それは一瞬の出来事だった。
ピンク色の髪に褐色の肌に水滴がよく合う男の子が海に落ちてしまった目金君を助けてくれた、バツの悪そうな顔の目金君に円堂君は「まったく」と呆れ声。
「いやぁ...あまりに珊瑚が美しいんで...」
「気をつけてくれよ、ありがとう!君は目金の命の恩人だ!」
綺麗な海を自在に泳いでいた彼は当たり前だが人魚ではなく人間だったようだ、筋肉質な身体から雫が落ちていく。
鬼道君が居なかったらきっと私は彼に目を輝かしていただろう、そんな事を考えていたら目金君が失言してしまったらしい。
「馬鹿野郎!海を甘くみんな、海は命が生まれるところだ命を落とされちゃたまんねぇよ!」
彼の言葉が波音と重なった。
「...はぃ、」
「まっ 何よりさー無事で何よりだ じゃあな」
ウィンクして彼は背を向けた、円堂君の後ろで私達は去っていく彼の背中を見つめる。
福岡から沖縄に向かう途中の離島で私達は足止めを食らってしまった、そんな事も気にせずに練習を始めてしまった円堂君達。
「暑いわね」
「私も日傘持ってくればよかったわ」
「あら?一緒に入る?」
汗でじっとり濡れた首を私の方に回して雷門さんは少しだけ傘をずらす、普段ならこんな事しないけど 私はその隣に遠慮がちに立ってみた。
「あっ!ずるいです、私も私も!」
「音無さんまで入ったら狭いわよ」
「くっついとくから大丈夫です!」
「余計暑くなるじゃないの!」
「もうっ 3人とも何してるの」
呆れた顔しながら木野さんは優しく私達を見て、タオルを袋から取り出した。
「木野さんは暑くないの?」
「暑いけど 南の島の香りがして 気持ちいいかな」
潮風で髪がギシギシになるけど確かに南国特有の香りが心地よい。音無さんは楽しそうに私と雷門さんの真ん中に立って 砂浜で青いマントをひらひらと靡かせる兄である鬼道くんを見つめた。
「...お兄ちゃんウソみたいにこの景色が似合わなくて面白くないですか?」
3秒間私達は彼を見つめて口角を上げて笑ってしまった、自分に視線が集まっていることに気が付いたのか彼は不思議そうに眉を垂らした。
▽
「探すしかない 地球最強のサッカーチームになるためにもな」
次の日、私達は豪炎寺君かもしれない炎のストライカーと呼ばれる子を探しに行く事になった。
「◎ お前も俺達と一緒に来い」
「はいはい」
「返事は1度でいい」
「土門君にも言ってきなさいよ」
へらっと土門君みたいに笑えば鬼道君は私の制服をつまんで自分の横に立たせる、当たり前のように私を横に連れて彼はみんなの方を向く。
「みんな!気合入れていこうよ みんなで探せばきっと手がかりが見つかるわよ!」
ずんと軽く沈んだ皆の気分を上げていく木野さんに楽しそうに笑う皆、南国の空がそんな彼女によく似合う。
▽
「それにしても暑いな」
「そのマントとゴーグルを取れば少しは涼しくなるわよ」
「これは俺のトレードマークだ」
「ねえ、立向居くん 鬼道君のこの格好暑苦しくない?」
「え、え!?いや、」
「ちゃんと言ってあげるのもその人の為よ」
「オイ ◎やめないか」
カチコチに緊張して固まってる立向居君と眉間に皺を寄せた鬼道君の間で私は空を見上げた、本当に暑いな。
そんな中 サッカーボールを蹴り合う小さな子供を見付けた円堂君は楽しそうに駆けていった、鮮やかな花が幸せそうに咲いてる広場に 子供達の悲鳴のような泣き声が響く。
「円堂 何したんだ」
怪訝な顔の鬼道君の声の後 猛牛のような男がコチラに向かってくる...どんな怖い男かと思えば、割烹着に身を包んだ大男だった。
「誰だぁ!?俺の弟を泣かしたのは!?」
「あのお兄ちゃんボール取った!」
「ごめんごめん...そんなつもりじゃなかったんだ、ごめんなぁ...」
「本当だろうな?...大体お前怪しすぎだろ その眼鏡!」
「失敬な奴だな」
思わず笑い出してしまった私を鬼道君はじろっと睨んで来た。
20190312