a tale 3


***

「…寝るか」

「はい!」


いつものようにそう一声かけると、ノノは嬉しそうにローの元へと駆け寄ってきた。
よしよしと頭を一撫でして、一緒に布団に潜り込む。

ノノは普段、ローの部屋で過ごしていた。そもそもローはノノを他のクルーの部屋においておく気など最初から持ち合わせていないのだが。
ノノは自分が気に入って拾ってきた子。遊び相手はベポやシャチ―お世話はペンギンに任せているが、それとこれとは別モノだ。俺の物は俺の物。クルーの物も俺の物。これが海賊の長。これぞ海賊のジャイ◯ンである。


「とらっ!」


布団に全身すっぽりと埋まってから、ノノはひょっこり顔を出した。


「おやすみなさい!」


寝る前に「おやすみ」という挨拶をすることは刷り込ませ済。


「あァ、おやすみ」


スリスリと擦り寄ってくる彼女の柔らかい銀髪を撫でると、その心地よさにノノはすぐに眠りに落ちてしまった。

その後でローは白く陶器のような頬に触れた。はたからみれば恋人同士の行動のようで、しかし相手は子供で虎で。…なんだかおかしくて、ローは少し自嘲気味に笑みを浮かべた。
そしてそっと、ノノの背中に腕を回す。柔らかく、温かい熱を包み込む。


「…――」


いつからだっただろう。…そう、それは、ノノと一緒に寝出してから――

寝つきの悪いローは夜中でもすぐに目が覚めてしまい、いつもろくな睡眠時間を確保していなかった。警戒心が人一倍強いということもあるのだろう。眠れないから本を読み出したり酒を飲み出したりと、不健康な生活を送ってきた。目の下の隈がその証拠。医者の不養生とはまさにこのことである。

…しかし、初めてノノと一緒に寝た日。目を覚ますとそこに広がっていたのは暗闇ではなく、明るく眩しい光景だった。自分で自分を疑ったが、この時初めてローは爆睡するということを知ったのである。
その時はたまたまだと思っていたが、それが幾日か続いたもんだから疑いようがなかった。夜中にふと目覚める事がめっきりなくなった。ノノが隣にいることに安心しきっている自分がそこにいたのだ。
…それはまるで、言うなればいい安眠抱き枕をゲットしたような。


「…ノノ、」


ローはそっと、その銀色に一つ唇を落とした。


「…お前は、俺のモノだからな」


この抱き枕は誰にも渡さない。この心地よさを知るのは、自分だけでいい。



…これが歪んだ独占欲の始まりだとは、ロー自身もまだ気づいてはいなかった。





君なしでは眠れない。


「とら…んむ」←寝言

「……、」




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