「めぽ!」
「あ、おかえりノノ!」
洗濯と泡掃除を終えたベポは、昼寝をしようと甲板に横になっていた。
こんないい天気の日には日光浴が一番。クルー達の中でも甲板で寝ようなんざ考える者はベポしかいなかった。人間は外で雑魚寝は嫌いらしい。なので甲板の隅っこは、ベポの特等席となっていた。
「めぽ、…ねむる?」
眠そうな目の前のクマを見てノノは大人しくそう言った。彼女も時と場合をわきまえる事は出来るらしい。そこんとこ賢い。
「…ノノもお昼寝する?」
ベポがそう問えば満面の笑みで頷くノノ。そしてノノは遠慮なくベポの腹の上に乗っかった。やはりそこは人間。硬い甲板で寝るのは嫌らしい。まぁ大して重くもないし、自分に懐いている故だと思ったら悪い気はしなかったのでよしとする。
「髪、キレイになったね!」
サラサラと風に靡くノノの銀髪は、シャンプーという科学の力によってより一層輝きを増していて、ベポは思わずそれに触れた。
フワリと漂うノノの香り。その後ろに見えるは、快晴の青に良く映える洗濯したツナギの白。そしてその洗剤の香りも辺りに漂って。
「…――」
…ああ、なんて平和なんだろう。
そう思いつつ、ベポはそっとその瞳を閉じた。
*
自室で読書をしていたローは、ノノの姿が見えない事と騒がしさがない事を怪訝に思ってその人物を探し回っていた。
そうして甲板に出たローの目に映った二つの物体。いつもと同じ場所で眠るベポの上に、いつもはなかった白い小さな塊があった。瞬時にノノだとわかって、そのなんともいえない光景に自然と頬が緩むのを感じた。
「…寝てんのか」
近づいても起きない二人。ノノはまだわかるがベポに至っては警戒心を解きすぎではないだろか。今奇襲を受けても文句は言えない。
…まったく平和ボケしてやがる。ローはため息混じりの呆れた顔を鼻提灯を作りながら爆睡するベポに向け、次にその上で幸せそうに眠るノノに目を向けた。
「……、」
スヤスヤと寝息を立てる姿はなんともいえず可愛らしく、ローはより一層輝きを増したその銀髪に触れた。
触り心地は抜群で、あの時―虎を抱えた時の感触を思い出す。
「…不思議なもんだな」
ローの心は穏やかだった。…俺も平和ボケしてるな。と自身にも呆れ混じりの溜息を付き、ローもベポにもたれ掛かって持っていた本の続きを読み始めた。
*
「――おい、見ろよペンギン」
シャチの楽しそうな声に何事かとそれを見やれば、甲板で眠るベポ、その上で眠るノノ、ベポにもたれ掛かって読書をする船長の姿が目に入った。
…なんだあの微笑ましい光景は。干されたツナギの白が空の青に揺れ、休日にピクニックに来た一家のような平和図が完成されていた。出来るなら写真に収めたい貴重な光景である。
「……俺達って、海賊だよな?」
確かめるように問うシャチに、ペンギンはふっと鼻で一つ笑った。
「…奇遇だな。俺も今そう思っていた」
たまにはこういうのもいいかもしれない。他のクルー達に甲板出入り禁止を命じ、二人は穏やかな時の流れに身を任せることにした。
平和なひととき。
「…俺も混ざりてえ」
「右に同じ」