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 俺はまた目隠しと耳栓をされたのだが、今度はなんかすっごいゴツい人の背中におぶられた。隠にもこんな人いるのかぁなんて思いながら、俺は気付いたら気持ちよく夢の中にいた。だって凄く暖かかったんだもん。

「起きろォ」

 ぺちぺちと頬を叩かれ、俺は目を覚ました。

「ん……ん? あぁ、風柱様……此処どこですか?」

 俺は寝ぼけながらきょろきょろと辺りを見渡した。

「風屋敷だァ」

 風柱が言った。

「風屋敷……風屋敷? じゃあ風柱様の家ですか?」
「あァそうだ。今日からお前の家でもある」
「まじすか」

 俺はだんだん覚醒してきた頭で、そういえば衣食住の面倒を見てくれるって言ってたなと思い出した。
 今いる場所は玄関のようだが、ここだけでめちゃくちゃ広い。蝶屋敷もあれだけ大きかったし、風屋敷もさぞ立派なつくりになっているんだろうなと思った。
 蝶屋敷は消毒液と花の香りがしていたが、風屋敷は檜の香りに満ちていた。

 風柱に屋敷の中を案内された。もう本当に広くて、部屋の数も多かった。迷子になる自信しかない。
 屋敷には毎日、隠が何人か決まった時間に出入りして、掃除や洗濯などをしてくれるらしい。今はちょうど夕餉の準備をしているようで、台所を通った時に風柱が「居間に茶頼む」とひと声かけていた。
 居間に腰を落ち着かせると、すぐに隠の一人がお茶を運んで来た。ご丁寧に砂糖菓子も添えてあった。

「ハッそういえば」

 俺は突然、とんでもないことを思い出した。

「どうしたァ」

 風柱はお茶を啜りながら応えた。

 ──聞いていいだろうか? いや、ダメな気がする……いや、でも知りたい!

 俺は恐る恐る、風柱に質問した。あの、禁断の質問を。

「風柱様はどうやってここに来たんですか?」

 風柱は一瞬ぽかんとして、それから「は?」と眉を顰めた。
 そんな風柱の圧に少しびびりながら、俺は風柱も目隠し耳栓をされ隠に背負われたのかと問うた。すると、風柱はハァと溜め息を吐いてから言った。

「なんで俺が俺の家に帰るのにそんなもんしないといけねェ」
「えっ」
「これはお前が継子だから教えてやるが……柱だけは本部の場所を知ってる。だから行き来するのにわざわざ隠におぶられる必要はねェってことだ」
「なるほど……」

 なんだ、この人自分の足で移動したのか……。

「てめェ何残念そうにしてんだ? コラ」

 俺の考えていたことがばれたのか、風柱は俺の頬を潰すように片手で顔を鷲掴んできた。

「べちゅに、かじぇ柱が目隠しされて隠におぶられてたら面白いなとか思ってましぇんよお」
「あア?」

 風柱は顔に青筋を立てギチギチと俺を掴む手に力を入れてきた。

「痛い痛い痛い! すみましぇんでしたあ!」

 風柱はチッと舌打ちをしてから、手を離してくれた。俺は頬を摩りながら風柱を見上げる。

「てめェは俺がおぶって運んで来てやったァ」

 風柱が言った。

「えっ! ああだから……なんかゴツいなぁと思いました。でも凄く暖かくて、なんか安心して寝ちゃったんですよね」

 俺がそう言うと、風柱は黙って俺を見た。
 え、何その顔、どういう気持ちの顔それ?

「あの、連れてきてくれてありがとうございました」
「別にィ……お前、もっと食ってデカくなれよォ。軽すぎだ」
 風柱は言いながら、ふいっと顔を背けた。
「いっぱい食ったら風柱様みたいにでかくなれますか?」
「多分なァ。それからお前、俺のことは師範と呼べェ」
「わかりました師範」
「なんか阿保っぽいよなァお前」

 師範はフッと笑った。
 なんだか馬鹿にされてる気がしたが、初めて師範が歯を見せて笑うのを見たので、まぁいいかと思った。

「今日からよろしくお願いします師範!」

 俺は元気よく言ってみた。挨拶は大事なことだ。

「あァ……血反吐吐きながら泣き叫んでも逃がさねェから覚悟しなァ」

 師範は頬杖をつきながら、にたりと不気味に口角を上げて言った。
 え、こっわ。何それ。継子って血反吐吐いて泣き叫ぶほど辛いの? どういうこと? 教えてだれか。

「オイ、返事はどうしたァ?」

 師範がまた俺の頬を潰すようにがしっと顔を掴んで来た。

「ひゃい師範、一生ついていきましゅ」

 俺が返事をすると、師範は満足そうな顔をして手を離した。




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