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作戦が粗方決まり、その準備のため近くの村に寄り道。物資を調達しながら、なんとか無事に礼拝堂に到着。リヴァイとハンジが中を確認に入り、その他は奇襲作戦の為の準備を行う。ルピは礼拝堂の上で見張りに徹した。マルロとヒッチには自分が中に入るまではその辺りの草むらで待機してもらっている。

礼拝堂自体はそんなに大きな建物ではなく、スラっとした三角屋根の可愛らしい建物だった。聞き耳を立てるも、地下からは何も聞こえてきそうにない。巨人特有の足音も今は無さそうだが、…果たして二人は無事だろうかと、いざ目的の場所に着いてから起こるかすかな胸騒ぎ。


「――ルピさん!」

「!」


暫くしてサシャが手招きしたのでルピは見張りを二人に任せ、礼拝堂の中へと入った。
山小屋より狭い室内。祈りを捧げるためだけの造り。古びた木のベンチ、祭壇など、必要最低限のものがあるだけ。そして大きな窓ガラスにはステンドグラス。明るい時に見れば綺麗なんだろうなと悠長なことを思ったが口にはしない。
そしてそれをルピも目に捉えた。捲られたカーペットの下、人一人分が入れそうな扉が、一つ。


「エレンも敵もこの奥だろう。…私が予想したとおりの地形だといいんだが」

「わざわざ寄り道して手土産用意した甲斐があればな…」

「――準備整いました」

「そうか…それでお前ら…手を汚す覚悟の方はどうだ?」


104期の顔を見渡す。グッと空気が締まる感じがした。
クーデターは成功したがしかし、まだ敵―中央憲兵は我々の殲滅を諦めた訳ではないだろう。ここに入れば、必ず戦闘になる。もう避けられない。
…だが、その顔に躊躇いは無い。その目にある覚悟は本物に見えた。


「…よさそうだな。行くぞ!」


バン!

間髪入れず、リヴァイは勢いよく扉を上げた。小さな入口から押し出されるように溢れ出した光に一瞬目を凝らす。日が昇る時刻を迎えたかの如く、辺りがボウと明るく照らされていく。

そして刹那、104期達お手製の爆薬―ガス管を括りつけた樽を4つ、順に中へと押し転がした。地下へ繋がる道は大抵が階段の作りになっている筈だと踏み、それは直下に落ちずシュウウとガスをまき散らしながらコロコロと中に転がっていく。
全てがその回転を止めたのを合図にルピ、ミカサ、リヴァイが先行して中に突入。すかさずサシャが火矢で樽を撃つ。ドォンという衝撃音と共に、煙と油の匂いがあたりに充満した。

入った瞬間、人の影を何個か目の端に捉える。撃たれることを覚悟はしていたが、射程距離にない為か、煙のせいか撃ってくる奴はいない。できるだけ奥に誘いこむ魂胆だろうか。リヴァイが敵数を数える音をカウントダウンのように刻みながら、誘いに乗るかの如くどんどんと奥へと進んでいく。

煙が充満していき全容はわからなくなったが、中はハンジが予想していた以上に広大な空間だった。柱のようなものが等間隔で立っているが、天井から地上から張り巡らされたように一体化して太い柱として存在している。地下とは思えないほどとても綺麗で明るい。透明が集まって色を持ち、薄水色に輝くそれ。


「……」


ルピは一瞬気を逸らしてしまった。
その輝きを、どこかで見たことがある気がしたのだ。


「突破されるぞ!!」

「撃ちおとせ!!」

「!」


右前あたりからした声の方を向けば、天井付近の柱に足場を造り、そこに敵達はペアで固まっているようだった。しかしそれも直ぐに煙で見えなくなった。爆薬から出た灰色の煙だけでなく、緑の煙がモクモクと自分の背後から真っすぐに飛んでいく。信煙弾だ。地下入り口、出来合いの盾の後ろからアルミンが様々な方向へそれを撃ち、援護に入る。


「敵数35!!手前の柱の天井あたりに固まっている!!作戦続行!!すべての敵を此処で叩く!!!」


リヴァイの声を合図に、先行した3人は散り散りに飛んだ。


ドン__!!
ドンドン__!!


煙に紛れながら、その音の元を断ち切る。煙で視界が悪くなるのは自分たちも同じではあるが、ここで出るのが経験の差。耳の良いルピにとっては絶好のシチュエーション。狼狽えるそれたちの背後を取るのは容易く、そして容赦なく、ルピはその項を削いでいく。


シュパッ_!!

ドン__!!


作戦が功を奏しているのは徐々に減っていく銃声で感じていた。あの長身の男―ケニーの姿が見えないことだけが懸念材料であったが、一刻も早くこの場を切り抜けエレンとヒストリアの元へ。…そしてあの小父さんに会い、自分の姿を見せれば、きっと、


「っハンジさん!!!!」

「「!」」


それはジャンの声だった。悲痛な声に全員がその方へ目を向け、そのスピードをピタと緩める。柱についた血、そしてその下に倒れるは、――ハンジの姿。


「今だ!!総員撤退!!この煙から離れろ!!守りを立て直す!!」


敵はそれを狙っていた。誰か一人でも穴を作れば、この体勢は崩れると。


「アルミン!!ハンジを任せたぞ!!」


だが、調査兵団がその程度で足を止めると思ったら大間違いだ。ずっとずっと、そうして、仲間の背を超えて飛んできた。
ルピは逃げていくそれらを追おうとそのまま奥へ進もうとしたが、――その時。


カッ_!!


「「!!」」


洞窟の奥からの激しい閃光。何度も見たことある光。これは、


「クソッ…まさか」

「巨人…!?」


ゴゴゴゴゴ……!!!


閃光の後、激しい地響きが辺りを襲った。その振動で天井からパラパラと落ちてくる破片がこの場に居る者達の心情とは対照的に輝き、そしてその輝きは大きな瓦礫となって地面へと落ち始める。


「おいおい嘘だろ…?!」

「く、崩れますよ…!!」


洞窟が崩れる程の衝撃。先程の閃光が巨人出現の合図で間違いがないのならば、エレンやライナー程度の巨人ではなく、かなり大きな―ベルトルトの超大型巨人程のものが出現したと思われる。巨人が現れた時に起こる爆風は収まるどころか激しく吹き荒れるばかり。いったい誰がと大きくなる胸騒ぎを抱えながら、エレンとヒストリアを助けるまではここから出られないと覚悟を決めて再度奥へと進もうとしたが、


「ルピ!お前はアルミンと合流してハンジを外へ運べ!エレンとヒストリアは俺たちが助けに行く!」

「っ、わかりました」


リヴァイに従い、ルピは直ぐにルヴに変わり踵を返してアルミンたちの元へ走った。



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