――同志
希望
セフィロスの、同志
セフィロスの、希望――
「…、」
壁画の間から飛び出してきたのはいいものの、どこにも行くところなんてなくて。シンバは崖際に腰を下ろし、頭を抱えていた。…先ほど彼から言われた言葉を、全て忘れるように。
「――シンバ」
「!」
名前を呼ばれ振り返ると、そこにいたのはヴィンセントだった。シンバは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにヴィンセントから顔を逸らす。
「…なぁ、ヴィンセント」
「…なんだ」
「セフィロスは、本気で言うとると思う?」
「……さぁな。奴の考えていることはサッパリわからんからな」
ヴィンセントの返事を聞いても、シンバはそれに返さなかった。確かにセフィロスの言っていることは桁外れで理解出来ない事が多い。…けれども、自分はその真意を知ってしまっている。だから、セフィロスが冗談でも自分を同志だと言う事なんてない気がしていた。彼は本気で言っている。本気で自分を、仲間だと思っているんだと。
「…奴の言葉に踊らされるな。お前は俺たちの仲間だ」
「……うん、」
それでも、シンバはヴィンセントを振り返らなかった。それをヴィンセントは怪訝に思ったが、あえて何も言わなかった。
彼女は一体何を隠しているのか。彼女は一体何に怯えているのか。聞きたい事は山ほどあるが、ニブル山で彼女が自分に言った言葉をヴィンセントは思い出していた。いつか話すと、彼女は自分でそう言ったことを。
その言葉を、今は信じるしかない。
「…、」
何も言わずに、その場を去るヴィンセント。
シンバはその最後の背中を振り返っていた。あえて何も聞かないのは、彼なりの優しさだと思った。
今一度セフィロスの言葉を一から考え直してみたが、セフィロスの言葉の真意が何なのかサッパリわからないでいた。同志―希望ということは、自分はセフィロスの何か役に立つということだろう。しかし、一体何に役立つというのだろうか。自分の力か。自分の能力か。自分の知っている事か。
「……」
シンバは立ち上がり、ブンブンと頭を振って思考回路から全てを消した。
…知らない。自分は何も知らない。セフィロスのその言葉の意図も、真意も、知らない。知らなくていい。考えなくていい。気にするな。もう振り回されないと誓ったはずだ。
セフィロスが望むような事を、自分がするはずがないのだから。
シンバは1つ深呼吸をして、壁画の間へと向かった。