「おはよーレノ!」
いつもとなんら変わらない笑みを浮かべる彼女。いつもと違うのは、その隣に見知らぬ男がいるということ。
一つ手を挙げて返事をし、隣の男をまじまじと見やる。男は気づいて会釈してきたが、その作ったような笑顔が気に食わない。近くで見る彼からは真面目で硬派な感じを受けた。まるで自分とは正反対の特徴だ。かといってルードと同じかと問われれば、そうではない。
「初めまして。僕、ソルジャー2ndの――」
「あぁ…自己紹介はいらないぞ、と。男には興味ねえからな」
「うーわ出たっ。ごめんな、この人女好きやからしゃーないねん」
なんでお前が謝るんだ。と思いつつ、自分のマイナスイメージを相手に言われた事に少しショックを受ける。…その発端を発したのは自分なんだけれども。
「知ってますよ。有名ですよね。タークスのエースのレノさん」
またの名をタークスのたらしレノ。彼はそう付け加えた。
「やっぱ有名なんやなぁ」
「やめろよ。…もう昔の話だ」
何故そんな事を言ったのだろう。自分でも咄嗟に出たその言葉に驚いた。…そして、自分よりはるかに驚いている隣のスキンヘッドの男。ルードはそれを誤魔化すように咳払いを一つした。
「そおなん?」
「…俺は初耳だ――っ!」
正直なルードにレノが肘鉄を喰らわす。
「とにかく。俺はもうそんな男じゃないぞ、と」
何故この男の前で、それを言うのか。何故今皆の前で、それを公言するのか。
「ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
「お前っ、…それまったく信じてないだろ」
レノがつっこむ変わりに隣の男がつっこむ。ボディタッチ付きで。それに彼女の事を「お前」と呼ぶ。…どうやらもうそんな間柄のようで。
それらに多少イラっとしたレノは、煙草を吸うからとエレベーターに乗るのを避けた。
「ほな後でなぁ〜〜!」
手を振る彼女の横でまたもや笑みを浮かべ会釈するその男。…まったくもって、気に食わない。
「……お前はわかりやすいな」
「!!」
振り返れば何時の間にやらそこにはルードの姿。てっきり一緒にエレベーターに乗ったもんだと思っていた。気配を消すのが上手いのか、はたまた存在感が無いのかは、紙一重にしておく事にする。
「何の話だ」
「……別に」
ルードは不敵な笑みを浮かべ、次にやってきたエレベーターに乗って行った。さっきのに乗って行っておけばいいものを。わざわざ自分にそれを言う為に残ったというのか。…こっちもこっちで気に食わない。嫌な親父をもったもんだ。
煙草の煙と共に、盛大な溜息がレノの口から吐き出された。