最強豪傑の禁断魔法 4


♡ C l a p ♡


「そんで、コイツが川合アキラ!瀬奈とはクラスメイトだったな」
「どうも」
「えっと、立花会長と川合先輩──」
「アキラでいい」
「じゃあ、アキラ先輩」

自己紹介を終えたあと千草にアキラを紹介すると、互いに挨拶を済ませてから海斗は本題に入ることにした。
海斗からしてみれば夢校の生徒が暗くなったこの時間にこのような場所で不良たちと喧嘩まがいのことをしていたのが気になりそれを質問すると、正悟は気まずいながらも答えることにして大人しく質問に答えていく。

「それで、だ。お前らこんなところで何してたんだ?」
「あの……帰宅中にあの人たちに絡まれてしまって──」
「それでこんなところまで逃げてきたのか?」
「ええ、まぁ……」

不良に襲われそうになったことは触れずにただ絡まれたと表現したが正悟の様子を見てそれとなくアキラは察した。
正悟の状態を見れば明白ではあったが、海斗はその状態を気にする訳でもなく、アキラは何かを追求するような性格でもないため、深く問いかけたりはしない。

「あの、会長はどうしてここに……?」
「俺か?俺はさっきの奴らが誰かを探してそうだったから様子を見に来ただけだったんだが──」
「瀬奈が強そうだったから喧嘩を吹っかけた……と」
「さっすがアキラ!よく分かるな……っ痛ぇ!」
「誰彼構わず喧嘩を売るなといつも言ってるだろ」
「だからって殴ることないだろ!」
「フフッ……」

二人の掛け合いに正悟は少し面白くなってしまい、小声を出してクスクスと笑ってしまう。
校内でも最強と言われている会長に向かって対等に交流出来る人間を初めて見たので、その二人のやり取りを見て微笑ましくなってしまった。
とはいえ静かな空間で突然笑い出す人間が居たら、他の三人の注目を浴びてしまっても仕方のないこととも言える。

「アキラが殴るから笑われただろ!」
「お前が悪い」
「すみません。アキラが会長相手に動じないし、二人の会話が微笑ましくて、つい……」
「海斗が笑われる分には構わない 」
「いや、お前も一緒に笑われてるっての!」

しばらくは和やかな空気が続き、四人はそのままの雰囲気で工場地区から出ることにした。
しばらくは四人で歩き、分かれ道まで来ると互いに向かう方向が違うため、そこで解散しようという話になり自然と別れの挨拶になるところなのだが、挨拶の最後に海斗が思わぬ要求をしてくるため、正悟としては困る羽目になる。

「じゃあオレらあっちなんで、失礼します」
「二人とも気を付けてな」
「うん、ありがとう。アキラたちも気を付けてね」
「そうだ、瀬奈!今度正式に俺の挑戦受けてくれよな!」
「え?あぁ……いや、それは──」
「じゃ、明日また学校でな〜」
「あの、ちょっと……!」
「行っちゃったな、先輩たち」

海斗は意気揚々と帰路に就くと、続く形で申し訳なさそうにアキラが手を振り別れながら海斗の後ろを付いて行く。
数分もしないうちに正悟たちから見えないところに離れていくので、それを見送る形になり正悟としては内心焦ることになる。
学校で一番相手にしたら目立つ人間と接点を持ってしまい、どうしようかと考えていると千草が心配そうに声をかけてきて、正悟としては我に返り平常心を保つことで、今の気持ちを強制的に抑え込むしかなかった。

「先輩、大丈夫……?」
「うん……多分」
「立花会長の挑戦、受けるつもりじゃないよな?」
「まさか……受けないよ。会長とんでもなく強いし」
「先輩だって強いじゃん」
「俺とは戦い方も違うから……何より学校では平穏に生きたい」
「ハハッ、先輩らしいな」
「平穏が一番いいんだよ」

二人は他愛もない会話をしつつも正悟の家に着くまで少しだけ急ぎ足で帰宅すると、次第にマンションのエントランスが見えてくる。
名残惜しい気持ちはあるが、明日以降も時間はあるので二人は軽い挨拶を交わしてから正悟は千草を見送ることにした。

「今日は色々とありがとう」
「オレの方こそありがとな、先輩と出かけられて楽しかった」
「千草、その……えっと──」
「また、オレと一緒に出かけてくれる?」
「うん……!」

正悟が口ごもっていたので何事かと思いはしたが、様子を窺っていると正悟の言わんとすることを察することが出来たので、千草の方から誘いの言葉を発してみたところ、正悟は嬉しそうに微笑むので、千草もまた微笑み返すことで気持ちよく今日という日が終われそうだと二人は思う。
色々とトラブルや出会いもあったが、それでも千草は正悟と一緒に居て、楽しさや嬉しさのようなものを共有したいと思った一日であった。
正悟もまた今日一日千草と居られたことで、嬉しさや楽しさに繋がったことが分かり充足感に満ちた日であると自覚している。

「帰り道、気を付けて……」
「うん。先輩も、ゆっくり休んで」

千草が角を曲がるところまで見送ったところで正悟も自室を目指していつも通り階段を登って行くことにする。
その間に今日一日を振り返ってみても楽しかったことの方が多く、海斗との出会いは意外ではあったものの概ね満足いく日なのは間違いない。
無事に玄関の前まで着いたので鍵を開けて中に入ると、再度玄関のドアに鍵をかけて寝る支度を整えるためにシャワーを浴びようと脱衣所まで向かうことにした。
そこで思い出したかのように千草に服を借りっぱなしであったことと、服を乱暴に脱がされかけたためにボタン等の装飾が取れかかっている事に気が付いた。
正悟は服を脱いでボタンを付け直すくらいの時間はあるだろうと思い、リビングで作業をしているとスマホが鳴り合間を見て誰からの連絡か確認する。
そこには最近よく見るようになった名前が表示されていた。

──無事に着いたよ。また明日、学校で会えたら嬉しいな。

千草からの連絡に嬉しくなりながらも返事をしつつ作業を続けて、全てが終わる頃には寝なければならない時間になっていた。
正悟は急いでシャワーを浴びてから寝る支度を整えて明日の支度を整えると、ベッドへと潜り込みしばらくすれば睡魔に襲われそのまま眠りに落ちていく。
次の日になりいつも通りの時間に起床しやるべきことをやり終えてから、歩いて学校へ向かうと校門付近に少しだけ人だかりが出来ていた。
何事かと思いつつも関わりたくないと思っていた正悟は、人混みに隠れるようにして教室まで行きたいと考えていたのだが、その考えは少し甘かったようで正悟を探していたその相手は大声で正悟の名前を呼んでくる。

「おーい!瀬奈!」
「立花会長……」

大声で呼ばれたせいで、その場に居る生徒たちから注目を浴びて逃げるに逃げられなくなり、正悟は仕方なく海斗の呼び掛けに応えることにすると、海斗が話している様子が珍しいのか、他の生徒たちが聞き耳を立てているようであった。
それでも海斗は気にせずに用件を口にすると、周りの生徒はその内容にざわざわと小声で騒ぎ立てる。

「瀬奈!放課後、俺と勝負な!」
「はい?」
「場所は……体育館でいいか!」
「あの、会長?」
「ってことで、放課後楽しみにしてるからな!」
「ちょっと、待っ──」
「じゃあな〜」

海斗がここまで人の話を聞かない人間だとは思ってもいなかったが、それでも一方的に挑戦されてしまい、それを聞いている生徒がたくさん居て、この騒動を聞かれてしまった以上やるしかないのか──そんな風に思ってはいたのだが、いざ周りの視線を感じたり声を聞いていると、やはり夢校最強の名は伊達じゃないようで、正悟のことを噂する人間や一目ちゃんと見ようと視線を送ってくる人間に耐えきれず正悟は教室まで一目散に走り抜けることにした。

「やりたくないなぁ……」

正悟は小声でそう呟きながら教室に入ると、先に来ていたアキラが正悟を見て様子が変だったのに気付いたのか、心配するように声をかけてくれる。
その優しさに心が少し救われた気もするが、海斗に挑まれてしまったのもまた事実なので、その件を素直に告げることにした。

「さっき会長に挑戦状叩きつけられちゃって…… 」
「あの馬鹿……!瀬奈、大丈夫か?」
「大丈夫……じゃないかも」
「アイツ、一度言ったことは曲げないから……」
「そんな気はする」
「どこでやるんだ?」
「放課後に体育館だって……」
「瀬奈の都合も考えずにアイツ……悪いな、瀬奈」
「アキラのせいじゃないから……大丈夫だよ。何とかする」

そんなことを話していると朝のホームルームが始まり、終われば通常授業になるのだが、放課後のことを気にしながら受ける授業は曖昧になりつつあるもので、正悟は必死に雑念を頭の中から追い出し授業の内容を覚えていくことに集中する。
そして昼休みがやって来たので、いつも通り屋上に向かい弁当箱を持って歩いていくついでに聞き耳を立てると、道中でも放課後の噂をする人間が後を絶たない。
無事に屋上に辿り着いた正悟はやっと一息つけると思い千草を待っていると、いつも通りの千草がやってきて隣に座り込んで話を降ってくる。

「先輩、やっほー」
「千草……おはよ」
「あれ、やっぱり元気なさそう?」
「やっぱりってなんだよ」
「だって朝から噂されっぱなしだったから」
「噂?」
「謎の生徒が会長から挑戦状を叩きつけられてたって朝からみんな凄い噂してた。それって先輩のことだろ?」
「大事になってきた気がする……」
「まぁ、会長絡みだもんな」

二人は屋上での挨拶を終えたあとは昼食を済ませいつも通り二人だけの時間を楽しむ予定であった。
それだけ正悟も千草にとってもこの時間は重要なもので、貴重な時間でもある。
ただ、今日は正悟が吐いた大きな溜め息のせいで、本人の気分は下降気味なのが千草は気になっていた。
このまま授業を受けて放課後になったら、おそらく今のままでは会長どころかその辺の不良にも負けないとは言いきれない。
千草は自分に出来る限りの応援のつもりで声をかけることにしたが、具体的にそれが応援になるのか分からない。
それでも伝えておきたいことはその場で伝えることにしている千草は、思ったことを口にして正悟に元気を出してもらおうとした。

「はぁ……気が重い……」
「挑戦、受けるの?」
「受けるかどうかはともかく、逃げる訳にはいかない……かな」
「そっか。なら、精一杯応援する!」
「千草……」
「先輩が勝てますようにって!」
「お前に応援されたら、やるしかない……な──よし!」

千草に励まされたら尚更逃げる訳にはいかない──そう正悟は考え、意欲を高めるために両手で自分の頬を軽く叩いて気合を入れることにした。
その様子を見て千草も少しだけ安心したのか、放課後は自分も遠くから見ていることを伝えて休憩を終える。
午後の授業を受けて放課後になると正悟はアキラと共に体育館へ向かうことになる。
アキラも事の顛末が気になるのか、海斗に説教でもしに行くのか、体育館まで一緒に来てくれるとのことだったので正悟も少し安心して向かえて、多少なりとも緊張感を和らげることが出来たのだが、それでも体育館には既にそこそこの生徒が居て、観客からの視線によって正悟はその場の空気に一瞬で呑まれてしまい気後れしそうなところではあったが、遠くで見ている千草の姿が確認出来たことで負けずと足を進められた。
放課後の体育館と言えば通常部活で使うのが当たり前ではあるが、会長権限がこの学校では行使するのに有効であるというのは正悟も聞いていた。
しかしここまでの私用で許可が下りるとは思ってもいなかったので、流石に驚きを隠せずにいる。
更に驚いたのは担任である郁磨がその場に居たことで、何故無関係である郁磨がそこに居るのか分からなかったからだ。

「おっ!来たな、瀬奈!」
「気は進まないですけど、ね……」
「ハハッ!本気でやらねぇと──怪我するぞ 」
「……っ!」

海斗は本気でこの試合に挑もうとしている。
それに対して自分は──そう考えると海斗の気迫で足がすくみそうになったが、千草が応援してくれている、負ける訳にはいかない、とそんな風に考え直して気合いを入れ直す。
正悟はもう一度意欲を高め、手荷物と上着を脱いで邪魔にならないところへと置いて郁磨から竹刀を受け取ると、郁磨が居る理由を海斗に聞いてみる。

「何故、小梨先生がいらっしゃるんですか?」
「体育館を借りる許可を取りに行ったら、小梨先生立ち会いの下であれば許可するって言われちまってよ」
「二人とも、やるならば全力でやりなさい」
「もっちろん!」
「瀬奈も異論はないんだな?」
「ありません。会長が本気で来るなら、それに応えるだけです」
「よし、二人とも所定の位置に着け」

郁磨の指示の元、二人は始めるために所定の位置へと着いてから竹刀を構えることになるが、海斗の手に握る物をみたら昨日使っていた木刀は使わないのだなと、正悟は思い試合が始まる前に聞いてみることにした。
試合が終わった後の結果を武器のせいにされたくはないからだ。
とはいったものの海斗がそのような他責をするとは思えない──だからこそ、感情を揺さぶり隙を作るための挑発。
しかし、海斗はそのような軽い挑発に乗る人間でもなく、正悟の問いに対しても真っ直ぐな回答を用意する。

「会長、今日は木刀じゃないんですね」
「お前が竹刀なのにこっちが木刀使ったら卑怯じゃねぇか」
「そうですか。後で木刀じゃなかったから──なんて言い訳しないでくださいね」
「へっ、言うじゃねぇか!そう来なくっちゃな!」

二人の会話が終わると当時に次は郁磨の話が少しだけ始まる。
試合の正式なルールや、勝敗の付け方など、最終確認をするための時間でもあり、郁磨としては最後に忠告のつもりでもあった。
郁磨は身贔屓と言われようが、正悟の実力を信じている。
昔から兄弟子として稽古をつけることもあった──海斗が校内で最強と称されているのも知っているが、それでも揺るぎない信念で正悟の勝ちを信じていた。
だからこそ、全力でやれと二人に指示を出した。
それに、たまには本気の実力というのも出しておくべきだ。
いつかの時に遅れを取らないためにも、正悟にはいい刺激になる。
観客が多いのは少し懸念もあるが、今は考えている場合でもない。

「ルールは簡単だ。どちらかが負けを認めるか、試合続行が不可能と俺が判断した時までだ。ただし相手に怪我を負わせる行為は禁止。その場合、試合は即座に終了だ。いいな!」

正悟と海斗は返事を体育館に響き渡る声量で返し、試合を始める準備を整えると、正悟は千草を最後にもう一度目に焼き付ける。
千草も何もリアクションは取らずにただ正悟一人に視線を送り見続けることで応援していると伝えたかったのだろう。
二人はそれぞれの構えの動作をすると、郁磨がその様子を見た後に試合開始の合図を大きな声で告げた。

「位置に着いたな。では、──始め!」

最初に仕掛けたのはやはり海斗で、正悟はそれを真正面から受け止める。
力比べで負けることはないし、海斗の速さも既に昨日の件で知っている以上、今度こそバランスを崩すこともなく受け止めるられる自信はあった。
それから先の戦法はなるようにしかならないので、正悟は臨機応変に対応していくしかない。
しかし、いつまでも海斗が優勢な訳でもない──正悟が仕掛ける時も必ずやってくる。
それまで正悟は海斗の動き一つ一つを見切るために攻撃をいなしては受け、それを繰り返して必死に海斗の動きを頭の中に叩き込んでいく。
すると、海斗の攻撃を受けている者にしか分からない隙のようなものを正悟は見つける。

「おい、瀬奈!本気でやるって言ったよな!?」
「焦りは禁物でしょう?」
「──っ!」

正悟の一撃を正面から受けようとしたが、海斗は正悟の力に対して一瞬だが押されて距離を取る。
正悟が見つけた海斗の隙──隙というよりも癖があるのかもしれないが、正悟の目から見たらそこが狙い目であり攻守を入れ替える手段でもあった。
一瞬の隙を突いて海斗に向けて竹刀を降ると、海斗はそれを受け流そうとする。
しかし、自身の持つ竹刀が正悟の攻撃に触れた瞬間、直感でその攻撃を避けた──否、避けざるを得ない状況だったのか、急遽後ろに下がることで強撃を避けることに成功したといった感じだ。

「っ……今のは痺れたな」
「会長も本気、出してるんですよね」
「当たり前だろっ!」

二人の攻防が続けば続くほど観客たちの声援も大きなものとなり、初めは会長を応援する声が多かったのだが、試合を見ているうちに正悟を応援する声も増えてきた。
本人たちは戦うのに必死であまり耳に入っていないかもしれないが、気付けば体育館を囲うように生徒たちが居て、大事になりつつあるがそれでも二人は止まらない。
今止まってしまっては、次に本気で戦える日が来るのがいつやって来るか分からない──そんな気持ちで二人は竹刀を交えていた。

「そろそろ、決着をつけないといけませんね」
「負けられない試合になってきたな──」
「俺も負ける訳にはいかないんです」
「だったら……!」
「本気で行かせていただきます……!」

正悟はそう言うと足に力を込めて瞬発力で一気に海斗との距離を詰めると、次こそ海斗もそれを正面から全力で受け止める。
二人の全力を出し切るという意味で、その攻防は熾烈を極めるところまで来た。
ここまでの激しい戦いで竹刀が軋みを上げていて、今にも壊れてしまいそうなところを二人は遠慮することなく力を最大限込めると、文字通り竹刀が二人の間で交差するように折れて砕けていく。
それは勢いよく残骸を地面へと叩きつけ、その音で正悟たちは意識をそちらに向ける。
手に持った竹刀を見れば二人の状況がよく分かることだろう──息を呑み、互いの顔を見合わせたところで観客達の歓声が一気に湧いた。

「ハハッ、竹刀が先にイカれるってマジか」
「少し……無理をさせ過ぎましたね」
「でもよ、瀬奈。いい試合だった──ありがとな!」

正悟の目の前で笑いながら礼を言う海斗の存在を正悟は少しだけ理解出来た気がする。
気持ちのいい人だ──そんな風に考えていると、海斗が手を差し出して来るので、正悟もその手を取り互いに試合終了を告げる握手を交わすと、今まで歓声を上げていた観客たちも拍手をして二人の勇姿を賞賛する。
中には声を張り上げて応援する生徒も居たが、そういったことを含めても、正悟は今回の試合を受けて良かったと心の底から思うことが出来ていた。

「こちらこそ、ありがとうございました!」

正悟が礼を述べると海斗も握っていた手を離し満足そうな笑顔を浮かべている。
試合結果は引き分けに終わったが、海斗としては満足過ぎるほど戦えた。
それだけで今日の目的は達成したと言っても過言ではないようだ。
それでもまだまだ戦っていたいという思いは消えないようではあったが今はただ、戦いの余韻を楽しみつつここまで大事にしてしまった責任を取らなければならない。

「集まってくれたお前らもありがとなー!」

海斗は体育館全体へ響き渡る声で、その場に居る生徒たちに礼を言う。
それに対して生徒たちは最後にもう一度歓声を上げ拍手を送ると、徐々にだが観戦していた場所から移動を始めてそれぞれの行くべき場所へと向かい散っていく。

「お疲れ様、瀬奈。あと海斗も」
「何だよ、そのついでみたいな言い方は〜!」
「瀬奈に迷惑かけたんだから少しは反省しろ」
「はいはい、すみませんでしたー」
「…………」
「すみませんでした!」
「よし」

生徒たちが散り始めた頃アキラが近付いてきて海斗に怒り始めると、海斗は変わらずの態度ではあったが、アキラが無言の圧をかけることできちんとした謝罪をすることになり、長くなりそうな説教からは逃れることが出来た。
正悟もその掛け合いを見て微笑ましそうに笑い声を上げる。
しかし正悟は気になることがあった。
千草が観ていてくれた筈だが、今はどこに居るのだろう、と──。
辺りを見回してみても千草の姿は見つからずこちらに近付いて来る訳でもない。
それでも正悟が辺りを見回していると、散っていく生徒たちが大分落ち着いた頃、体育館の外でこちらを見守る千草が居たのだが、その姿はどこか儚げで消えてしまいそうな表情をしていた。
案の定、そのまま歩き出してしまうので正悟は急いで荷物をまとめてアキラと海斗に別れを告げてから出口へと向かうとそこに居た郁磨に軽く挨拶をしてから早々に立ち去る。
郁磨はまだ何か言いたげではあったが、止める間もなく正悟は千草の元へと向かうのだった──。




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