a tale 9



「いいか?今日からお前の名前はノノだ」

「なまえ?」

「そうだ。ノノ」

「ノノ?」

「そう、ノノ」

「…ノノ!」


何度かその名を呼んでやればそれが自分の呼称だとわかったのか、しかし自分でそれを連呼する様を見るとわかってないのかは紙一重として、船長が森で拾った不思議な少女をクルーとして迎え入れたハートの海賊団一味。

とりあえず服は余っていた一番小さいサイズのツナギを着せてやった。しかしそれもかなり大きく裾と袖を何度か折る形となったが、ダボダボのツナギを着た様はなんともいえない可愛らしいさに仕上がり、一同大絶賛となったのでよしとする。


「ノノ!ノノ!」


…そうしてとりあえず、皆の名前を覚えさせる事から始まった。


「俺はトラファルガー・ローだ」

「…と、トぁふぁ?」

「トラファルガー・ロー」


いや最初から船長の名前は難度が高すぎるだろ。と誰しも思ったが、この船の絶対的存在の名を覚えるのがまず先である事に誰も文句は言えなかった。


「っとら!」


何度かローの名前を聞いたノノは、最初の言葉がいつか聞いた「トラ」である事を思い出し、それならばわかるぞと自慢げにそこだけを連呼し始める。


「…まぁ、悪くねェな」


可愛いから許す。とあの非道極まりない船長がそれで納得してしまった。この世界に船長を「トラ」と呼ぶ事が出来る者など彼女しかいないだろう。


「俺はペンギン」

「ぺむぎん?」

「…ペンギン」

「ぺむぎん!!」


最後の「ん」はしっかり発音出来ているのにどうして真ん中の「ん」は言えないんだろうか。けれども何度訂正したってキリがなさそうだし、とりあえず可愛いのでよしとするか。とペンギンもすぐに折れてしまった。


「ボクはベポだよ!」

「めぽ?」

「ベポ!」

「めぽ!!」

「違う!ベ!」

「べ?」

「ポ!」

「ぽ!」

「よし、そう!ベポ!!」

「めぽ!」

「……もぅメポでいいです」


打たれ弱いベポはそこで諦めてしまった。たった二文字でこの有様。それから彼は周りのクルーからもメポメポ呼ばれる始末。


「次は俺だ!俺はシャチ!」

「しゃつ?」

「違う!シャーチ!」

「シャツ!」

「シャ!」

「しゃ!」

「チ!チだ!」

「ち?」

「そう!シャチ!」

「サチ!」

「っだぁ!シャはどうしたシャは!」

「?」

「いいか?"サチ"じゃない。"シャチ"だ」

「…しゃ、」

「シャ?」

「!」


ニッコリ笑ったノノ。ようやく全てを理解したのだと、シャチも満面の笑みでそれを迎え入れたのだが。


「シャツ!!」





幸先不安。


「戻ったぁ!!」

「…もぅ諦めろ、シャチ」




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