「円堂君をメンバーから外します」
驚きの声を漏らす部員達、だけど私と雷門さんはこんな日が来るんじゃないかと思っていた。文句を言ったってどうにもならない状況になってしまったようで、静かに次の監督の言葉を待つ事に。
「円堂君を除くこのメンバーで エイリア学園との戦いに臨みます」
「そ、そんなぁ...」
「鬼道君 貴方に新キャプテンをお願いするわ、宜しく」
「お断りします」
鬼道君の言葉に瞳子監督の靴音が止まった、ゴーグルをしていたって分かる真っ直ぐ瞳子監督を見つめて鬼道君は言葉を続けた。
「俺たちのキャプテンは円堂だけです アイツは必ず立ち上がります、それが円堂守だからです」
その声の強さに 私は喉奥が熱く震える、振り向いた瞳子監督は相変わらず表情がないように見えるが 少しだけ柔らかく口角をあげたように感じた。
「...明日、ここを出発するわ 誰もついてこないなら新たなメンバーを探すだけよ私はエイリア学園を倒さなければならないの」
キャラバンの方に向かう瞳子監督の後ろ姿から目線をあげて 鬼道君は円堂君のいる屋上を見つめる。どんな事を考えているのだろうか。
「鬼道君...!」
サッカーボールを受け取り 微笑む鬼道君につられるように、皆の目にもう一度火がついたようだ。期限は明日 それまでに、円堂君は戻ってくるだろうか。
▽
「鬼道君」
「◎」
「少しだけ いいかしら」
ウォーミングアップを始めた土門達に視線を向けるがコチラに気がついていないみたいだ、◎が指さす方向には校舎が こんな時になんの話だろうか。
コツンコツンと少し高めのローファーの踵が校舎の床を鳴らす、綺麗な黒髪は相変わらずいい匂いがして ◎と二人でこうして話すのは随分久しぶりな気がして 少しだけ胸が高鳴った。
「鬼道君 無理してるでしょ」
偶然見つけたという空き教室に入り込んだ◎の後ろに続く、少し埃っぽい机と椅子に座り彼女は俺の瞳を真っ直ぐと見つめた。
「無理などしていない」
「どうかしらね」
「急にどうしたんだ」
「...こんな時だから、もうつまらない事をするのはやめましょうよって 言いたかったの」
ふてぶてしい目尻をわざとらしく作って 彼女は俺の手を握る、柔らかい温度 それを握り返せば彼女は嬉しそうに笑った。
「不動に 貴方が思っている様なことはされてない、確かに乱暴はされたけど 最後までじゃない」
「...すまなかった そんな事を言わせるのもどうかしていたな、俺は 自分で思っている以上に子供だったのかもしれない」
「お互い様なんじゃないの」
握っていた指を絡めれば 熱は直に伝わる、栗松や風丸を失くして 円堂までも失いそうになっている今...俺にとって◎のような存在は大切だ。
「お前が好きだ」
「...知ってるわよ、いつも 私の事ばっかり見てるんだもの」
「お前を俺を見てただろう」
図星だったのか 手の甲に爪を立てられた、そんな彼女があまりにも愛らしくてそっとキスをしてみる。
「...そろそろ戻らないといけない、俺たちのキャプテンを守るためにもな」
「鬼道君の事 カッコイイって初めて思ったわ」
「いつでもカッコイイはずなんだがな」
ジョークを言ってみたくなるほど 少しだけ心が晴れやかな気分に、グラウンドに向かう間ずっと俺達は 指を絡めていた。
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「皆 迷惑かけて済まなかった 俺もう迷わない!」
「円堂 雷門のキャプテンはお前しかいない」
キャプテン 円堂 と嬉しそうな声がグラウンドで揺れている、立向居君の特訓とみんなの頑張りで どうやら立ち直ってくれたみたいだ。
円堂君のいつも通りの笑顔につられてしまった。
「すみませんでした!監督、もう一度よろしくお願いします!」
「これから先もチームに必要ないと思ったら容赦なくメンバーから外すわ」
「はい!分かりました!」
「俺も一緒に戦わせてください!」
今回 円堂君が立ち直る為のキーになった立向居君は、犬のような懐っこい笑顔で円堂君に走り寄る。
「マジンザハンドができるようになったら言おうと思ってたんです!」
「立向居...!いいですよね、監督!」
まるで拾ってきた犬を飼いたいと言ってるような二人が面白くて雷門さんに言ってみれば彼女は「そんな言い方失礼よ!」なんて言いながらも少しだけ笑ってくれた。
「ええ」
「ありがとうございます!!」
深々とお辞儀をして得意げな顔の立向居君に晴れ晴れとしている円堂君、そしてみんなの笑顔に 嬉しそうな鬼道君の顔に こういうのも悪くないわねなんて思った。
20180801