首筋に舌を這わせるとびくりと肢体が跳ねる。小さな穴の開いた腹を指で抉ってやれば、ぐちりとした水音と、甲高い声が響く。いや、やめて、死にたくない。聞き飽きたその言葉が鼓膜を震わせるたび、ぞくぞくと背中を電流がかけてゆく。
「もっと啼いてよ。ここには誰も来ないんだから恥ずかしがる必要なんかないでしょ」
吐き出す熱い息のせいで乾く唇をぺろりと舐めあげると、舌から唾液と混じって血液が口の端を伝って手のひらに落ちる。赤い線に彩られた白い手で女の頬をそっと撫でると、顔をぐしゃぐしゃにして必死にその手に縋った。助けて、ごめんなさい、許して。許すもなにも悪いことなんてされていないし、助ける気もないんだから、どうしようもないのに。そんな少し考えれば分かることを、するだけ無駄な懇願を、よくやる気になれるね。そんな馬鹿な女にも分かるようにため息を吐いてやれば、女は恐怖からか声を押し殺してしまった。これじゃあ本格的につまらない。すっかり冷めてしまって、もう一度小さくため息を吐き出すと立ち上がる。女が困惑と期待から顔を上げるのが分かった。それがさらに癪に障って、女に背を向けたまま言葉をかける。
「あんたみたいな処女には男を楽しませる方法なんて分かるはずないよね」
疑問と羞恥に塗れた母音が漏れるがもうその声には興奮しないな。目当ての物の前までたどり着くと体を折って拾い上げる。
「まあいいんだ、どんな女でも、まあ男でもそうなんだけど、」
振り向いて、一歩、また一歩と女にも近寄る。先ほど腹を突き刺したそれを振るうと刃に残っていた血が女の顔に飛び散る。それを理解してようやく死の危険を感じたようで、女は覚束ない足取りで僕から離れていく。でも逃げた先くらいは確認しておいたほうがいいと思うよ。日常生活でも、軍としても言えることだけど。
「さっきの話の続き、どんな女でも男でも、必ず僕を興奮させてくれる時はあるんだ。いつだと思う?」
フェンスに行く手を阻まれて、真っ青になりながら歯をがしがしと鳴らして、涙が服を濡らすのも構わず指先をフェンスに食い込ませながら、そっと、現実を確認するように、こちらを向いた女は、同一人物かを疑うくらいに美しい。鎮まったはずの熱がじわじわと再び体を支配して、得物を握る手がじっとりと汗ばむ。
「死ぬとき、死の直前。諦めきれずに叫ぶその声が、一番興奮する」
必死にフェンスを叩くくらいには生の執着があるあんたはきっと素敵な声をあげるだろうね。優しく笑いかけて、胸元に刃を突き立てた。