27 fortuneteller cats



「――すご…!」


シンバは目の前の光景に圧倒されていた。
コレル山には神羅が建設したレジャーランドのようなものがある。ゴールドソーサだ。
ゲームのアナログ画面で見ていた為、それほどゴールドソーサはたいした場所ではないと思っていたのだが、…前言撤回。まるでそこはディ◯ニーランド、いやU◯Jかと思うほどの場所だった。

すでにシンバとユフィは大はしゃぎで、入り口にいたデブチョコボの着ぐるみに抱きついたり叩いたりと、思いっきりからみだす始末。


「アイツら…!」


それを見たバレットの怒りのボルテージがあがっていき、見兼ねてエアリスが声をかけた。


「息抜きしましょ!バレット。元気だして!」

「…そんな気分にはなれねえ。俺の事は放っといてくれ!」

「そ〜お?じゃあ仕方ないね。クラウド、行こっ!」


冷たく言い放ったエアリスに、慌ててティファが駆け寄り小声で話す。


「エアリス!ちょっとひどいんじゃない?」

「こういう時は変に気を使わない方がいいよ」


あの二人みたいに。とエアリスは相変わらずデブチョコボに絡むシンバとユフィを指差した。…何て能天気な奴らだろう。しかし逆にあれはやりすぎではないだろうか。バレットが怒るのも無理はないとティファは思った。


「じゃあバレット!私たち遊んでくるね!」

「…勝手にしろ!チャラチャラしやがってよ!!俺たちはセフィロスを追ってるんだぞ!?それを忘れるんじゃねえ!!」


バレットはそう怒鳴り散らして何処かへ行ってしまった。ドスドスと歩く後ろ姿はこの景観に不釣り合い極まりなかったが、あえてそこには誰もつっこまない。


「あ〜あ、怒っちゃった」


いや、怒らせたのは自分だろ。


「……」


ティファはその後ろ姿を見つめながら、…しかしどこか安堵の表情を浮かべていた。
そうして怒るバレットが、なんだかいつものバレットに戻ったような気がしたから。


「…お前らあんまりはしゃぎ過ぎるなよ。セフィロスがいるかもしれないんだ」

「セフィロスがこんなとこにおったら絶対警備員に捕まっとるわ」

「間違いない!怪しさ120%だよね!!」

「…とにかく気をつけろ」


はーい。と元気に返事した二人は勢いよく走り去って行ってしまった。


「アイツら絶対わかってないな…」


…クラウドの苦労も知らずに。



 *



「――シンバ!どっから行く!?」

「ええ〜どうしょかなぁ!?」


ワンダースクエアの広場周辺にて、田舎者みたいに辺りをキョロキョロキョロキョロ見回しながら歩く二人。すごい、本当にすごい。夢の国みたいだ。隣のユフィの目がキラキラと輝いているが、傍から見れば自分の目も同じように輝いているんだろうな、なんて。
前を歩く人も、前から歩いてくる人も、楽しくて仕方がないという雰囲気を出しているのが目でわかる。やっぱり遊園地は皆を童心に還らせてくれる最高の場所だ。

さてどのアトラクションから乗ろうかと、とりあえず遊園地の案内マップへ足を向けた。
…するとそこへ、近づいてくる物体が。


「ヘイ!YOU!!」


何だ、新手のナンパか。そう思って振り返った二人が見た人物―いや物体に、シンバもユフィも目が点になった。そこにいたのは、ピンクのデブモーグリに乗った猫。…しかし二人が驚きを見せたのもほんの一瞬。


「何これ!?喋ったよ!?」

「出たでた!待ってましたーーー!!!」


デブチョコボの時同様、二人は目の前の物体をこれでもかというくらい触りまくっていた。シンバに至ってはその正体を知っている為、その猫の体にチャックがないかと探し出す始末。


「…ちょっとお嬢さん!何してはるんですか!?」


これにはリーブ―この猫を操作している都市開発部門統括も驚いている事だろう。


「え!?…いやぁ〜、どっから声がするんかなぁ思て…」


咄嗟にチャックを探してしまった。危ない危ない。これでは自分がコイツの正体を知っているのが暴露てしまう。シンバは誤魔化すように大きく笑った。


「僕は生きてます!正真正銘の猫ですがな〜!」

「嘘や!ホンマにか!?」

「喋る犬もいれば喋る猫もいるんだねー!」

「おもろい人たちですな〜。どうですか〜?みなさんの未来占うで〜!」

「やってやって!ウチ占い好きやねん!」

「へえ〜!アンタ占い師なの!?」


ユフィとシンバはワクワクしている。女の子はやっぱり占い大好きである。


「ボクは占いマシーンです。名前はケット・シーいいます!」

「名前なんてどうでもええ!知ってるっちゅーねん!!」

「「え!?」」

「え!?」


シンバはユフィとケット・シーが驚いた事に自分も驚きを返していた。自分何か変な事言ったか。思い返せ。先ほどの会話を巻き戻せ。


「何でボクの名前知ってはるんですか!?」

「は!?…いや知らん!勢いや!勢い勢い!…つかアンタ占いマシーンって事はやっぱ生きてへんのやんけ!!」


強引にシンバは押し通した。危ない。勢いって怖い。


「あ!本当だー!嘘つき嘘つきー!!」

「嘘なんかついてません!ボクは生きてます!」

「…どうでもええから早う占え!!」

「ご、強引ですな〜!…ほな!いきまっせ〜!」


ケット・シーは踊り出し、つられてシンバとユフィも手拍子を添える。なんとも滑稽な風景に、周りの人たちが痛い視線を送っているのにもお構いなしに。

踊り終えるとケット・シーが一枚の紙をシンバに差し出した。それを二人で早速覗き込む。


「…中吉。活発な運勢になります」

「周りの人の好意に甘えてひと頑張りしておくと夏以降にドッキリな予感。…だって!シンバ!」

「意味わからんなぁ。夏以降に恋が始まるってか?」

「アタシも!アタシも占って!」

「ほな、いきまっせ〜――!」



 *



「――…クラウド、あれ見て!」


そうエアリスに言われてその方向を見やれば、そこにはシンバとユフィとまた着ぐるみの三セット。どんだけ着ぐるみ大好きなんだ。そう思いつつ、クラウドとエアリスははしゃぐ二人の元へ足を進めた。


「あ!クラウドにエアリス!」

「こんにちは〜。お初です〜!」


シンバと同じような喋り方をするそれに、クラウドは怪訝な顔を向けていた。てゆうか喋った。喋る犬もいれば喋る猫もいるのか。と先ほどユフィが口にした事と同じ事を思っていた。


「何これ?占い?」

「なんでも占うで〜!失せ物、失せ人!何でもございや!」

「…セフィロスという男はどこにいる?」


ここでもセフィロスか。クラウドの頭の中はセフィロスしかないのか。もうこれは恋だな、恋。恨めしい顔でクラウドを見るも、そんな事思ったなんて死んでも言えない。


「ほな!いきまっせ〜!」


そうしてクラウドに渡された紙。それを見たクラウドの顔が一変する。


「…なに?どうしたの?」



『求めれば必ず会えます。しかし最も大切なモノを失います』



そこにいる皆の目が点になる。所詮占い、されど占い。いい事はいい事ですぐに信じてしまうが、悪い事は悪い事で気になってしまうのがそれ。
そしてそれぞれが自身の中で大切なものを思い描いていく。シンバは当然エアリスを。ユフィはマテリアを。エアリスはシンバを。クラウドもシンバを――…いやいや、違う。クラウドはブンブンと頭を左右に振った。なんでここでシンバが出てくるんだ。違う。俺の大切なものは――


「ええんか悪いんかよおわからんなぁ…」

「な〜んか、不気味…」

「こんな占い初めてですわ!気になりますな〜。…ほな、行きましょか?」

「…は?」

「占い屋ケット・シーとしてはこんな占い不本意なんです!」

「いやいや自分が出したんやろーが」

「きっちりと見届けんと気持ちがおさまらん!みなさんと一緒に行かせてもらいますわ!」

「…とか言って〜!!なーんか目的あるんちゃうの〜!?」


シンバは猫の首根っこを掴んで持ち上げた。悪い事をしたら叱る時のやり方だ。
そうしてまじまじと猫の目を見る。私は何もかも知っているんだぞ、的な感じで。案の定猫はギクリといわんばかりに目を見開いた。…って目、縫ってあるから開かないんですけど!


「な、何を言い出すんや!」

「…ホンマかいな?」


まるで刑事の事情聴取のようだ。シンバはその状況をすごく楽しんでいた。


「ホンマや!嘘なんかあらへん!」

「…どうする?クラウド」

「どない言われてもついて行きます!!」


猫はシンバに抓まれたままそう言い放った。


「仕方ないな…」


また喧しいのが増えてしまったではないか。クラウドは一つため息をついた。


「…そろそろ離してもらえんやろか?お嬢さん」

「シンバや。…よろしくな、ケット・シーちゃん!!」


言い方にかなり嫌味が含まれていた。やっとモーグリの上へ戻されたケット・シーは、去りゆくシンバの背中をじっと見つめる。

…この女は何かある。
そう思ったのは猫ではなく、…それを操作している本人だった。



 *



ケット・シーを仲間に迎え、そろそろ戻ろうかと思いバレットを探して辺りを散策する一行。

そうして闘技場に差し掛かった時。視界に入ったのは、…階段手前に倒れている警備員の姿だった。


「し、死んでる…!?」


こんなに楽しい夢の国で殺人事件だなんて。やはりセフィロスが来ているのだろうかと皆の中に焦りが出始め、闘技場へ続く長い階段を駆け上がりその扉を開け放つ。しかし、そこには、無残にも血を流し倒れている従業員と客たちの姿。皆は言葉を失った。


「?!」

「ひど…」

「セフィロスがやったのか…!?」


クラウドが倒れている従業員に近づく。


「これは…違う」


その従業員の傷口は刀で切り裂かれたようなものではなく、蜂の巣のように穴が開いていた。凶器は、銃。
セフィロスは銃など使わない。刀一本である。


「うっ…」


すると、倒れている中の一人の客が苦しそうな声をあげた。


「あの人生きてる!」

「おい!何があったんだ!!」

「う、…片腕が、銃の……男――」

「片腕が、銃…!?」


それを聞いて皆の頭の中に一人の人物の顔が浮かんだ、その時。


「――そこまでだ!おとなしくしろ!」


大きな男が現れた。ここの園長、ディオである。…しかし皆はそれよりも、その男の格好に釘付けとなった。


「なんで海パンやねん」


代表してシンバがツッコミをいれる。そのツッコミにお構いなしにディオは続けた。


「お前らがやったのか!?」

「…違う!俺たちじゃない!」

「はよ逃げなやばいで!!」

「ってどこ行くねんお前!!」


ケット・シーは闘技場の奥へと逃げていってしまった。そんな方向に出口があるわけないだろうが、しかし逃げるものを追うのが人間の性。クラウド達は咄嗟にそれに続いて行ってしまい、そして案の定行き止まりとなり、機械兵の挟み撃ちとなってしまった。


「くそっ!離せよ!」


機械兵に一人一人囚われ、闘技場の奥に設置されていた穴に一人ずつ落とされるというなんとも外道な仕打ちを受ける羽目に至る。クラウド達が必死に弁明しようと声を荒げるも、ディオは一向に聞く耳を持たない。
…あぁ、また落ちるのか。とシンバはため息をつきながらも、どこか冷静で。


「下で罪を償うんだな」

「うるせーこの逆セクハラ男。筋肉バカばーか!」


アッカンベーをかましながら、シンバは機械兵と共に穴に落ちて行った。



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