28.5



「あーーつーーーーいーーー」


シンバが暑いと言ってこれで二十七回目。
…クラウドは、バッチリその回数を数えていた。



ダインの元へ向かう事となったシンバ、クラウド、バレットの三人は、砂漠に出る前におかしな三人組からボスの塒は南西方面という情報を手に入れそれを信じて進んでいた。…のだが。一行に目的地には辿りつかない。寧ろ建物一つ見当たらない周りには砂漠しかない。見渡す限りの砂漠、砂漠、砂漠――

デマだったのだろうか。確かにおかしな三人だったとクラウドは今更ながら思う。一人の言う事を他の二人は鸚鵡返しするだけで全く他言しないし、その一人も必要最低限の事しか答えてくれなかった。…今思えば俄然おかしい。あの三人は暑さで頭がおかしくなっていたのかもしれない。そしてそれを信じた自分も暑さで頭がおかしくなったのかもしれないと、クラウドは汗をぬぐいつつ不満げな溜息を漏らした。


「あつい…焼ける…死にたい…」


最初は叫ぶようなその文句も次第に勢いが消えていて、イライラしすぎて水分が早くも蒸発してしまったようで、干からびてしまいそうなシンバを見れば生死に関わってもおかしくない状況ではあった。 バレットもバレットで多言しないのはかなり暑さにやられているのだろう。


「……おい、見ろよ」


そんな干からびそうな三人に、追いうちをかける様に悲劇が訪れた。


「でけえな…」

「…ついてないな」


巨大なモンスター―サンドウォームが現れたのだ。
…厄介。まじ厄介。この暑さにこのデカさはまじ厄介。シンバはまたイライラを取り戻していた。


「戦うん…?」


一応確認をとってみる。


「逃げ切れると思うか?」


…ですよね。聞いた私が馬鹿でした。なんか前にも同じ様な愚問をクラウドに投げかけた記憶があるなとどうでもいい事を考えていると、サンドウォームはこちらの気苦労も知らずに攻撃をしかけてくる。…しかし暑い。動きたくない。戦いたくない。暑い。シンバの頭の中はそれでいっぱいだった。


「…っせや!」


何かを思いついたのか突然元気になったシンバはサンドウォームから少し離れ、ポケットからあるものを取り出した。


「シンバ?」

「やってられへんからバハムート呼ぼう!」


シンバは自信満々にそう言い放った。
コスタの一件があってから今までバハムートを呼び出してはいないが、シンバは何故か強気になっていた。もう出てくるだろう。もう大丈夫だろう。きっと大丈夫。今ピンチだし。と結構あやふや感MAXな中、シンバはあの時と同じ様な形でバハムートに語りかけた。

…のだが。


「…ありゃ?」


マテリアは変わらず赤色を光らせていて。


「…なんだよシンバ、てっきり使いこなせる様になったのかと思ったじゃねえか!!」


…ごめんなさい。シンバは意味もなくマテリアをブンブンと振ってみたり叩いたりしている。
マテリアってそうやって使うんだっけ。とバレットもクラウドもいささか呆れ気味。


「なんでや!!おーいバハムート!!出てこーい!!!」


それはまるで塒から出てこないペットに呼びかける様に。


「――っシンバ!」

「? ――ふおっ?!」


クラウドの声に危機感を感じ前に向き直るとサンドウォームが大きく口をあけて自分に突進してきていた。シンバは間一髪でそれを避けれたが、…助けてくれるはずのマテリアのせいで死にかけてるではないか。中々出てこないペットにイラっとした飼い主が次に出る行動、それは。


「何で出てこぉへんねん!死にかけとるやろ!!助けろやボケナス!!」


逆ギレだ。シンバはこれでもかというくらいのイライラをマテリアに向かってぶつけていた。…はたからみれば結構おかしな光景である。


「もーーーええ!もうええわ!!もう一生あんたなんかに頼ったらへんからな!!」


ついに絶交。シンバはマテリアをしまって弓を構えた。その表情は怒りに満ち溢れており、クラウドとバレットが引くほどだった。


「だいたいお前がこんなタイミングで出てくるからアカンのじゃボケ!!!」


ついにはサンドウォームに説教し出す始末。…シンバ、落ち着け。とりあえず落ち着け。勇ましいのは嬉しいが自分達にも被害が及びそうで怖い。
クラウドとバレットは若干シンバと離れ気味に戦っていた。



 *



シンバがリミットブレイクしたおかげでなんとかサンドウォームを倒す事が出来たが、力尽きたシンバはその場に座り込んでしまっていた。


「もう嫌や…帰りたい」


ついには泣き出す始末。いったい何をしにここに来ているのかわからなくなってきた状況で、クラウドが一つ溜息をついた、その時。


「…おい、あれ――」


バレットの声に反応しその見やる方に目を向けると、…そこにはシンバが必死で呼ぼうとしていたペットの姿が。


「…遅」


呆れ返ったシンバはそう一言呟くと、砂漠のど真ん中に大の字に寝てしまった。


「遅いわハゲーーー!!」


いやバハムートハゲてねえし。
クラウドとバレットはバハムートとシンバを交互に見やった。バハムートはシンバの隣に舞い降り何怒ってるのといった顔でシンバを見、そして機嫌の悪いご主人の顔をペロペロと舐め出す始末。


「こ、こしょばい!!や、やめっ!!ぎゃハハハハ!!」


バハムートとじゃれ合いだしたシンバ。…絶交取り消し。まぁ来てくれたからいいかと今やいい方にしか考えていないだろうシンバを、二人は呆れた顔で見つめていた。


「…完全になめられてるじゃねえか」

「どっちが主人なんだかな…」


クラウドはまた、大きく溜息をついた。



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