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「隠し事のある関係は無理なんだ、◎...別れよう」

「......は?」



◎は綺麗に整った眉をひそめて俺に半歩近寄る、誰が見ても動揺していると分かるそんな態度に少しは自惚れてもイイだろうか。

冗談で言った訳では無い事はコイツも分かっているだろう、隠し事を1つずつ許していけばどこかで絶対に歪みが生じる...そんな関係など嫌じゃないか。



「子供っぽい事言わないでよ」

「そうやって隠し通そうとする方が子供じゃないか?」

「...ほんと嫌な性格」

「なんだ?言う気になったか?」


「なんにもなかったって言ってるでしょ、貴方みたいな男こっちから願い下げよ」



バシッと俺の腕を跳ね除けて 怒りを露に◎は黒い髪を揺らして、みんなの元へと行ってしまった。



「まったく、頑固な奴だ」



先程触れた首の熱はもう指先から消えて 代わりに、もうすっかりと嗅ぎ馴れた彼女の甘いバニラの香りだけが残された。









うんざりする程に頭の中でリピートされる鬼道君の言葉、私に向かって別れようなんてよくも言ってくれたわね...なんて事を考えても私の方が彼に惹かれているのだろうか。

ピリピリと皮膚が乾燥して痛くなるようなあんな感覚、1秒毎に痛みは増していく だから心なんていらないのに。



「...なによ、」



みんなの元に戻る前に 情けない私の心が涙を流したようだ、マスカラを伝って落ちる涙は あともう少しだけ流せばきっと取れて黒い涙に変わってしまうのだろうか。

目が赤くならないように頬に流れ落ちた涙だけを拭い、近くの部屋に入った。



「...◎?」

「風丸くん、?」

「どうしたんだ...!?」



誰にも見られたくなかったのに そんな時に現れるのはお約束か、風丸君は練習でクタクタになった体を引きずるようにして私の方に 白い綺麗な指が私の頬の涙をすくう。



「お前も涙を流すんだな」

「失礼ね」

「人間らしいところもあるんだなって意味だよ」

「益々失礼だと思うけど?」

「何かあったのか...って、聞いてもお前は答えないよな」



よく分かってるじゃない と言いたかったけど、声が震えてしまいそうだったからやめた。代わりに 風丸君の肩におでこを乗せて泣き顔を見せないようにして 私は肩を小さく震わせて涙を流す。

風丸君の唇が薄らと開いた音がしたけど、彼は何も言わずに私の肩をぽんぽんと叩き頭にジャージを被せてくれた。椅子に私を座らせ 風丸君は「部屋の前にいるから」と小さく呟いて、出ていってしまった...

風丸君だって 男らしいところあるんじゃない。

鬼道君は今頃 みんなの所だろうか、あーあ こんなに泣いてしまって私はどうやって戻ればいいのか。可愛げのない事ばかりを考えながら 涙を流す私は、子供っぽいのだろうか。











スパイクを小さく鳴らしながら廊下を歩けば 腕組みをして天井を見ている風丸が...、何をしているのだろうかと 近寄れば困ったように眉を下げた風丸にいきなりこんな事を言われた。



「まさかお前が◎を泣かすなんて思わなかったよ」

「...なんの事だ」

「めちゃくちゃ泣いてるぜ、お前...何したんだよ」

「いや 何もしていない、と言ったら嘘になってしまうが...まさか」


「俺は行くぜ 鬼道、ちゃんと謝れよ」



ヒラヒラと手を振り去っていく風丸の後ろ姿はどこか楽しそうで、俺はそんな後ろ姿を見届けて そっとドアの前に立った。

開いた扉の向こうには 顔を抑えて肩を震わせている◎の姿が...。



「かぜまるくん?」


「...いや、俺だ」



被っているジャージをぎゅっと握って◎はもっと小さく体を丸めた、こんな風に...こいつは泣くのか。



「出ていってよ」

「◎、意地になるな 話せばそれで終わりだろう」

「鬱陶しいわね、何もなかったって言ってるでしょ...!」

「そんなに震えて 嘘だって分かる 言え◎、何をされた」



◎の前にしゃがみ込んで顔を見ようとすれば逸らされた、小さい頃 春奈が駄々をこねて叱る時もこうしていたな。

懐かしさを感じながらも、俺は◎の意固地な態度に少し苛立ちを感じていた。いや 彼女にはでない、彼女と俺の芽生え始めていた 大切なものを切り取るようにして裂いた影山と不動が憎くて堪らない。

それを今彼女にぶつけようとしている俺も、愚か者だな。



「◎」



唇に触れてみれば しょっぱい涙の味がした。




20180601

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