「あ、おはようございます」
「……、おぅ」
…最悪だ。まったくもって最悪だ。ただでさえイラついてるってのに、さらにイラつかせる因子に出くわしてしまった。乗り込んだエレベーター。今更降りればかなり不審。朝っぱらから爽やかボーイソルジャー君と二人きり、狭い密室に閉じ込められる事となった。
「…アイツ、最近どうしたんですか?」
ピクッとレノは反応を示した。ほら。聞かれた。絶対聞いてくると思った。絶対コイツも気づいてると思ったんだ。…アイツが、いなくなってしまった事。
「…何言ってんだよ?元気でやってるぞ、と」
しょうもない嘘。我ながら淋しい嘘だと思った。
「…本当ですか?まったく見ないんですけど」
おかしくないですか。彼はそう付け加えた。
「…出勤時間が変わったんだよ」
タークスにはよくある事だ。…これは嘘ではない。
その後、しばらく沈黙が続いた。チラリと彼を盗み見ると、辛気臭い顔をしていた。まったく腑に落ちていないようだった。
「…」
腑に落ちてないのは、こっちも同じ。だからこんなにイライラしてるってのに。
「…コスタ一緒に行くって約束したんですよ」
何故それを俺に向かって言うのか。
「あんなに行きたがってたのになぁ」
イライラが、化学反応するように増して行く。
「…俺の代わりに伝えといて下さいよ」
さっきの辛気臭い顔はどこへやら。まるで宣戦布告でもするかのような、とっておきの笑みを見せられた。…まったくもって、気に食わない。
「…断るぞ、と」
エレベーターの扉が開いた。
「アイツを連れ出すのは、保護者の俺が許さねえ」
そう言ってレノは、そそくさとエレベーターを降りて行った。
「…な〜にが保護者っすか」
一人残された彼は、ポツリとそう呟いた。