こんなキス嫌過ぎやろ

 キーンコーンカーンコーン

生徒達が大嫌いで大好きな音が鳴った、起立礼を終えて何をそんなに生き急いどるねんってくらいすごいスピードで皆教室を出て行く。
授業が終わって部活動に向かう生徒達の足音と急いで用事に向かう生徒達のカツカツ急かされそうなローファーの音、遠くで聞こえてくるそんな若い花達の生を感じながら少しだけズレてしまった眼鏡を直した。

「・・・めだって、ね・・・」

教室を出ようとした時、クスクス楽しそうに笑ってる女生徒の声が何処からか聞こえてきた。この学校の景色には全然似合わん掠れた声・・・何しとんねん・・・胃キリキリしてきたなぁ、とりあえずやっぱ先生やし注意しに行かなあかんよな。俺は自分の荷物を小脇に抱えて教室を出た。隣の空き教室から聞こえてくる、中をちらりと見てみたら薄暗い教室に汚いカーテンがぶらさがっとる下に人影が見えた。
金の無い学生やしまぁ、こんな事もようある事や・・・教室をガラリと開けて中に入れば動きが止まった。

「オイ、お前等こんな所でそんな事したら・・・ア、カン・・・って」
「あぁ 盧笙センセェに見られてしもた」

ニコニコ笑って俺を見とる女生徒とその後ろでギュッと彼女を抱き締めとる新任の教師・・・血管という血管がボコボコに切れてく感覚、カッと頭に血がのぼり俺は二人の間に割って入って引き剥がした青ざめた様子の新任の教師は俺の手から逃れてバタバタと慌ただしく出て行く。

「・・・◯無理矢理されたってわけやないって事は流石に俺も分かるけど、どういう事やコレ」
「センセェ顔こわ〜別にくっ付いてただけやんか」
「あのな・・・普通に犯罪や」
「ええやんかァ、私が誘ったんよ やから怒らんといてぇな」

ガタンと椅子を引いてそこに座ると彼女は俺を見上げる、ゴッツ短いスカートからのびとる足を綺麗に組んで頬杖ついた彼女は携帯を取り出す、あの新任にメッセージでも送ってるんやろうか。

「お前なぁ、コレばっかりはホンマ洒落にならんで」
「何したら許してくれんの」
「何したら、ってなんやねん?」
「何って、男の人やのに分からへんって言うんやないよね」

つるーっと女特有の細い指が俺の太腿を撫でて爪でベルトを弾いた、びくりと跳ねた俺を見て楽しそうに笑う◯の手首を掴めばギュッと抱き締められた。
一瞬の出来事で思考が停止してしまったと同時に”カシャッ”ととてつもなく縁起の悪い音が俺の後頭部辺りで鳴る。咄嗟に◯を突き飛ばせば椅子に尻もちをつき「いたぁい」と甘えた声を出した。

「おま、え・・・!何するんや、ほ ホンマに」
「かっわいい〜〜センセ、キュンとしてもうた?」
「あのなぁ!!」
「声大きいよぉ、誰かに聞かれたら見られてまうで」

”ウチら付き合ってるって噂ながされたらどーすんのぉ”語尾を伸ばしながら品のない表情で首を傾げると彼女は立ち上がり俺に一歩近よった。

「・・・お前、そこまでして彼氏守りたいんか」
「彼氏ぃっ?ふふ、センセェ何処までもかわええね 私別に好きでもなんでもないよ、たださぁ愛させてあげる権利をチラつかせたら向こうがそれにのったってだけの話」
「お前なぁ・・・!とりあえず職員室こい」
「ええの、私にそんなん言うて」

そう言って悪魔みたいな◯は先程撮ったらしい俺に抱きついて撮った写真を見せつける、「ゲッ」とカエルが潰れたみたいな声を漏らす俺にピースして「よう撮れてるやろ〜!」と笑った。

「コレ、おま お前なぁ・・・どないすんねん」
「そんなん簡単やで、センセェが私のモノなってくれたらええの 盧笙センセェってさかっこええしお口もカタソウやし」

親指で俺の唇を撫でて◯は「キスしてみてや、ほんなら帰ってええから」なんて恐ろしい事を言って爪先立ちして俺の顔に向かって唇を尖らせる。
俺はたじろいで一歩後ろに下がると彼女は「もーしょうがないね、今日だけやからね」と頬を膨らませて俺のベストを掴んでキスをしてきた。ぢゅっと歯を立てて唇に吸い付いてくる彼女の肩を抱いて離せば満足そうな顔で彼女は唇の端についた唾液を拭う。

「ごちそーさん、センセェまた明日ねぇ」

ひらひらと手を振って教室から出て行く◯、扉が閉じる音を聞きながら俺は埃っぽい机に手をつけてなっがいなっがいため息を吐いた。外から聞こえてた雨の音が消えて代わりに自分の体内から飛び出してしまいそうな心臓の鼓動が鳴り響く。
うわ、もうこれホンマに、やばいやつやんか・・・。

ヒリヒリする唇を何度も拭って彼女のグロスを取り、かなりズレてしもうた眼鏡をかけ直した。