ある日を境に髪色が重い黒から明るい茶色になり、ただ伸ばして切ってを繰り返していたであろう毛先も今ではぴんと上を向いていた。さすがに眉の上で切るのは抵抗があったのか、前髪はピンで押し上げるだけではあったが、知る人が見れば、ああ、また真似をしているのだなと思える程度には、葵はどんどん自分を俺に似せていった。白いシャツはいつのまにかカラーシャツになって、俺がぽつりと溢したアーティストの曲は翌日までにほとんど聞いてくる。俺がなんとなしに描いたほんの数秒の落書きと似た缶バッジを探し、ぼんやりと捲っていた雑誌の耳が折れていることを目ざとく見つけて、そのページにあったパーカーを買う。その執着は、もはや異常と言っていいレベルにまで至ってなお、葵は俺に近付くことを求め続けた。いつかこの緑の目すら手に入れるんじゃないかと思うくらいに、葵は俺になりたがった。理由は知らないが、何となくは分かっている。本能的に、無意識のうちに、自分でも知らないままに、神の影を追いかけているのだろう。一番近くにいる神はあまりに遠くて、あとの二人はあまりに優秀で、新入部員も人間でありながらも囮としてだとしても自分よりも役に立っていて。人間の中で一番神に近い存在であった俺を、心のどこかで欲しているんだろう。それを先輩後輩という立場から尊敬や敬愛にすり替えて、その欲を、内部から仲間を押しつぶしてしまうほどのその嫉妬心を発散している。愚かで、哀れで、救いようがない。救いなんてない。鬼が人間を求めるだなんて、どこの笑い話だ。くつくつと喉の奥を鳴らすと、焼けた喉の奥が疼いて痛みを生み出す。それでも抑えずにいられなかった。戦利品代わりに、その胸に深く突き刺さる矢を抜いて矢筒へとしまいこむ。その際に指先に跳ねた血液をぺろりと舐めとると、思っていたものとは違って、鉄の味がした。片膝をついて歪みきった顔を見つめる。目を閉じていると、いやでも似ていることを自覚させられる。まるであの時の自分を見ているようだ。もしもあの時……そこまで考えてから、ゆるく頭を振って馬鹿な考えを吹き飛ばす。不毛だ、無駄だ。どうせ過去も未来も、現在が揺らがないものである限りは変わらない。変えられやしない。乾いた唇を先の割れた舌で舐める。じわりと濡れた口で、笑みを作り、最後の言葉を吐き捨てる。
「大嫌いだったよ、お前なんか」