a tale 6



「ベポ…お前…」

「食ったのか」

「っ違う!食べてないよ!!」

「ヒトに置き換えたってバレるもんはバレるだろ」

「だから違うんだって!!」

「お前がそこまで追い詰められていたとは…」

「違うってばーーー!!」


先ほどのベポのありえないほどの叫び声を聞きつけたクルー達は、またそのオペ室に集っていた。

明かりをつけたペンギンの目に飛び込んできたそれは、驚いた事に紛れもないヒトだった。素っ裸で寝ているその体格からして女であることが一目瞭然だったので、とりあえずペンギンはそばにあった大きめのドレープをそれにかける。

確かにここにいたのは、あの白銀の虎のはず。しかし今目に映るのはスヤスヤと気持ちよさげに眠る10歳くらいの女の子。どうなっている。え。一体全体どうなっている。マジックか。誰かがイリュージョンでも起こしたのかとざわつくクルーを余所に、ペンギンはただただそれを見つめる事しか出来なかった。

…けれども、よくよく見ればまったくあの虎と相違があるかと言われればそうでもない。その長く伸びた髪はあの銀と同じ輝きを持ったシルバー色で。眠るその容姿も、どこかあの時の雰囲気を持っていて。


「…なんだ?」


一つ遅れてやってきたローも、その上に寝そべる物体があの獣ではないことを瞬時に悟っていた。そしてそれとベポとを交互に見やる。

…あ、もう終わりかもしれない。とベポは身の危険を察知した。


「…どう思う?船長――」


ペンギンの元へローは何も言わずに足を進めた。ローの目に映ったそれは、ペンギンが感じたものと同じだった。
…まさか。いや、そんなことあるか。そう思いつつ、ローはかけられたドレープの足元を一つ小さくめくった。


「……」


その白い足首に見える、その細さには似合わない程の大きな傷。それは、紛れもなく自分が治療した箇所の傷だった。白銀の虎の出血多量の原因の大元がそこだったことも鮮明に覚えている。
同じ個所に、同じ傷痕。その輝かしい銀髪。その風貌。


「…能力者か?」


ゾオン系なら納得がいく話だった。人の姿になったり動物の姿になったりできる悪魔の実の一種で、モデルが虎なのだろう。それならば珍種であることにも納得はできる。

ローはその顔を覗き込んだ。あどけないその寝顔は可愛らしく、その銀髪は打って変わって美しい。
…不覚にも、見惚れてしまうほどに。


「キャプテン、俺…」


ローの隣に並んだベポが身の潔白を証明しようとしたその時。


「「!」」


その少女の目が突然開かれた。大きな黒い瞳に、まるで射抜かれたように二人は言葉を失う。先に目があったのは真正面にいるロー。ついでベポにその視点があう。
…しばしの沈黙。これが獣界の頂点に立つものの眼力か。とベポは少々緊張してしまっていた。

少女は黙ったまま、ベポをまじまじと見つめたままその体を起こした。それに気づいたクルーたちにも緊張が走る。


「…――?!」


…しかしその緊張を一蹴したのは、その少女の一言だった。


「ぱぱ!」

「「…ッパパァ!?」」





隠し子発覚。


「ベポ、お前いつの間に…」

「っちがーーーーう!!」



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