ハイウェイを降りミッドガルのちょうど外側に降り立ったシンバ達。初めてみる外の景色は壮大で、一度もミッドガルを出た事が無かったエアリスとシンバはそれを見て感激していた。
「ここから先、団体行動にはリーダーが必要だ。…リーダーといえばオレしかいねえ!」
「…そうかしら?」
「えーバレットがリーダー?」
「……」
勢いよく立候補したバレットに、速攻の否定攻撃が喰らわされた。…バレットの心にいくつかのダメージが入った。
そうして話し合いの結果、リーダーになったのはクラウド。一番冷静な判断を下せるのはこの中でもクラウドしかいないであろう。
「じゃ、出発ね!」
6人―いや5人と1匹で行動するのははるかに目立つので、二組に別れて行動する事になった。とりあえずミッドガルに一番近い町カームへと向かう事になり、それぞれのパーティは出発した。
「――ねえシンバ」
「ん?」
「ずっと聞きたかったんだけど、なんでそんな格好しているの?」
レッドにそう言われ、シンバはハッとした様に自分の格好を確認する。今だドレス姿の自分に自分でビックリしてしまった。着慣れてしまったのか今ではその格好にしっくり感を感じてしまっている。しかし誰がどう見たって長旅には不向きな格好ではある。
「忘れてた…!はよ着替えたい!!」
「でも似合ってるね。ねえクラウド?」
レッドにそう言われたクラウドは一瞬シンバに目を向けたが、すぐにそれを逸らす。
「あぁ、…そうだな」
声小っちゃ。適当に言った感満載ですよお兄さん。…しかしあの時―このドレスをきた当初は感想が聞けなかったのでいささかシンバは喜んでいた。嘘でも嬉しい。自分も単純だなと思いつつ、しかし早くこの場違いな格好をなんとかしなければならないのは目に見えている。通りすがりゆく人々に不審な目で見られるのは間違いないし、それは自分が一番恥かしい。
それに武器も持っておらず、あるといえば護身用に持っているレノのロッドしかなかった。
なにかしら準備も必要だからと、シンバたちはそそくさとカームへと向かった。
***
カームに着いた一行は一度話を整理しようと宿屋に集まることに決めたが、シンバはそれを断っていた。自分は全てを知っているため、長ったらしい話に付き合うのは退屈だと思ったのだ。
それに早く服も変えたいし武器だって欲しい。自分に難しい話は無理だと適当に言い訳をつけ、あとで合流するからとシンバは一度皆から離れていた。
「――お、よりどりみどり〜〜」
呉服屋には同じ様な服がたくさんあり、ドレスを着る前とまったく同じ様な服に身を包んだシンバの機嫌は上々。
「…旅が、始まるんやなぁ――」
ポツリ。呟いたそれは、誰に届くでもなくその場の静寂に溶けていく。
この旅に乗せた思いは、きっと―いや確実に皆と違う。しみじみと一人噛みしめながら、次に武器屋に向かった。
これといって気に入った弓はなかったが、仕方なくシンプルな弓を手にした。ないよりはマシだ。ましてレノのロッドで戦うなんて、お揃いとか死んでも嫌だ。またクラウドにジュノンで買ってもらおう。…そう勝手に決めて、準備を整えたシンバは宿屋を目指した。
*
その頃宿屋では、クラウドが自身の過去の話を語っている真っ最中だった。
自分はセフィロスに憧れてソルジャーになった事。セフィロスはソルジャーの中でもダントツに優秀で強く、かつて英雄と呼ばれた彼は誰しもに慕われていた。…そんな彼と5年前にクラウドは、とある調査の為にニブルヘイムへと行ったのだった。
そしてそこでクラウドはティファと再開した。ニブルヘイムは二人の故郷で、二人が会うのも久しぶりだった。
「――おまた!」
ちょうどそこへ、シンバが戻って来た。シンバに気にせずに続けてと言われ、クラウドはまた口を開き始めた。
ティファにガイドをしてもらいながら、目的地であるニブル山の魔晄炉に皆は向かった。魔晄炉は大抵エネルギーを星からくみ出す場所であって、そのエネルギーを近隣の町などに供給する場所である。けれどもその場所では、極度の魔晄を浴びせられている者たちがカプセルの中に入っていたのであった。その衝撃的な事実にクラウドもセフィロスも驚きを隠せず、自分が普通の人間ではないと前々から感じていたセフィロスは、自分もこの様にして生み出されたのではないかと疑い始めてしまったのである。
そしてニブル山から戻ったセフィロスは、神羅屋敷―ニブルヘイムの町に造られた神羅専用の別荘に篭って書物を読み漁るようになった。誰が声をかけようともセフィロスは反応せず、何かに取り憑かれていたように本を読み耽る。…そんな日が、いく日も続いた。
「――…そしてある日、事件は起こった」
一人の兵士からセフィロスの様子がおかしい事を聞いたクラウドは、セフィロスの元を訪れた。
するとそこにいたセフィロスはもう本に取り憑かれてはいなかったが、やはり兵の言うとおり様子がおかしい事が明らかだった。クラウドはどこか、畏怖を覚える。最初は肩を震わせ泣いているのかと思ったがそうでもない。
…笑っていた。
セフィロスは、笑っていた。
『…裏切り者め』
クラウドの存在に気づいたセフィロスは、彼に向き直るとそう言い放った。
『裏切り者…?』
『何も知らぬ裏切り者よ…教えてやろう――』
この星は元々せトラという種族のもので、せトラは旅をし星を開いてきたのだという。しかしその旅を嫌う者が現れ、せトラと星が生み出したものを奪っていった。…それが、クラウド達の祖先であるとセフィロスは告げた。
そして、ジェノバプロジェクトの真実――
『…創り出されたのは、私だ』
2000年前の地層から発見された、ジェノバと名付けられた"古代種"。ジェノバプロジェクトとはせトラの能力を持った人間を創り出す事で、…それによって自分は生み出されたとセフィロスは言ったのである。
『そんな事をどうやって…っ、セフィロス…?』
『邪魔をするな』
セフィロスはクラウドに背を向けた。
『俺は、母に会いにいく――』
そうしてセフィロスを追ってクラウドが神羅屋敷を出れば、入る前にあった景色はもうそこにはなく、一面赤の景色へと変わっていた。一瞬何が起こっているのかクラウドにはわからなかった。…信じられなかった。ニブルヘイム全体が、真っ赤な炎に包まれている事が。
そんな中、クラウドは次々に人を切りつけていくセフィロスの姿を炎の中心に見つける。…それは、その姿はまるで、禍々しいモンスターのように見えた。
『セフィロス…どうしてこんな――』
セフィロスを追いニブル山の魔晄炉にたどり着いたクラウドの目に飛び込んできたのは、セフィロスと対峙するティファの姿。だが、クラウドがそれを止めようとする前に、ティファはあっけなくセフィロスに遣られてしまう。クラウドはティファの安否だけを確認し、すぐさまジェノバルームに消えたセフィロスを追った。
『母さん、一緒にこの星を取り戻そうよ。俺、良い事考えたんだよ…約束の地に行こう』
ジェノバに向かって語りかけるセフィロスの背中に、クラウドは怒りをぶちまけた。
『セフィロス!俺の家族を…俺の故郷を…よくもやってくれたな!!』
『…母さん、また奴らが来たよ』
――何の取り柄もないアイツらが、母さん達からこの星を奪ったんだよね
『でも、もう悲しまないで…』
『俺の悲しみはどうしてくれる!家族…友達…故郷を奪われた俺の悲しみは…!!あんたの悲しみと同じだ!!』
セフィロスの背にクラウドが必死に訴えるも、今だジェノバと向き合うセフィロスは声色を変えずにこう言い放つ。
『…俺の悲しみ?何を悲しむ?…俺は選ばれし者。この星の支配者として選ばれし存在だ』
それを聞いたクラウドは自身の拳を強く握りしめた。どうしてこうなったのだろう。何がいけなかったのだろう。…この任務についたことか。それとも――
『セフィロス…信頼していたのに…。いや、お前はもう…俺の知っているセフィロスじゃない…!!』
セフィロスがそこで、クラウドに向き直った――
「――…ここで終わりだ」
そう言ってクラウドは口を閉ざした。なんとも中途半端な幕切れに、唖然とした顔を皆が彼に向けた。
「…ちょっと待てよ!続きはどうなったんだ!?」
「…覚えていない」
「セフィロスはどうなったの?」
「…実力からいって俺がセフィロスを倒せたとは思えないんだ」
「公式記録ではセフィロスは死んだ事になっていたわ。新聞で読んだもの」
「新聞は神羅が出しているのよ。信頼できないわ」
「…俺は確かめたい。あの時、何があったのかを――」
シンバは黙って皆の話を聞いていた。…もしここで自分が真実を話せば、何もかもが払拭されるだろう。
「……」
しかし、そんな恐ろしい事シンバには出来そうになくて。
「ねえ、ジェノバは?神羅ビルにいたのはジェノバ…だよね?」
「神羅がニブルヘイムからミッドガルへ運んだのは確実だな」
「その後で、また誰かが持ち出した…?」
「セフィロス、やろ――」
「――がーーーーー!!!わけがわからねえ!俺は行くぜ!俺は行くぜ!!考えるのはお前たちに任せた!!!」
なら最初っから聞くな。とシンバは突然でかい声を出して部屋を飛び出していく単細胞な彼に向ってため息をつく。
そうしてバレットが部屋を後にした後、ティファはクラウドに当時の自分の姿を問うていた。その後ろではエアリスが自身について考え込んでおり、レッドがそれを宥めるように話しかけていて。
「…、」
…真実を知っているのは、自分だけ。
シンバは少し、自分の存在が怖くなった。