「――ふぅ…」
部屋にはいるや否や、長いため息を吐く。ゴロンとベットに横になり、シンバは暗い部屋の天井を見つめた。
「……」
自分がこの世界に来てからどれくらいたったのだろう。ずいぶん長い間、旅を続けてきたなと思う。
最初は戸惑っていたけれど、今は全然そんなことはない。戦闘にも慣れたし、それなりに自分も強くなってきたような気がする。モンスターの死や、人の死にも耐えれるようになってきた気もした。
「…、」
しかし、比例するように様々な疑問―葛藤が多くなってきた。悩むことが最近多い。それもかなりタチが悪いことだ。考えたくないのに気にしいな性格な自分は、すぐにそれを頭のど真ん中に持ってきてしまう。いつもいつもそれを端においやるのに忙しい。
何でこんな事になってしまったのだろう。この世界の事、知らなければこんな気持ちにはなっていないはずだ。この世界の事、自分は知りすぎてしまっていたから――
「……、」
考えたって仕方ないのはわかっている。今更だ。この世界に来てからその事で悩む事なんてハナっからわかっていたはずだった。…のんびりと、どこかの街で平凡に暮らしてれば別だったかもしれないけれど。
けれどタークス―レノに捕まった時点で関わってしまっていたわけだから、どうする事も出来なかったのも事実。
「運命…か――」
運命とかそんなもの、信じた事はなかった。未来がわかって行動なんかしている人なんていない。自分が選んだ道―それが自分の未来になる。
しかしこの世界に来てからも、シナリオに従いながらも自分なりに道は選んできたと思う。…結果的に何も変わらなかった。それだけだ。シナリオと違うところだって多々あった。きっと自分が入ってきてややこしい事になっているのだろう。何かは変えられる。自分の力で、何かは変える事が出来るはずで。
…信じたい。
今は、あの未来を変えられると、信じたい。
――…
シンバの頭の中に、エアリスの笑顔が浮かんだ。