「レノ」
「…何だ?」
「どうしたん?何かあったん?」
「は?」
いきなりの質問にすっ飛んだ声を発してしまった。…どうした。何かあった。確かに、言われてみればそうかもしれない。今自分の心はモヤモヤしっぱなしだ。それは何故か。それは――。
「…何でそう思う」
逆に聞いてみた。
「えー、あのたらしのレノがたらしを辞めたっておかしない?」
「…そっちか!!」
一気に気が抜けた気がした。少しドキドキした自分が恥ずかしいじゃないか。コイツも俺をおちょくってやがるのか。
「え?どっち?」
真剣にそう聞いてくるもんだから何とも言えない。レノは話を反らす為と心のモヤモヤを晴らす為に、今朝の事を問いかけた。
「…お前さ、さっきの奴――」
「さっき?…あぁ、ソルジャー君?」
「いつ知り合ったんだよ?」
「んーーとなぁ。一週間…もうちょい前かな?いっつも朝同じエレベーターに乗るんやって。それがキッカケ」
「…へぇーー」
「何で?」
「いや、…一緒に仕事もした事ねえのに何でソルジャーと知り合いなのかと思ってよ」
「でも初めて出来た友達やねん!」
男やけど。と付け足す声はどこか楽しそうで。心のモヤは晴れるどころかどんどん濃くなっていった。
「…好きなのかよ?」
そのモヤの確信に、触れる。
「そ、そんなんちゃう!!」
否定するアクションが大きい事で、素直にそれを受け入れられなかった。
というより何故自分はこんなにもそれを気に留めているのか。親心。…違う。そんなんじゃない。いわゆる嫉妬ってやつだ。この感情は、それだ。何故、こんなにもその感情が彼女に湧き上がるのか。
「へぇ…。焦って否定するところが怪しいぞ、と」
「馬鹿っ!ちゃうもん!ただの友達やもん!!」
「どうだか」
「うっさいなぁ!仕事しろハゲ!」
「ハゲてんのはルードだぞ、と」
「あれはハゲて言わへん。ツルツル言うねん!」
「…なんだよそれ」
神羅に生息する大半の女は自分をアイドルのように扱ってくる。噂ではファンクラブまであるらしい。それもあって、自分でもそれなりにいい男だって確信している。自分をカッコイイと判断しない女などいないと。声をかければ皆がその頬を染め、少し見つめてやればその目を潤ませる。出会えばワーキャーと喜びの声をあげ、触れてしまえば昇天してしまう女が殆どだ。
…なのに。
「でもカッコイイとは思う。サワヤカボーイちゃう?」
「…どうだか」
「真面目そやし。どっかの誰かさんとは大違い!」
「…」
彼女は他の女と違った。一切自分に媚びてこない。最初に出会った時から男勝りなことはわかっていた。
…そんな他の女と対照的な態度をとる彼女との関係は少し、特別で。
「…誰もレノやなんて言うてへんで?」
「いや、その時点で言ってるじゃねえか」
自分に一切媚びない女が、他の男に媚びるなんて。
「レノは不真面目が代名詞やろ」
「…お前俺を何だと思ってるんだよ」
自分のプライドが、許さない。
「タークスのエースなところ見たことないもん」
「…今度見せてやるぞ、と」
それを見て違う自分の一面を知れば、少しは彼女も見直してくれるだろうか。
…まだまだ、時間はかかりそうだけれど。
「ホンマ?楽しみにしとくわ」
「惚れるなよ?」
ゆっくり行こう。
「はいはい。惚れたる惚れたる」
「…上から目線だなヲイ」
時間は、たっぷりあるのだから。