a tale 5-1



「……」


…ここはどこ。わたしはだれ。まさにそんな状態のノノは、追っていた黒猫を見失ってからその状況に気づいていた(遅)。
メポがいない。シャツもいない。ましてやトラも、ペムギンもいない。みんなどこに行ったのだろう。…いや、自分が自らどこかへ行ってしまったのだが、そんな事今の彼女が微塵も思うはずがなくて。

しかしこの時初めて、ノノは焦るという感情を知ったのだった。


「…メポ、シャツ――」


視界に白い物体たちが入らないかと辺りを懸命にキョロキョロと見渡すノノ。


「…?」


すると、少し前からこちらに向かって歩いてくる集団を捉えた。その集団の真ん中にそびえるそれは、トラやペムギンと違ってかなりいかつい。当たり前だが、全く知らない人たちだった。
…そういやペムギンママが知らないオジサンには話しかけるな。ついて行くなと言っていたのを思い出す。


「……、」


…けれどもそのいかつい真ん中の人のてっぺんを見た時。ノノはそれを、どこかで見たことあるような気がした。


「…!」


そうしてどんどん近づいてくるそれは、鮮明にノノの目に飛び込んできて。…あぁ、あれは。この前食べたそれと一緒。色は違うがてっぺんはそっくりだ。自分はそれを知っている。イコールあの人は知り合いだ。と安易な方程式を作り上げたノノは、自らその集団に飛び込んでいった。


「パイナポー!!」

「っあァン!?」


いきなり何だ。何だこのガキは。妙な発言をしたかと思ったらニコニコと自分を見つめて目の前まで走ってきたそれ。


「パイナポー!!」


また同じ語を繰り返して自分の顔―いや、いささか上の方を指差している。パイナポーってなんだよ、なんだよパイナポーって…と思っていたら、自分の隣の仮面の男がクスクスと笑っているのに気づいた。


「パイナップル…くくっ」


パイナポー=パイナップル。あぁ、なるほどな。パイナップルか。よくわかったな、そうかそうか。自分の頭を指差してパイナップルか。あぁ、なるほどな。


「って誰がパイナップルだ!!!!」


勢いよくノリツッコミをかましたパイナップルな頭の男―ユースタス・キッドは、その怒りを隣の仮面の男―キラーへとぶつけた。


「俺が言ったんじゃない…その子が、」


キラーがそう言ってその子を指差そうとしたが、すでにそこにその子の姿はなく。


「っ!?」


キッドの肩に乗っていた。


「テメェくそガキ…!!」

「パイナポー!切るっ!」

「あァっ!?」


パイナップルは丸かじりしてはいけない。パイナップルは切って食べる物。そう学習したことは間違ってないのだが、とんだ間違いを犯している事にノノはまだ気づいていない。


「っキッドさん!コイツの着てるツナギ!!」

「トラファルガーの一味のもんだ!」

「なんだとっ!?」


そう言われても自分の頭の上にいる為、キッドにはそれが見えない。確かめようと捕まえようとしてもうまくかわされ、てんやわんやするキッド。…なんだか面白いその光景に、周りの物がキッドに手を差し伸べることはなかった。


「お前…ハートの海賊団の一味か」

「?」

「…お前のとこの船長はトラファルガーだろう?」

「??」


キラーがいくつか質問しても、キッドの上の彼女は首を傾げ続けるだけ。


「……」


このまま質問を続ければ首がいけない方向に曲がりそうだったので、キラーは質問する事をやめた。


「…言葉が理解できないようだな」


見た目からして10歳前後、言葉なら十分理解できる年齢のハズである。けれども目の前の少女はそれに乏しい事をキラーは瞬時に悟っていた。
加えてこのキッドにパイナポーなどと言って飛びかかってくるところを見ると、おそらく海賊世界の事も理解していないのであろう。


「…――」


しかし、ハートの海賊団の一味であることは確実。そのツナギにはしっかりハートの海賊団のマークが入っているし、被っているそのモコモコはその一味の船長のトレードマークで。


「このガキ…っ」

「パイナポー!切る切る!」

「パイナポーじゃねえよ!!殺されてえのかテメェは!!」

「食べるっ?」

「っ食うな!そして聞くな!」

「パイナポー!」

「…あァ!!せっかくセットしたのに崩すな!!」

「せっと?」

「その髪型つくるのにどんだけかかってると思ってんだ!!」


…とりあえず、面白いのでそのままにしておこう。なんだかんだで楽しそうにしている自分の船長を横目に、キラーは一つ溜息を吐いた。





とんだ奇襲攻撃。


「せっとせっと!」

「やめろーーーー!!」



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