「な、ななななんでここにリヴァイ兵士長が!?」
驚くのも無理は無い。無理は無いが、いやしかしどうしよう。バッチリ一緒にいるところを見られてしまった。まさかこんな時間まで彼らが外にいるなんて思いもよらない。
チラリと隣に目を向ければリヴァイは至って普通の態度をしていて、彼らを一人一人見て…いや、睨んでいた。
「お前何でリヴァイ兵士長と一緒なんだよ!?」
「…え、あ、その…」
「まさか迷子になってリヴァイ兵士長に送ってもらったってのか!?」
なんて運がいい迷子なんだお前!と言うニッグ。
「あ、あのリヴァイ兵士長に送ってもらっただとぉぉ!?」
なんて羨ましいんだ!とどこか逸れているオルオもともかく、この"事件"の打開策が一向に見つからないルピはいつになくあたふたしていた(態度には出ていないが)。
…と、いうより何故かリヴァイは何も助言してくれない。まさか自分一人で何とかしろということですかとルピが困惑しきっていると、
「…おいクソガキ共、うるせぇぞ」
「「「!!」」」
何時だと思ってやがる。そう言った瞬間その場はまるで空気までも無くなったかのように物音一つしなくなった。…すごい。これがリヴァイ兵士長の力。何故かルピまでも皆と同じように固まってしまった。
そうしてリヴァイが一つ溜息をつく。溜息をついただけなのにその場に一気に緊張が走ったのがルピにはわかった。
「……ルピ、お前にとってコイツらは何だ?」
「?」
「「「?」」」
「お前にとってどういう存在なのかを聞いている」
「「「!」」」
きっと誰もがその質問で自分の運命が左右されると思ったに違いない。口封じのために(何の口封じかはわかっていないが)削がれるのではないかと。何て理不尽な、兵士長に削がれるなら本望だ、とそれぞれの思考が両極端の中、
「"トモダチ"、です」
「…そうか」
お前らついてこい。ルピの答えを聞いたリヴァイはそうとだけ言って、ツカツカと訓練所の中に入っていった。
===
そうして五人は恐る恐るリヴァイの後について行き、何故か教官室(の事務室)へと通された。彼らはそこに入ってもルピとは違ってまだビクビクしている。何を言われるのか、何をされるのかがまだわからない為であろう。
「下手な言い訳を作るより、全てを晒す方が賢い時もある」
「「「??」」」
今がその時だ、ルピ。そう言われても皆と同様何の事だかサッパリなルピだったが、とりあえず「はい」という返事は忘れない。
「今から話す事は機密事項だ。いいな」
「「「は、はい!」」」
そうしてリヴァイはルピが調査兵団に入る事が決まっている事、彼女の能力、そして特別に訓練を受けていた事を全て話したのだった。
話している間の彼らの表情は至って正直でルピと違って分かりやすく、そしてリヴァイの思惑通り誰もが諒解の相好を示していた。
「ルピがお前らを仲間として信頼しているようだから話した。どっちにしろいずれは知る事になっただろうが、」
コイツは人類の希望だ。丁寧に扱えよ。そう言いながらリヴァイがルピの頭をポンポンと雑に叩くのを見ればどこか矛盾しているように見えるが、死んでも口に出来ない四人は揃って「はい」と返事をする。
そうして全てを話終えたリヴァイは、何故かルピだけ先に帰した。ルピはそれに素直に従って出ていき、そうしてその場に四人だけが取り残される。またもや四人はビクビクし出していた。唯一の頼みの綱(ルピ)が呆気なく切れて(去って)しまったから。
「くどいようだが、お前らこのことは他言するなよ」
「「「は、はい」」」
「それともう一つ約束しろ。アイツを裏切るような真似は絶対にするな」
「「?!」」
「…は、はい…?」
「過去にアイツは"闇"を抱えてる。これは俺が勝手に話していいようなことじゃねぇから詳しくは言わねぇが」
それでも、四人にはなんとなく察しがついていた。
「アイツにとっちゃようやく出来た"仲間"なんだ。…例えアイツが許しても俺が許さん。裏切った奴は容赦無く削ぐ」
いいな。そう言ってリヴァイは部屋を出て行った。
「「「…………」」」
残された四人は顔を見合わせるだけで誰も何も言わなかった。きっとリヴァイの最後の言葉が想像の範疇をも超えたものだったからだろう。…しかし、
「……リヴァイ兵士長って、」
「?」
「すごく……"仲間"思いなんだね…」
その静寂を破りそして誰もが口に出来なかったそれを発したのは、以外にもペトラだった。