小惑星は空へと還る
誰しもが恐れる地獄の刑の数々は、取り巻く状況によって歪になってしまった彼の、朝霧慧の魂には何一つ届くことはなかった。針山の針は一部が抉れ、血の池の深い赤は薄まり、等活では全ての囚人を殺してもなお、息一つ切らすことなく、獄卒が地に伏せた囚人を起き上がらせるのを冷たい瞳で待っていたほどだった。そこで閻魔である花千代が下したのは、何もない空間で、ただ一人、人間からすると永遠とも感じられるほどの時間を過ごさせるという刑であったが、慧はそれに怯えた様子や悲しむ様子を見せることはなく、特に反論すらしないまま、大人しく花千代に従った。数年経って、慧の瞳からは光が失せ、ついには全てのことに興味を失い、後から同じ場所に、同じ理由で来た女や少年と接触しようとすらしなかった。話しかけられようと、触れられようと、彼が応えることはなく、いつしか二人も慧との仲を深めることを諦めるようになった。彼はきっと生きることに飽き、疲れ、絶望し、もう何をする気力も起きないのだろうと、女と少年はそう察した。しかしある日、慧はぼそりと、消えそうなほど小さな、掠れた声で、何かを呟いた。自分たちのものではない声に、女と少年は驚いて、慧へと視線を投げかける。そこで慧はようやく、俯きがちだったその顔を上げ、光が失せようと死んではいない瞳を左右に動かし、立ち上がった。女と少年はその行動の意味を問う。慧は、君たちは元の世界に帰りたいか、と問い返した。二人は不審に思いつつも、強く、何度も頷いた。その姿に満足したかのように、慧は二人に立ち上がるように指示し、再び言葉を紡ぐ。刹那、世界が彼の言葉を呑み込み、彼の望みを叶えようと歪み、反転した。




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