「うぅっ――」
揺れ動く飛空艇。その片隅で、一人項垂れるはそのメンバーの中でも突飛してテンションを高く保ってきた少女―ユフィ。
「今度はどこへ行こうってんだ…」
飛空艇を手に入れてからというもの、移動は専ら空の上となった。いつもなら作戦会議でなくとも人の話に割って入って話をややこしくするのを得意としてきたユフィも、ここではその活躍を見せる事すら無に等しい。酔いに弱い彼女は蛇に睨まれたカエルのように大人しく、全くもって本編に出てこなくなってしまった。←
「忙しい人たちだまったく…」
けれどもハイウインドでの会話は、少なからずユフィの耳にも入っていた。その中でもやはり衝撃的だったのはシンバの裏切りの話。ユフィだって最初は、全くもってその話を信じてはいなかった。
「あーー…」
素直にそれを受け入れられなかったのは、その"裏切り"に似たモノを自分が持っていたからという事もあった。ウータイに入る前に仲間のマテリアを全て掻っ攫って逃亡した。彼らの力の糧であり、それを持って星を救おうとしているのに、全て奪いウータイの為に使おうとしたのだ。
形は違っても一応それだって"裏切り"行為にあたる。もちろん今は反省している。…マテリアに対する執着心はあの頃となんら変わっていないけれども。
「揺らすなっての…」
…シンバだって、自分と同じで理由があってそういう事をしているんだとユフィは思っていた。なんの確証だってない。ただの勘だ。いわゆるこれが女の勘ってやつだ。
「パイロットのヤツ、覚えとけよ…」
あんな事をした自分をシンバが直接非難してくる事はなかった(ティファやクラウドにはこっぴどく叱られたが)。からかってきただけで、笑って許してくれた。彼女はいつだって自分の味方で、一番の友達だった。結構年上だけど、そんな事感じさせないくらい自分と仲良くしてくれた。
…だから、今度は自分が。
「…お?止まった――」
彼女の味方になる。彼女を一番にわかってやれるのは、自分なんだって。
「――オラ、行くぞユフィ」
それにきっと、彼女は戻ってくると心のどこかで確信していた。何事もなかったかのように。そう、それは、あの時の自分と同じようにして。
「大丈夫?ユフィ」
早く帰って来ればいい。シンバが自分にしてくれたように、自分も笑って受け入れるつもりでいた。
「…なんのこれしき、」
…それで、おあいこだ。
「ユフィちゃんは強いからね――」
同じように思いっきりからかって、迎え入れてやるんだから。