんだけど、今...」



カラン、喫茶店のドアを開けて源田君は唇に人差し指を押し当てる。赤くなる私とは対照的にいつもみたいな爽やかな表情で「内緒だ」と呟く。


”好きな奴”そう聞こえたけれど、人差し指を自分の唇に押し当てて笑う源田君があまりにも綺麗で 私は言葉を失う。

こんな素敵な時間を運んできてくれた雨に心の中でありがとうと言って、源田君の後ろを着いて行った。




20190509〔黒板の日〕
雨の日、下校中時に雨宿りで居あわせる

ぴの子様、この度もリクエストありがとうございました!

お久しぶりです♪
今回少し短くなってしまって本当に申し訳ございません、帝国学園には確か繋がってる駅があったような気がするので少し無茶な設定になってしまいました...!

ほんの少しのイナエブ要素もいれつつ、書いてみました。私は雨の日が本当に嫌いなのですが、こんな風に好きな人と雨宿りができるなら 雨が運んできてくれたのだとドキドキ嬉しくなってしまいます。この後2人で素敵な時間を過ごして関係が進展すればいいな...また梅雨時に続編を短編であげたいなと思っていますのでもし良かったら読んでくださいね♪

これから暑くなっていきますので夏バテに気をつけて、令和最初の楽しい夏を過ごしましょうー!

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