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「ぎゃああああ――!!」
今日も響くクマの悲痛な叫び声。それを聞きながらシャチは、黙々と甲板で洗濯をしていた。
「あーーーめんどくせぇ!」
くそ。何で俺がこんなハメに。全ては今日の運勢のせいだ。十数人でジャンケンしたにもかかわらずまさかの一発負け。もしや奴らはグルだったのではないかと疑うほとだ。…しかしブツブツ文句を垂れながらそれでも一生懸命洗濯する自分、プライスレス。
いつもはベポが手伝ってくれるのだが、今ベポは子守の真っ最中である。何なら子守を変わってやろうかと言ったが、ベポはキッパリと断ってきた。何だかんだで子守を楽しんでいるらしい。あんな叫び声をあげてるくせにだ。
アイツは根っからのMだなと思いつつ、シャチはどっさりとツナギの積まれた底の見えない桶を眺め一つ溜息をついた。
「シャチ!!」
そこへ噂をすればなんとやらで、叫び声をあげながらベポが頭の上にノノを乗せて甲板に出てきた。
「…今度は何されたんだ?」
「耳を引き千切られそうになった」
「おー…激しいねぇ」
苦笑いをベポに送ってやると、ノノが自分の手元を凝視しているのに気付く。
「シャツ、何?」
「だからシャチだっつの。…洗濯だ」
「せんたく?」
「そう。キレイにしてるんだ」
「! キレイする!」
きっと意味はわかってないんだろうけれど、シャチの手元が泡泡になっているのに楽しそうな感じがしたのだろう。ノノはシャチの隣に並んで見よう見まねで服をゴシゴシし始めた。
ノノが手伝い始めたもんで有無を言わさずベポも手伝うハメになり、クマと子供とサングラスという異様な組み合わせで洗濯する事となった。
*
「――お、ノノ。えらいじゃねェか」
そこへ珍しくローが甲板へ現れた。きっとベポの雄叫びが聞こえなくなった事を不振に思って、様子を見にきたのだろう。
さっきから同じ箇所ばかり洗い、凄い勢いで泡を飛ばしまくるノノにいろいろツッコミたいところはあるが、とりあえず可愛いのであえてそのままにしておく。
「シャツ!キレイなた!」
「だから俺はシャチ!シャツは今お前が洗ってるモンだ!」
「?」
「これがシャツ!」
そうしてシャチがノノの持っている白のTシャツを指差してやれば、ノノはそれとシャチとを交互に見始めた。そして何かを閃いたようにパァッとその顔を明るく綻ばせる。
「やっとわかったか?」
「シャツ!あらう!」
そうして立ち上がったノノは何故かシャチのトレードマークのキャスケットをとって自身の頭に乗せた。みながそれをポカンとして見やる中、一人ノノは楽しそうにその手に泡を大量にすくい取った。
…いや、まさか。嘘だろ。そうシャチが思った時にはすでに遅し。シャチの頭に、大量の泡が乗っかったのであった。
「ぎゃあああああ――!!!」
洗濯日和。
「俺とそれは別モンだろーが!」
「はっはっはっは!」