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「…あの、」

「なんだ」

「…昨日私を運んでくれたのは、リヴァイさんですか?」


乗馬の準備をしていた時、ルピはふとそれを問うていた。

ハンジやエルヴィンならきっと自分を起こす。けどきっとリヴァイは起こさない。…この一ヶ月で、自分も大分リヴァイの性格が分かってきた気がする。
心の中ではリヴァイだという確信はあったが、それを問うたのはお礼を述べる為でもあり、会話の種になればいいと思ったからで。


「…俺は初め、馬が子を産んだのかと思った」

「……」

「あのままにしておいてもよかったんだがな。翌朝"踏んだり蹴ったりな事"が起こったらそれは俺にも責任がある」

「…、すいません」

「誰にも出来る代物じゃねぇ…お前も相当変わった奴だ」


調査兵団にやはり向いてる、なんて。調査兵団は他の憲兵団や駐屯兵団からはかなり変人扱いを受ける。巨人に真っ向から立ち向かおうとするところが一番それを思わせるのだろう。


「…(変わった、奴)…」


実際そうだとリヴァイも思っている。エルヴィンは良い意味で変わり者だし、ハンジは言わずもがな天性の変人だし、ミケも相当変わってる。…まともなのはそうだな、自分くらいだろうか(と自分で言ってみる)。


「調査兵団は変人の巣窟だ。…類は友を呼ぶってやつだな」

「…?」


その諺をルピは当然知らない。"友"を呼ぶってことは良い言葉なのかもしれないが、…ルピがリヴァイにその意味を聞くことはなかった。
その変人の集まりに自分も変人だから入れるということ。同じ括りを持つ感覚は変人だなんて聞こえは悪いが、それでもルピを嬉しくさせた。


「今回は森を超えた平原まで出るぞ」

「はい」

「さすがにもう無いとは思うが、…途中で逃げられても俺は知らねぇからな」

「はい、大丈夫……と思います」


え、大丈夫だよねと不安になったのかルピは馬に確認している。ルピの表情はいつも通りに戻っていて、それからもそれに変化は特になかった。…あの時見た表情は、自分の気のせいだったのだろうか。


「…行くぞ。俺に二馬身遅れたらそこで終了だ」

「っはい」


そして馬術訓練二日目にして、ルピはようやくお馬様の背中に乗せてもらった。


 ===


「――天気、悪くなりそうですね…」


馬を走らせて十数分。少し休憩をとっていた時、あの時と同じようにルピは不安げに空を見上げていた。


「……」


しかしリヴァイがそれにつられてそれを見上げても、空は十分明るく淡い水色をしていた。強いて言うなら雲が少し多いくらいで、天気が悪くなりそうとかそういったことはない。


「…何故そう思う?」

「…遠くで、雷が鳴ってます」


リヴァイはチラリとルピに目をやり、彼女が見上げる空の方へと目を向ける。


「……ルピよ」

「はい」

「…お前、その耳はどれくらいの範囲まで聞こえるんだ?」

「…、ええと、」


言ってしまえばわからない。試したことなどいまだかつてなくて、それに距離の単位もイマイチ把握していない。なんせそれが普通だと思っていた。どうして自分には聞こえて、皆には聞こえないのか。ルピには逆にそれが分からなかった。


「…集中すれば、それなりに、と思います」

「…そうか」


リヴァイもさほど期待はしていなかったが、なんて曖昧な返事。…まぁ、サラリと「半径五百メートルはいけますよ」なんて言われた方が驚いただろうけど。


「……まぁいい、今度ハンジと実験だな」


奴はルピを調べたがっていたから丁度いいだろう。それに、そろそろそっちの方の訓練も始めなければならない。いきなり本番でそれを試すのは少々難がある。鼻の方もそうだな、ミケは嫌がっていたがどれくらい利くのか試しておく必要があるだろう。


「…ったく、忙しいったらありゃしねぇ」


そう言う割りに、こんな充実しすぎた訓練は久しぶりかもしれない、なんて。リヴァイは柄にもなく、どこか満足している自分がいることに気付いた。



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