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「…なぁ、船長」
それは、ある日の昼下がり――
甲板の上で戯れるシロクマと虎の子とそれにたじたじなキャスケットの男を父親のような目で見守りながら、今後の航海の予定を何気なく相談していた時の事だった。
「…ノノ、デカくなったと思わないか?」
いつも一緒に寝ているローだが、そんな事微塵も感じた事はなかった。…いやそれは縦というより横の話だ。華奢で、繊細で、それでいて柔らかい。その感触を思い出すと、自然と顔が綻びそうになって、
「…」
そんな表情をペンギンに悟られたくなくて大きく咳払いをしてそれを払拭し、ごまかすようにローはまじまじとノノを観察し出した。
近くにいすぎて気づかなかったのかもしれない。まだ幼い彼女は今が成長時期であるという事。…そう思ったら、確かに。言われてみればそうかもしれないと思った。
…しかし、
「…いくら何でも早くねェか?」
まだ出会って間もない間にそんなに伸びる事があるだろうか。
「…身体測定でもしておくか?」
「育成日記でもつけるか」
「…飼育員みたいだな」
「まァそれもママの仕事だけどな」
「……俺の事か?」
「よくわかってんじゃねェか」
またこの人は。ペンギンが深い溜息を吐くと同時、ローがノノを呼んだ。それに気づいて彼女はすぐさま嬉しそうに駆け寄ってくる。
…お前は犬か。と思う傍、そんな感じが可愛いくて仕方ないのも事実。
「ノノ、身長測るぞ」
「しんちょう?」
「そこに立て」
言われるままにノノは隣の大きな柱にもたれかかった。ローは持っていた本をノノの頭に置くと、ペンギンの持っていたペンで柱に跡をつけた。
「お、身体測定っすか」
「ボクのも測ってよ!」
「何でだよ」
何事かと駆け寄ってきたシャチとベポも加わって、何故か全員の身長を柱に刻む事となった。
そうして刻まれた5つの跡。一つだけ幾分低い位置にあるそれと他の4つを見比べ、ノノが不満そうな顔をした。
「…ちっちゃい!!」
「ノノはチビだなー」
「チビ?」
「おチビちゃんだ。おチビちゃん」
「ノノもおおきくなる!」
「おー、頑張れ」
「めぽくらいおおきくなる!」
「……それは困る」
「? こまる?」
何で?と首を傾げる彼女の頭をローは一撫でした。
そのサイズが黄金比率。
「ベポみたいになったら可愛がりようがねェもんな」
「……デカくてスイマセン」