お犬様と私




「おて!」

「!」

「おかわり!」

「ッワン!」


漆黒の被毛はその座に相応しく高級感に溢れており、触り心地もお金持ちの家にある絨毯のように抜群。まさに誰もが欲しがる飼い犬NO.1。そんな犬と戯れる動物大好き女。他の犬なんてひけをとらない―いや、そもそも犬かどうかも疑わしいのだが、とりあえずワンと鳴いたので犬ということにしておく。


「…社長を攻撃!」

「?」

「攻撃や!攻撃!」

「??」


その座に相応い彼はやはり賢く何でもこなしてくれた。だから、その言葉にも即座に反応してくれるかと思ったが彼は首を傾げるばかりで。やはり飼い主には従順か。面白くない。


「……変なことを教え込むな」


ルーファウスは読んでいた書類から目を離し盛大な溜息を彼女に送った。珍しく自分から社長室に来たかと思えば部屋の持ち主そっちのけでその飼い犬―ダークネイションと戯れ始め、挙げ句の果てには変な企てをしはじめる始末。何がしたいのかはサッパリわからないが、とりあえずそんなところも彼女らしいのでよしとする。


「ウチこの子欲しい!」

「ほう、動物が好きか」

「ウチこの子欲しい!!」

「…私のフィアンセになれば飼い主になれるぞ」

「やっぱいらん」


即答か。ルーファウスは少し心にダメージを喰らった。


「よしブラック、散歩行こう散歩!」

「…ダークネイションだ」

「行くぞブラック!」

「ッワン!」

「……」


まるで嵐のようにその場を去って行った一人と一匹。なんだろう。何だか悔しい。ルーファウスは呆れ混じりの溜息を吐いたが、その顔には自然と笑みが浮かべられていた。



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