六番街は治安が悪い。そうエアリスが言っていた。確かにそうだと思う。やけに薄暗いし、気味も悪い。それにここのモンスターはかなりタチが悪かった。…シンバにとっては。
「アカン!無理!無理!!!」
そのモンスターを見た瞬間、自分の背中にゾクリと寒気が立つのを感じた。鳥肌やばす。もう鳥肌を越えて鮫肌かもしれない。ダメだ。やっぱり無理。自分はモンスター退治に向いてない。RPGには不向きだ。…じゃあなんでこの世界に来たんだ――
「虫、嫌いなの?」
エアリスがそう言いながらそのモンスターをぶっ叩いていた。シンバはエアリスを心から尊敬した。よくもまあそんなに気持ちの悪い虫―芋虫のような虫と対峙できるなんて。全く持って信じられない。
「〜〜〜!!」
シンバはもう見るのも無理だった。気持ち悪すぎる。弓を飛ばすのも無理、遠距離攻撃もしたくない。帰りたい。もう虫は無視しよう。放っておけばいいじゃないか。何で二人ともそんな真剣に戦っているんだ。もう虫は無視しようよ。←二回言った
…そんなシンバを、クラウドが呆れたように振り返る。
「ただの虫だろ…何も怖い事なんかない」
いや、怖い事この上ない。シンバはそれほど虫嫌いではないが、こういう気持ち悪い系の虫はアウトだった。それにこの芋虫自分らほど大きい。それが一番の問題である。
シンバは怪訝な顔をクラウドに向けた。ただの虫なんてどの口がそんな事いうのかしら。虫っていうのは小っちゃくて大きくても手のひらサイズのモノを言うんだよクラウド君。
…すると、一匹の芋虫がシンバに向かってタックルをかまそうと突っ込んできた。
「ぎゃあぁぁあぁあああぁ!!!!」
戦後最大の恐怖。既にその顔は涙で溢れている。死ねる。もう死ねる。トラウマになりそうだ。誰か助けて――
「くんな!!こっちくんなーーー!!死ねっ!死ねしね!!地獄に落ちろ!!うわぁぁああん!!!」
暴言を吐いて死んでくれるならどんなに楽だろう。口でなら幾らでも攻撃出来るのに、まったく手が出せないシンバ。
「ったく…」
そんなシンバに向けてクラウドは何度目かのため息をついた。この女はまったく世話のやける。たかが虫ではないか。何が怖いんだ。口だけは達者だな。その勢いを是非とも戦闘に活かしてもらいたいもんだ。
そう思いつつクラウドはシンバの目の前のモンスターを真っ二つに切っていた。
「ふぇえええクラウドぉ!!」
堪らずクラウドにとびつくシンバ。今ほどクラウドに感謝した事があっただろうか。
クラウドは驚いて一瞬身を引いたが、尋常じゃないくらいに泣いているこの虫嫌いな女を見て、仕方なしにそれを受け入れてやった。
ポンポンと、あやすように頭を撫でるクラウド。それにちょっとでもキュンとしてしまったシンバは、やっぱりクラウドはツンデレだと再確認するのであった。
…それをエアリスがこれでもかというくらいニヤニヤしながら見ているのに気づくのは、もう少しあとの話。