クリームソーダ3杯目

「クリームソーダお待たせしました」
「おおきに!」

しゅわしゅわ〜ってグラスん中ではしゃいどるメロン色のあんまい炭酸水、その上に鎮座するバニラアイスとシロップ漬の真っ赤な王冠が俺を見てる。
今日は何杯飲まなあかんかなぁ〜ストローを口に咥えて下品に吸い込んだらズズズって音が鳴った。今日の予想は4杯おかわりせなあかん気ぃするなぁ。
はぁっとため息はいたって俺の周りのだーれも聞いてへん、ここには沢山の魂が生きとってそれぞれの欲に突き動かされて自分の事だけ考えて息しとる。
・・・なぁんてな、ようわからん事思ってまうくらい暇や。なんかおもろい事ないかなぁ〜なんて思いながら一気に半分程吸い込んだらカランと氷が泳ぐ音とお客さんが来た事を知らせるドアベルが重なった。
いかにもーって感じの三人組は俺の斜め前に座ってる大人しそうな女の子を指差して楽し気に歩いてきた。

「お姉さん一人っすかぁ?」
「ちょっと相席いいですかねぇ、どこも座ってはるし」
「え・・・、あぁ はい」

うわぁ可哀想になぁ、でも正直暇しとったしと思って左前の方に視線を向けたまま耳を澄ました。

「よっしゃ、ツイとるわ〜こんな可愛い子と相席なんてなぁ」
「いやホンマやで お姉さんいくつなん」
「22歳です・・・」

困った様子の女の子は小さくそう言うと飲みもんに口をつけた、まぁそら急に男三人に絡まれたら困るわなぁ。
なんやろ、どっかの詐欺師のオッサンみたいになんか売りつける気ぃかな。女の子には気の毒やけど次の番組に出るときのネタにさしてもらいましょか。

「22?俺らとタメやんか、仕事何やってんの??」
「カフェで働いてます」
「エエやん〜めっちゃエエやん、でもさ カフェで働いてたら欲しいもん気軽に買えへんやろ・・・俺ら仕事紹介したるけど興味ない??」
「・・・興味ないです、あのすみません私もう行かんと」
「待ちいや〜まだ残っとるやん、な?俺ら可愛いお姉さんの味方なんやって」

うわぁ〜スカウトマンかいな、コイツらほんまエゲツないな。
顔色悪なっていく女の子は渋々座る、俺が出て行った方がええんやろうけど顔さすしなぁ。いやそんなん言ってる暇ないよなぁ、うーんと考えながらも飲み切ってしまったクリームソーダをおかわりするべく店員さんを呼んだ。

「お姉さん可愛いし、胸もそこそこおっきいしさ 風俗でもキャバでもどっちでもやっていけると思うけどどっちがええ?」
「えっ、あの・・・私別に今の仕事で満足してるんで」
「何その冷たい言い方〜風俗嬢とかキャバ嬢下に見とるやろ」
「そんな事言ってへんのに、あの・・・もう本当にいいんで」
「でもさ〜勿体無いって若さを金にせな」

泣き出しそうな程潤ませた瞳、必死に涙を流さんように堪えとる女の子の顔見てたら胃がムカムカしてきた。
クリームソーダを運んできた店員にぶつかりそうになりながら立ち上がって俺は女の子とドアホ共の席の前に。
あーあ、俺とした事が舞台おりても視線泥棒やん。

「ちょいちょい、兄さん達その子俺のツレやねん離したってや・・・エエ大人やのに嫌がってんの分からへんかぁ?」
「・・・芸人の白膠木?!えらいスンマヘン、彼女とは知らんで!!」

このアホ共脳みそん中でなんか死んどる匂いするわ、バタバタと3人組はこちらを何度もチラチラ見ながら店を飛び出した。

「大丈夫か?」
「あっ、あの・・・すみ」
「うわ 泣いとるやん・・・ほら、みんな見とるから俺の席おいで、ツレのフリしといてや 助けたんなんか小っ恥ずかしいし」

俺は彼女の肩にポンと触れて背を向けた、後ろでぐすぐすと泣いてる女の子の声になんやくすぐったなってもうて頭をぐしゃぐしゃっとかいた。


 俺の奢りやからってほぼ無理矢理頼ませたミックスジュースの中で氷がカランと音を立てた、泣いたせいであんま詳しないけどアイラインだかマスカラだかが滲んどる。

「白膠木さん、ありがとうございます・・・泣いちゃってごめんなさい恥ずかしい」
「ええってええって、早く助けへんかった俺も悪い」
「そんな他人を助けるって結構大変な事やし、難しいし・・・でもホンマに嬉しかったですありがとうございます」

ぽかぽか〜って日向ぼっこでもしとる猫の気分や、外はエライ雨やけど心ん中は陽だまりん中ってくらいあったかなってしもうた。
目の前の女の子は少し薄まったミックスジュースを勢いよく飲み切って「白膠木さん」と俺の名前を呼んだ。

「どないしたん?」
「私、もう行かなアカンくてお金お渡しするんで払っといてもらってもいいですか?」
「お金ぇ?なになにSPのバイト代くれんの??」
「ふふ、それも払わなダメですね ミックスジュースのお値段は・・・っと」
「かまへんって言ったやろ助けんの遅なってもうた詫び代やと思ってぇな」
「いや、そんなん悪いですから」
「うーん ほんなら名前教えてくれるか?」
「名前ですか?あ、そうや・・・まだ自己紹介してなかったですねすみません・・・!◯◎です、よろしく」
「ええ名前やんか、◎ちゃん遅刻してまうからもう行き」

ほらほら早よ!と急かせばコートを着て慌ただしく荷物を持ってぺこりと俺に頭を下げる。

「ホンマにありがとうございました、あの ご迷惑ちゃうかったら今度私のバイト先にクリームソーダ飲みに来てください」
「ええんか?」
「はい、今日お世話になってもうた分サービスさせてください これお店の名刺です 黄色い日よけの可愛い小さなお店やからすぐ分かると思います」

俺に名刺を渡してバタバタと走っていく◎ちゃんの後ろ姿を見つめてから名刺をジャケットのポケットに入れると同時にデッカい不良オヤジが店に入ってきた。

「ふぃ〜すごい雨だなぁ」
「零〜!!まず謝るんが先やってオカンいつも言うとるやろ!ってビショビショやん!」
「雨に降られちまってよぉ〜でもまぁ綺麗な嬢ちゃんと二人っきりになれたから全然いいんだけどよ」
「フケツ〜また女だまくらかして来たんか?」「そりゃ〜言えねえなぁ・・・ていうかさっき此処に座ってた姉ちゃん誰だ?」
「・・・うーん、せやなぁ・・・俺のピーチ姫ってとこ!店員さん、ホットのブラックとクリームソーダ頼んます!」
「ピーチ姫ぇ?」

零はどかっと椅子に座りタバコに火を点けて「じゃぁ、アンタはマリオかい」と楽しそうに笑った。明日は俺のピーチ姫が働いとるカフェに行ってみよかなぁ〜。