59.5




シンバがそそくさと布団に潜ってしまったのをクラウドは少し不思議に思ったが、彼女を休めるのが先決だと思い静かにその場を後にしていた。

ロフトを降りて行くとそこには全員が揃っており、みなが神妙な面持ちをクラウドに向ける。これから絶壁に臨むのだと、そう思った。

シンバの容態が悪化した為、これ以上無茶はさせられないと数日休ませる事にした。その間にもセフィロスがメテオを呼んでしまってはいけない。だから、クラウドは皆に先に行くよう促していた。自分がシンバの側についているからと。シンバの側にいてやりたいと。

…しかし。


「…考えたんだけどよ。俺たちも残るぞ」

「っ…!?」


クラウドのその反応がわかっていたかのように、バレットはそのまま話を続けた。


「俺たちが先に行って、…それで、どうする?」


バレットが言葉を切ると同時、シドが吹かしていた煙草の煙を吐き出す。


「俺はセフィロスと何の関係もねえ。そりゃこの星を救う事はここにいる―いや、この世界にいる全員がやらなかきゃいけねえ事だけどよ」

「セフィロスと決着を付けたいのはクラウド―お前のはずだ」

「…――」


核心をつかれたクラウドは、最もな事を言われてその顔を伏せてしまった。
クラウドは忘らるる都で皆に語った事を思い出した。自身の故郷と家族を殺し、そしてエアリスをも殺したセフィロスを許さないと。彼を倒す為に、自分は旅を続けると。…そう、誓った事を。


「…皆で行くの。シンバも、一緒に」


ティファの言葉に、クラウドは顔を上げる。


「みんな一緒じゃなきゃ、つまんないじゃん!!」


ユフィが笑う。クラウドは一人一人の顔を見やった。皆がそれに同意するように頷いていく。
自分の我儘に彼らは付いて来てくれる。セフィロスと決着をつける事。シンバの側にいる事。


「仲間、でしょ?」


ティファの言葉が、クラウドの心に響き渡った。セフィロスとの決着をつけるのは自分だ。けれども、皆の支えがあってこそそれは成り立つもの。誰一人として欠けてはいけない。


「あぁ。そうだな――」


皆は、凛としたいい表情だった。いい仲間を持った。クラウドは、張り詰めていた心が少し緩んだ気がした。


「一日休めば、アイツも元気になるだろ」

「ユフィの次に元気だけが取り柄な奴だと思ってたけどな」

「それってどういう意味!?褒め言葉!?」

「褒め言葉に決まってるじゃない」

「そっか!なら許す!!」


クラウドはロフトを振り返った。起きたらきっとシンバは驚くだろう。その時の彼女の表情を想像して、クラウドは一つ笑みを残した。



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