「あ、おはよう」
「おはよー!」
出勤前のエレベーター前。出くわした彼は、いつも通りの挨拶を交わしてくれた。
「今日は任務なんだ」
「はぁ〜〜大変やなぁ」
通勤時間が同じで、エレベーターに乗るタイミングが毎日一緒という偶然にお互いが気づきはじめて一週間くらい経った時。どちらからともなく声をかけたのがキッカケで仲良くなった。
彼はソルジャー2ndで、一個上のお兄さん。気さくでおもしろくて、すぐに意気投合してしまった。
「どこ行くん?」
「コレル山。あの地域は暑いから嫌いなんだけど」
「ふ〜〜ん。でもコスタ近いやん!バカンスバカンス!」
「そんな暇ねえっつーの」
駆け登る狭い空間の中で、朝のひと時を過ごす。少し特別な時間。誰も知らない世界の中で唯一出来た、友達。
「けど一回行ってみたいんよなぁ〜〜」
「今度行くか?」
「…え?」
チン―
エレベーターが止まり、扉が開く。
「お前の水着姿、楽しみにしてっから」
爽やかな笑顔を浮かべた彼の顔が、扉の向こうに消えて行った。
…何だろう。この胸のトキメキは。久しぶりのドキドキ。もしやこれは。
「オフィスラブっ」
「……何を一人ブツブツ言っている」
「っ!?」
振り向けば何時の間にやらそこにはルードの姿。…どうやって入ったのだ。さすがタークス。って感心してる場合ではない。乙女な呟きを聞かれてしまったではないか。
「?…顔赤いぞ?」
「!っも、元からや!!」
「…?」
次に扉が開いて刹那、真っ赤な顔のまま風のように走り去ってしまった彼女。ルードはその背を見つめながら、自身もエレベーターを降りた。
「…レノに報告だな」
先ほどの光景を、バッチリサングラスの奥に秘めて。