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あれからどれくらい泣いていたかわからない。
やっと落ち着いて、水を一口二口飲んだ頃、あまね様が話し出した。
「これは私の直感で、本当になんとなくだったのだけど……貴方がそういう事情だというのはわかっていたわ。"隠"が運んできた、車にあった貴方の物であろう荷物も大層な物ばかりだったし、貴方の身なりや……それから言葉遣いで」
なんだ最初からばれていたのかと思う気持ちと、自分の出自を知られた恥ずかしさで居た堪れない気持ちになった。
廓で使っていた大体の物は可愛がっていた禿や後輩の女郎に譲ったが、お気に入りの着物や装身具、一等高かった調度品や楽器なんかは嫁入り道具として持ってきていた。車に積めれるだけ積み込んだ。
それに、間違っても道中の時のような華美な装いはしておらず質素にまとめたつもりだったが、見る人が見ればわかってしまうのだろう。
「貶しめているんじゃないわ、誓って。貴方はとっても魅力的よ。同じ女の私が見惚れるくらいに」
項垂れる私を、あまね様は諭した。
「……言葉遣いは忌々しい癖でありんす。生まれてこの方、廓言葉は骨の髄まで叩き込まれていんすゆえ……やめとうてもやめれぬもの。ほんに、お恥ずかしい……穴があったら入りたい……」
「あまり自分を責めるのはよしなさい。もし貴方が言葉遣いを気にしているのであれば、私が矯正します。廓言葉も趣があって、私はいいと思いますけどね」
「あまね様……」
「それから、行く所が無いのなら、ここで女中として働くのはどう?もちろん貴方が良ければだけど」
あまね様の怒涛のお心遣いに、私の頭はついて行かなかった。
──ここで働く? 私が? そんなことが許されるのだろうか?
「突然明日から、なんて言いません。環境に少しずつ慣れながら、ゆっくり初めていけばいいわ」
私が困惑している間に、あまね様はスラスラと話を続けた。
「ちなみにここで住み込みになるから、貴方の部屋は用意するから好きに使ってちょうだい。それから当然のことだけど御給金は払うし、お休みも自由に取っていいわ。あと……」
「待ってくださいあまね様! どうしてわっちなんかにそんな、」
「ナマエさん」
さも決定事項のように説明されるお話に頭が追いつかず、思わず口を挟んだ。しかしあまね様は穏やかに微笑んで、私の目を逸らさずに言ってのけるのだった。
「どうしてかわからないのだけど、私はあなたに幸せになってほしいのよ」
2020/5/4
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