一人戦うクラウドを待つというティファを残して、シンバ達は先にエレベーターに乗り込んでいた。
エレベーターで降りる際にも、神羅の警備兵や機械達の奇襲は止まなかった。きっと警備が厳重になっているのだろう。難なく倒す事は出来たものの、下についたとしても神羅兵達が大量に待ち構えているのは目に見えている。
「――…俺が行くぜ!」
けれどもバレットはそれに屈する事なく、エントランスに着いた途端それら目掛けて突っ込んで行った。…わかっていても実行するがバレットの良いところかもしれない。
「チッ…!すっかり囲まれてやがる!」
しかし、バレットはアッサリ引き返してきた。
「警備兵を回すのだけは早いんよな〜」
そんなとこに関心しても仕方ない。これでは捕まるのも時間の問題である。
「やっぱり、貴方達だけ逃げて。あの人達が狙っているのは私だから…」
「そうはいかねえな」
「そやでエアリス!」
「アンタはマリンを守る為に奴らに捕まった。今度は俺があんたを守る番だ。…これ以上神羅の好き勝手にはさせねえ!!」
「…ありがと。バレットさん」
「へへっ、よしてくれよ。バレットさんなんて俺のガラじゃねえや!」
「よぉし!そおと決まれば!!――どおするよ?」
勢いよく声を上げたのはいいものの、どうする事も出来ない状況を思い出し急に不安げに声を落とした、その時。
「――みんな!!」
「ティファ!?」
振り返ればそこにはティファの姿。けれども金髪の青年―クラウドの姿はどこにも見当たらなかった。そうして怪訝に思っていると彼女がついて来いと言うので、その後をしぶしぶ追っってたどり着いたのは…神羅で唯一一般人が立ち入れる展示室。ティファは足を止める事なく展示されていた車に躊躇なく乗り込んでいく。…大胆にもほどがある。
「これに乗って逃げましょう!」
「え?これ動くん!?」
「一応本物みたいだな!」
皆は車に乗り込んだが、定員オーバーに陥って1人ハミられることとなった。バレットが大きすぎて場所をとっているのが原因なのはお察しの通りだが、なぜ身体のデカイ彼が乗り込んでか弱い自分がハミられなければならないのかとシンバは不満タラタラだった。
このデカブツめ。もうちょっと詰めれば入れるのではないか…とシンバがバレットを車に押し込んでいた、その時。
ブロロロロ――
響いて来たいかついバイクのエンジン音。
「シンバ!乗れ!!」
クラウドだ。ハーディ=デイトナを華麗に操るクラウドの姿に感動。クラウドと二ケツできるなんてこれ以上嬉しい事があるだろうか、いいやあるまい。シンバはバレットを押すのをやめルンルンで―少しドキドキしながらクラウドの後ろに乗り込んだ。
「しっかり捕まってろよ」
すぐ目の前にあるクラウドの背中をまじまじと見つめる。バレットに比べれば身体も小さく華奢に見えるクラウドだが、こうして近くで見るとクラウドもかなり逞しい身体をしているのがわかる。なんか抱きつきたい。ぎゅーッてしてみたい。…しかしそんな事をする勇気は到底ない。
一人でいろいろ想像してしまったシンバは、なんだか恥ずかしくなってそこから視線をずらした。
「行くぞ!」
クラウドがバイクを加速させる。そのまま玄関へ突っ込むかと思いきや、何故かエスカレーターを逆走し登っていく。どこへ行くのかと問う前に、シンバはこの後の展開を頭の中に思い浮かべた。
「っまさかクラウド」
「飛ぶぞ。振り落とされるなよ」
「っマジ!!!!」
咄嗟にクラウドにぎゅうとしがみついてしまった。つい先ほどの夢が現実となったが、この際恥ずかしいとかそんな問題いらない。自分の命の方がよっぽど大事である。
バリーーーーン――!!!
勢いよく窓を突き破ってビルを飛び出した。飛んでる。私たちは今空を飛んでいる。…まるでE◯のようだ。
しかしシンバはバッチリ目を瞑っていた。
「――っはあ〜〜死ぬかと思った!」
そうして上手くハイウェイに着地し、逃げるように神羅から遠ざかる。
「…シンバ、いい加減離れろ」
クラウドにそう言われ、今の状況を把握する。しっかりクラウドに抱きついている自分がそこにいるではないか。なんだか居心地がよくて離れるのをすっかり忘れてしまっていたらしい。…いい夢見させてくれてありがとう、クラウド。
そうして彼に顔を向けるも後ろ姿しか見えないので表情はわからなかったが、…いささかその耳はお赤いようで。
「…照れとんの?」
「降ろすぞ」
「怖っ!!ジョーダンやんかあ!!」
シンバは笑いながら、しぶしぶクラウドから離れた。
…しかし、今はそんな呑気なことをいっている場合ではない。後ろから神羅兵がバイクで自分達の後を追って来ていたのである。
「…しつこいなぁ〜。しつこい奴は嫌われるのになぁ〜」
シンバはバイクに後ろ向きに跨った。
「っ何を…?」
「クラウドは運転に集中しとって!…あんま揺らさんとってなー?」
そう言ってバイクに付属されていた銃をとり構えるシンバ。
「…狙うのだけは上手いねんで、ウチ」
そう言って銃を神羅兵に向けて発砲した。しっかり狙いを定めて確実に仕留める。もちろん神羅兵自身には当てず、バイクのタイヤを狙っていた。タイヤがパンクしてしまっては神羅兵も追いかけたくても追いかけてはこれまい。
「っし!百発百中!」
どお?とクラウドに振り返るシンバ。
「やるじゃないか」
「景品は何ですかー?」
「…そんなもの、ない」
「ノリ悪いなぁ。こういう時は冗談でも――っやば!クラウド!!」
安心したのもつかの間で、シンバの目に飛び込んで来たのはものすごい勢いで自分たちに迫ってくる巨大な戦車のような機械兵―モーターボール。
「…神羅も本気だな」
ちょうどハイウェイも行き止まりになり、その機械兵に挟まれてしまった。
…戦闘は避けられず、皆は戦闘体制をとった。
*
モーターボールとの戦闘に勝利し追手がこない事を確認していると、ちょうど朝日が顔を出し始めた。眩しい光があたり一面を明るく照らしていく。その光景を見つめながら、それぞれが思いに耽る。
…長い、長い一日が終わりを迎える――
「…さて、どうするよ?」
代表してバレットが口を開くも、誰も何の提案も出さなかった。これからどうしようなんて考える暇もなくて、そうしてこれから何をするのかも思いつかなくて。
暫く皆が考え込むように黙っていると、口を開いたのは意外にもクラウドだった。
「……セフィロスは、生きている――」
ハイウェイの隅っこに立つクラウドに、全員の視線が注がれる。
「俺は…あの時の決着をつけなくてはならない」
太陽の光に反射し眩しく光るクラウドの背中に、シンバは背負われている重みを感じた気がした。
「…それが星を救う事になるんだな?」
「おそらく、な」
「おっし俺は行くぜ!!」
バレットが勢いよく立ちあがった。それに続くように静かに立ち上がったのは、…エアリスだった。
「私も行く。…知りたい事、あるから」
「……"古代種"の事か?」
「…いろいろ、たくさん」
そういうエアリスの表情に浮かぶ、決意。シンバはただただその顔を見つめる事しか出来なくて、
「さらばミッドガル、ね…」
「オイラは…故郷に帰るよ。じっちゃんが待ってるんだ」
「じゃあ、それまでは一緒だね」
皆がそうして立ち上がる中で、ただただ座り込み続けているのが自分だけだと気付いた時。
「……シンバは、どうする?」
かかった声に目を向ければ、クラウドも―そして皆の視線が自分に注がれていた。
「……、ウチも、この星を守りたい」
そんな中でシンバは、エアリスと視線を合わせていた。目が合ったエアリスは、不思議そうに自分を見つめ返してきて、
「…ううん。…全て、救う」
声に出したい気持ちを抑え、シンバは心の中で誓った。
シナリオなんていらない。ここは、ここだけの世界。ゲームなんかじゃない。…だったら。
絶対に目の前でエアリスを、死なせはしないと。