「◎は 今何処に?」
「...どちら様ですか?」
突然目の前に現れた着物姿の顔色の悪い女は、無表情で〇さんの名前を呼ぶ。怪しいその女に警戒して古株さんにアイコンタクトで マネージャー達をキャラバンから出さないでと目を細めた。
「あら 分からないの?〇の母です」
「〇さんの?」
「ええ、あの子に用事がありましてね」
「証拠は?」
「瞳子監督、その人は母です」
見た事ないくらい怖い顔をした〇さんがジャージ姿で立っていた、親に会ったというのに こんな表情をするだろうか。
違和感を感じるも、どうこう言える立場ではない為 彼女とその母親を交互に見つめた。
「何の用なの?」
「酷いじゃない久し振りに会ったのに」
「...忙しいのよ」
「お祖母様が亡くなったのよ、2、3日でいいから私と一緒に来なさい◎」
眉間に皺を寄せ疑ってる様子の〇さんは1歩後ずさった。
「〇さん お祖母様が亡くなったのなら行ってあげないと、こちらの事はしばらく彼女達に任せればいいわ」
「瞳子監督...」
「ほら、早く準備なさい?車を市街地の方に待たせてあるのよ」
冷たい瞳をした人だ、ゾワッと背筋が凍るようなその声と瞳に 唾を飲み込む。〇さんは目も合わさず無言でキャラバンへと向かう。
「瞳子監督、2日程行ってきます」
「え、ええ...気を付けて また連絡してちょうだい」
制服に着替えた彼女は青白い顔をして 漫遊寺中の門を潜った、何故か 止めないといけないんじゃないか と思ったが...親子間の事に入る訳にはいかず もう彼女達は居ないというのに呆然と門を見つめた。
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「本当の理由は?」
「あら?察しがいいのねぇ 実はね?今付き合ってる男の人が貴女に会いたいって」
「...それだけの事で?」
「2日くらいでいいんだから、我慢しなさい」
急にドスの効いた声で私を一瞥する、市街地を少し抜けた場所に停めてある黒塗りの車の前で立ち止まった。運転席から顔色の悪いサングラスをかけた男が死人の様な顔をしてユラリと出てきた。
「愛媛の埠頭までお願いねぇ」
「畏まりました 〇様」
「愛媛...?」
ニコリと笑い母親は私を奥の方に押し込む、結い上げた髪をひと撫でして「それじゃあ 上手くやるのよ」とヒラヒラ白い手を振って 市街地の方へと消えていった。
車に残された私は 嫌な汗がどっと噴き出す、ドアを開けて逃げようとしたが ロックが掛けられていて開かなかった。
「オイオイ あんまり暴れんなよ◎チャン」
「誰よ、貴方」
「俺?俺は 不動明王」
目つきの悪いその瞳 深い緑色が私を捉えた、口角を上げ 続け様にこう言った。
「あの帝国の鬼道の彼女なんだろ?お前」
「なんで知ってるのかしら」
「お前を餌にするために 色々調べたんだよ」
「餌...?」
「そう、餌 鬼道有人をブッ潰す為のなァ」
気でも触れてるんじゃないかってくらい楽しそうに笑う彼の首元には妖しい色をしたネックレスがぶら下がっていた。
「なんで鬼道君を潰すのよ...?」
「んー それはまだ内緒だな ◎チャン」
「もう降ろしてちょうだい、漫遊寺に戻るわ」
「鬼道の大事なモン、殺しちゃおうかなー」
「私なら別にイイわよ 好きにすれば?」
「誰がお前って言ったよ」
鬼道有人の親友君達がお前のワガママのせいで死ぬぜ?そう笑う彼の目は本気だった、怒りと焦りで 目の前がボヤけるが私は 不動と名乗る男を睨み付けた。
「怖い顔すんなよ」
「大人しく着いていくから、他の人には手出さないで頂戴」
「...クック、愛だねェ 鬼道って奴が惚れる理由が分かるぜ」
20180417