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薄暗い朝、イプシロンは現れた。まるで悪魔の様な彼等の禍々しい色のユニフォームは、のどかな京都の景色を塗りつぶす様に光沢を放つ。

試合を断る漫遊寺の部員達の言葉に、不気味な彼等は黒いサッカーボールで校舎の一部を嘲笑うかのように破壊した。渋々、試合を受ける事になった漫遊寺中を私達マネージャーは静かに見守った。

パス、技の連携、一人一人の身体能力...漫遊寺中にはすべてが揃っているように見えた。だが、FW陣を潰す様にして 倒して行くエイリア学園。GKの「六分で片付けてやる」という言葉通り開始六分で 彼等は...戦闘不能となった。



「待て!まだ試合は終わっちゃいない!」



赤と黒のサッカーボールで校舎を壊そうとする彼らの手を止めたのは、やはり 円堂君の声だった。



「俺達が相手だ!」

「お前達が...?いいだろう」



話の分かる宇宙人でよかったわねなんて冗談を言えば、木野さんが困ったように「もう!」と笑った。



「でもキャプテン、目金先輩が...」

「10人で戦うまでだ!」

「じゅ、10人でー!?」



鬼道君の左肩にしがみつく様にして飛びつく栗松君、腕を組み眉間にシワを寄せる鬼道君などお構い無しに 栗松君は肩にちょこんと手を乗せてブルブルと震えていた。

確かに11人でも戦えるのか分からない状況で、10人なんて 私達には分からない程不安で仕方ないでしょうね。困惑する 私達の耳に、音無さんの高い声が届いた。



「11人目ならいます!」



木暮くんが!と自信満々に言う音無さんに、塔子は 顔を歪めた。











相手の肩に飛び乗り二段ジャンプをして放ったエターナルブリザードすらも止められてしまった、吹雪君は悔しそうに顔を歪める。

相手のGKが蹴った強烈なシュート「ふざけるな!」と叫び食らいつく吹雪君を吹き飛ばして 一直線に進んでいく まるでミサイルの様に不穏な空気を漂わせたシュート。

おぞましいシュートから逃げる木暮君、倒れた壁山君に躓き転んでしまった。そして...木暮君のいる場所に竜巻が起こった。

しばらくの沈黙、竜巻が消え去った先には エイリア学園は居なくなっていた。



「3分経ってる...」

「時間にシビアな宇宙人ね」



眉間に皺を寄せた顔をお互い見合わせて 肩を落とした、誰1人怪我をしてなくて良かったわ。



「木暮くんスゴい!」



キラキラと恋でもしてるように瞳を輝かせて、音無さんは 木暮君に向けて 今日何回目か分からない大声を出した。











試合が終わり 2時間程練習をした後 俺達はまた市街地にある銭湯へと向かう、長い長い階段を降り 辿り着いた市街地 華やかに着飾った女達が沢山居た。



「あの人 〇に似てる」

「スゲー美人だな」



一之瀬と土門の声に皆が振り返る、黒い髪を結い上げた着物姿の女は 確かに恐ろしい程◎に似ていた。
黒地に鶴と椿が描かれているその着物と赤い口紅は、上品なのに 毒々しく 出会った頃の◎を思い出す。

その女は 薄暗い道を無表情で歩いていた、向こうは漫遊寺中だが...?何故か妙に胸騒ぎがして 女を見つめていたが、土門のお気楽な声に現実へと引き戻された。



「なあ、鬼道 ◎チャンと似てただろ?」

「...似てるが、似てない」

「そうー?似てると思ったんだけどなぁ」

「...き、気になってたでヤンスけど...鬼道さんと〇さんって...付き合ってるんでヤンスか!?」



俺も知りたいっス!と壁山までもが 俺にずいっと顔を近付ける。ニヤニヤと笑う土門と一之瀬とは別に他の奴等は俺の顔をキラキラとした眼差しで刺すように見てくる。



「はぁ...言うつもりはなかったが、そうだ 付き合っている」

「えー!?!??」

「え、円堂 そんなでかい声を出されると鼓膜が破れる...」

「え!?いつだよ、俺...俺全然知らなかった!」



鈍感な円堂にクスッと笑ってしまった、他の連中は全員勘づいてたと思うぞ。と言えば 「なんだよ!俺だけが知らなかったのか!?」と目を大きく見開き皆の顔を見た円堂。



「キャプテンは そういうの疎いでヤンス!」

「俺、そういうの 本当に分かんねーんだよな...」



青い暖簾がヒラリと舞う。

「いつ付き合ったんだ?」「キ、キスはしたでヤンスか!?」「どっちが告白したんだ?」なんて 気恥しい質問責めに1つずつ答えながら、暖簾の隙間を潜った。



20180417

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