試合が中盤に差し掛かったところだろうか、この前練習をしていた方のチームの少年が一人影山さんに殴りかかろうとしていて私は無意識のうちに走り出し叫んでいた。



「やめて!!!!!!」



影山さんの前に立つ。キッと睨むと少年たちはギョッとした顔で私を見ている。



「やめて、影山さんに…暴力ふるわないで…」



震える声で言うとその中一人が「そんな奴を庇うな」と言った。頭に血が上った私は泣きながら



「貴方たちが嫌いでも!影山さんは私を助けてくれた!だから私は庇うわ!!!!」



叫ぶと、辺りがシン と静まった。



「◎…もういい、さがってなさい」

「でもっ…!」



私たちのやり取りをみて動揺する少年たち、やがて試合が再開して昨日練習していた少年たちが勝った。同時に影山さんが今までしてきた罪を聞いてしまった、犯した罪を私に聞かれたせいか少し悲しそうな顔をして、影山さんは私を連れてグラウンドを出て行った。後ろからは少年たちの怒鳴り声が聞こえてきた。




「影山さん」

「…どうした」

「私、気にしてません」

「そう、か」


「私は影山さんに助けてもらった、だから…気にしません、味方です」



◎が私に言った言葉が胸に突き刺さった。軽蔑ではなく、味方と…その言葉に胸がジンワリ熱くなった。



「ありがとう」



この言葉を言うのはいつ振りだろうか。すごく気持ちがいい、晴れている空に◎の言葉が私の心を溶かしていく。



いつも通りに食事をすませて◎にどこに行きたいと聞くと、映画が観たいと答えたので連れて行った。◎は映画館に来るのは初めてらしく、楽しそうにきょろきょろしていた。そんな様子を見てほっとしている自分を笑った。



「何が観たいのだ」



私が聞くと 今大人気の恋愛ものの映画を選んだ、チケットを買い食べたそうにしていたのでポップコーンを買い与えた。映画が始まり◎は食い入るように観ている。だが、終盤に差し掛かり今まで楽しそうにしていた表情が悲しそうな表情になった。映画の中では恋人たちが笑いあっているというのに。



「ねぇ、影山さん」

「どうした」

「恋って…どんなもの?」



一瞬時が止まった。
私は恋愛などしたことがない。性交渉の経験はあるが恋愛などしたことがなかった。それに対して答えられない自分が情けなく感じた。



「さ、あな」

「そっか…影山さんも私も恋なんかしたことないんだね」



悲しそうに笑う◎の顔が痛々しかった。





20131216

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