「…キャプテン、遅いね?」
それを口に出したのはベポだった。あれからどれくらいの時間がたったのかはわからないが、船のメンテナンスはとっくに終わっている。ちょっとした散歩のはずが、…一体どうしたのだろうか。
「…ペンギンの胸騒ぎ、あたってんじゃね?」
冗談混じりに言うシャチに、PENGUIN帽をかぶった―その名の通りのペンギンは、まさかと今度は自分からそれを否定する。
確かに胸騒ぎは感じたが、船長にどうこうあるとかそういうものじゃなかった。そういうのじゃなくて、何か、こう――
「…あ!帰って来た!キャプテンおかえりー!!」
嬉しそうなベポの声に全員が森の方へと目を向ける。
「噂をすればなんとやらだな」
安堵したように笑い合うペンギンとシャチ。
…しかし、
「お前らすぐにオペ室を開放しろ!」
その声に安堵した心が再び違う不安に襲われる。…ほら、やっぱり何かある。すぐさま駆け出したペンギンとシャチは、船長の腕に抱えられた目の前のシロクマの白とは違うその白い物体に目を奪われた。
「…船長、それ――」
船長がモコモコした白い物体を抱えて帰ってきた。た、確かに船長はモコモコした白いものが好きだと思う。帽子といいベポといい、何かしらその類が周りに存在しているから。…この人はそういうものを集める趣味があったのか。
「虎だ、虎。早くしねえとやべェかもな」
大事そうに抱えられたそれは、見るからにグッタリしていた。綺麗な被毛を染め上げるように広がる赤が、雫となって地面にまた赤を作る。
説明が足りなさすぎるだろ。と誰しも思っていたが、とにかく船長命令は絶対だ。先にこの虎の命を助けなければ。ベポはローからその虎を受け取ると、シャチと共にオペ室へと向かった。
「…何があったんだ?」
ドタバタと治療の準備を始め出すクルーを他所に、ペンギンはただローの前に立ちはだかっていた。
「拾った」
いいだろ。と意味深に笑うロー。やっぱり胸騒ぎは当たっていた。…この人に滅多な行動はさせるもんじゃない。そそくさとオペ室へと向かう少し嬉しそうなその背中に、ペンギンは盛大な溜息を送った。
予感的中。
「……ボクの仲間?」
「「どう見ても違うだろ」」