「…――」
夜も更けた頃。船はまだその島に停泊していた。出航は明日の朝、今宵の宴はお預け。新しいクルー(獣でローのペットだが)の目覚めを待ってのことだ。
…そしてこの一件で、船長のモコモコ好きは確定した。
仲間(獣でローのペットだが)が増えるのは嬉しいことで、誰もがその虎の目覚めを待ちわびていた…のだが、
ギィィ――
…約一名。いや、一匹。複雑な心境の人物―いや動物がいた。
静まり返った船の中は誰一人として起きているものはおらずしいていえば見張りの者だけだが、見張りも外にいる為か船内に動くその獣の姿に気づくことはなかった。
「…、」
ベポは外面静かに内面はドキドキしながらそのオペ室へと向かっていた。
シャチがボソッと冗談交じりに呟いた言葉は、ベポの心に思いっきり突き刺さっていたらしい。…世代交代。ついに自分はこの船のアイドル(?)的存在から引き摺り下されるのだと。
そう思ったら気が気でなかった。別に何をしようと思ってそこへ向かっているわけではなく、危害を加えるつもりなんて毛頭なかった。そんなことしたらキャプテンに殺される。自分がその虎の餌にされてしまうかもしれない。…ただ、ただ様子を見るだけのつもりだったのに。
「…まだ寝てるのかな?」
明かりをつければバレるだろうから、視界は暗いままでベポはそのオペ室へと足を踏み入れる。
薄い月明かりに照らされたそれはあまりよく見えなかったが、…けれどもその黒いシルエットが昼間みたそれとはどこか違う気がして。
「…こんなにおっきかったっけ?」
胴体が長くなってる。瞬時にそう思った。それに頭部のそれは長く伸びた人間の髪の毛のように見える。
よくよく近づいて見れば、その胴体にあの被毛もない。白と銀はそこにはなく、あるのは肌色。胴部から伸びた二本の足は、獣にしては長すぎる。
「……」
夢でも見ているのだろうか。目の前のそれはどうみても昼間のそれとは合致しない。ベポはその小さな目をゴシゴシとこすり合わせ、今一度それを見た。自分と一緒の類ではないが、どこかで見た事あるような、ないような。…あぁそうか。そうだ。これはいつも見ている周りにいる者たちと同じ類だ。
…え。おかしくないか。どういう事だ。え。
「っぎゃああああああ――!!!」
それは、ヒトでした。
「なんだっ!?何の騒ぎだ?!」
「…うるせェなぁ」←船長