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今日の戦闘訓練は敵チームとヒーローチームに分かれての市街地演習だった。爆豪は切島とペアで敵チーム、対するヒーローチームはミョウジと飯田だった。
「いやー危なかったな、やっぱ飯田のスピードはすげぇわ! 爆豪が先回りしてた時は感動したぜ、流石だな!!」
「あたりめーだろ俺がモブに負けるわけねぇ」
「モブじゃなくて飯田な!」
更衣室から出ると、ちょうどミョウジも女子更衣室から出てきたところだった。
「おーミョウジお疲れ! 演習とはいえ怪我させちまって悪ィな、大丈夫か?」
「全然平気。本気じゃなきゃつまんないし」
「お前もなかなか漢気あるよな、好きだぜそういうの!」
「切島はいつも熱くていいね!」
「おう!」
爆豪は切島を置いてさっさと教室に帰りたかったが、ミョウジの足に巻かれた包帯が目に入ってなんとなくそうしなかった。
「すぐ治るんかそれ」
自分の口から溢れた言葉が信じられなくて、イライラした。どうでもいいんだよ、そんなこと。
「あ、これ?リカバリーガールのおかげでもう全然
痛くないの。傷跡だけ消えるのに数日かかるってさ」
「そうかよ」
「心配してくれたの?ありがとう」
「してねーよ調子乗んなクソが!!」
ヘラヘラ笑ってんじゃねーよ。なんだよその顔。なんなんだよ。なんで俺はこんな焦ってんだよ。いや焦ってんのか?違う気がする。なんだこれ。とにかく喋らなきゃよかった。無性にその場にいるのが嫌になって、足を動かした。
*
「爆豪まてよー」
「ついてくんなクソ髪!!」
「どうしたんだ急に」
「なんもねーわ死ね!」
爆豪がミョウジに話しかけた時は驚いた。他人に興味がない爆豪が他人の怪我の具合を気にするのも珍しいけど、そもそも"普通に"話しかけること自体珍しい。明日雹が降るかもしれない。
「心配してくれたの?」って言われてキレたから、多分図星だったんだと思う。ありがとうって言われたんだから、素直に頷けばいいのに。とはいえ、切島は素直な爆豪を想像できなくて苦笑した。
「難しい奴だな、お前」
「ア゛? うっせーわ!! クソ髪てめぇ黙らねーと殺す」
後ろの方で、いつのまにか集団になっていた女子たちの賑やかな声が聞こえた。
「今日タピオカ買いにいかない? 駅前の」
「あ! 新フレーバー出たよね!」
「そーなの?」
「気になるけど私はミルクティー一択だなー」
「抹茶でしょ!」
「私パッションフルーツティー」
「ヤオモモは?」
「私実は行ったことなくて…皆さんのお勧めをいただこうと思いますわ」
「お嬢様なんだねえ」
「やっぱ最初はミルクティーが無難でしょ!」
「茶葉は選べますの?」
「どうだったかなー」
「ねーじゃあホームルーム終わったらすぐ行こ!」
「さんせー!」
「超楽しみー」
うちのクラスの女子は仲が良い。人数が少ないからか、結束も強い。それに比べて男子はみんなマイペースだし、放課後みんなでタピオカとか絶対無い。
俺は大人数で盛り上がるの好きだから正直羨ましかったりするんだけど、女子の群れに一人混ざるのは気が引ける。
「チッうるせえ」
「俺らもタピオカいく?」
「は? 行くわけねーだろ頭沸いてんのか」
「だよなー」
マイペースな男子達の中でも特に、爆豪はそういう誘いに乗らない。
爆豪は自分が興味ないことは全て無駄だと言う。たしかにヒーローを目指す上で友達と遊ぶ時間は無駄かもしれないけど、そういうのは今しかできないぜきっと。切島はそんなことを考えながら、少し寂しい気持ちになった。
「ミョウジさん、タオル落ちましたわ」
「えっうそ、ありがと〜」
「ナマエちゃん意外と抜けてるよねぇ」
なんとなく後ろを振り向くと、ミョウジが八百万に渡されたタオルを畳んでいた。
ミョウジはあんまり自分から話すタイプじゃないけど、いつも周りを気にかけていて優しくて、なんていうか大人な感じだ。しかも爆豪に怒鳴られても全く気にする様子が無い。でもあんな風に抜けてるとこもあるから、みんなミョウジをかまいたがるんだよなぁ。
爆豪も後ろを向いていたようだけど、俺と目が合うとすぐに顔を逸らした。
「どうした? 爆豪」
「は? お前の頭の方がどうしたよクソ髪」
「お前な〜」
切島は正直、爆豪の不可解な行動の意味になんとなく気付いていた。向けていた視線の先が誰なのかも。けれども、この天邪鬼でプライドが高すぎる男のことだ。何も言わずに見守るのが吉だと思って、切島は口を噤んだ。
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