リンリナいちゃいちゃ
与えられたテントの中に置かれた椅子の上で膝を抱えながら、地べたに座り込んで眼帯を付け直しているエメリンに視線を向けた。一瞬だけ見える眼帯の下の空洞を見ながらそっと自分の目元に指を滑らせる。私たちは二人で一つであって、一つにはなれない、なりたいけどなりたくない。この空洞も、お互いを一人前にしないための、不完全であるための、ある種の束縛なんだと思う。片目だけで生きていくには補いあわなくちゃいけない。それが不便かと問われれば、私だけじゃなくエメリンも、二人の依存が不便さを感じさせないから分からないという答えを吐くだろう。それが心地いいと思うのと同時に、泡のようにふと浮かんでは消えるものは一つになりたいという叶えられない、叶えたくない欲望だった。

「そんなに険しい表情じゃあ可愛い顔が台無しだよ、エメリナ」

私を閉じ込めるように背もたれに手を置くエメリンに微笑みかける。するとエメリンは嬉しそうに笑って、私の髪を掬いあげるようにといた。エメリンの手から逃げるように私の髪は滑り、エメリンの手がそれを追う。それが何度か続いたあと、私はくすりと声をこぼしながら言葉を紡いだ。

「エメリンのこと、考えていたの」
「ふふ、そっか」

ようやく掴んだ一房の髪にキスを落としたエメリンの顔を両手で包み込んで、ぐっと顔を近付ける。すんと息を吸い込めば空っぽの身体を満たすのは甘くも暖かくもない無機質な香り、手のひらに微かに力を込めても沈まない硬質の肌、力が入ったことで軋む球体。分かっていること、分かっていたこと。それでもこうして近くにいる存在と、交われないことを、一つになれないことを、永遠になってしまえないことを、私たちが持つ感覚の全てで感じさせられて、どこも痛くなんてないのに、涙なんて出るはずもないのに、ぎゅっと核を握り込まれたような感覚に陥る。

「すき」

からっぽの言葉がからっぽの私の中を揺すぶる。エメリンは優しく、甘い笑顔で「あたしも好きだよ」なんて、私の欲しい言葉をくれるのに、その言葉が欲しいのに、どうしてか今は上手に受け取れなかった。




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